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note|中井伶美さんのnoteを読んだ

「土は生きるものに多くを与えるが、やがて生きるものは全てを土に返す。」とも言い換えられます。

皮肉なことに、この概念は生きる者にとっての基本であるにも関わらず、文明によって漂白されていきました。

強烈なnoteに出会ってしまった。そんな印象です。道端に車に牽かれた動物を見たときか、交尾するカマキリを見つけたときのような。死と生をリアルに突き付けてくる。そんなnoteを書かれたのは、アーティストの中井伶美さんです。

中井さんは、芸術家と畑の新しい関わりとして、土の中に野生動物の死体を埋め、腐敗した後に骨を掘り起こし、それをマテリアルにして「」をテーマにした作品を制作するといいます。

記事のなかで中井さんは、「私たちは、遺体はきれいなものだと理解しています」といいます。

きれいに生きて、きれいに死んで、きれいな灰になって、終わりです。

本当にそうでしょうか。

生きることは汚く、死は不浄で、肉体は腐り、土に帰ることの方が、

無残であれ命の基本のように感じます。

私たちは、死を漂白したが故に、「産土」の概念が語る、やがて皆が帰るところを忘れてしまったのだと思います。

産土(うぶすな)とは、人の出生地や故郷のことを意味し、生まれた土地の守護神である「産土神」のことをいうこともあります。生まれた土地を今一度認識すること。それによって生まれる命の再定義を中井さんはされようとしているのかもしれません。

自分がどこから来たのかを僕は知っている

僕の父は、1999年にがんで亡くなりました。まだなのか、もうなのかわかりませんが、享年52。僕は21歳でした。

当初は余命半年と言われながらも、手術を繰り返して闘病を続けながら5年間生きました。途中、仕事にも復帰してがんに打ち勝ったのかもしれないと安堵したこともありました。しかし、完全にがんを倒していたわけではなく、最後は転移を抑え込むことができずにほどこす治療がなくなり、痛み止めをしながら息を引き取りました。

父が亡くなってすぐ、お葬式にもならないうちに、お墓をどうするかという話になりました。父母の実家がある岩手から親戚がみんな集まってきてくれているので、まとめて相談しようということです。

末っ子だった父には本家を守る兄弟がいることもあって、母は移住して自分たちで家庭を築いた思い出のある千葉に墓を作ろうと考えていたそうですが、僕は「墓は岩手に作りたい」といったのです。

ご存じの通り僕の苗字はひじょうに珍しく、しかも苗字と同じ地名が岩手にあります。つまり自分の祖先がどこで生まれたのかがわかる、とても珍しい家に生まれています。そのことは、じつはすごく価値があることなんじゃないか。もしかしたら僕が生きているうちは、生まれた土地がわかることはそれほど珍しいことではないかもしれないけど、僕の子どもたちの代、または孫の代になったら、自分たちの生まれた地なんてみんなわからなくなっているんじゃないか。

それなら、少なくとも自分が死んで還る土地は、岩手の地がいいんじゃないか、と思ったからです。

千葉から岩手まで560キロ。遺骨を車に積んで家族3人で運んだことは今でもよく覚えています。

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当たり前ですが、今でも毎年、お盆には岩手に帰って、父の墓前に手を合わせています。今年はコロナで行けず、本家にお参りをお願いしてしまいましたが、頼ることができる人たちがいるというのは、父からの一番大きな形見のような気がしています。

僕にとって出生地は千葉ですが、「産土」は?と聞かれたら、やっぱり岩手になるし、江六前という土地になる。できることなら、父が生まれた場所に還りたいという思いはいまも変わらず残っています。

しかしながら、墓を守っていく難しさも年々出てきており、思いだけでは押し通せない現実もあります。あとくされなくこの世からおさらばしようと思ったら、還る場所は重荷にもなる。さて、どうしよう、そろそろ答えを出さなければ、と考えていたところに「漂泊された死」という言葉でグンと胸を掴まれたような気持ちです。

きれいに生きて、きれいに死んで、きれいな灰になって、終わりです。

本当にそうでしょうか。

僕が死ぬとき、僕はどこに還りたいと思うのだろうか。

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noteを読んでいて気付いたのですが、どうやら中井さんは今、伊勢市のクリエイターズ・ワーケーションに参加中のようです。僕も11月13日から24日まで12日間伊勢市に滞在していたので、ぜひ同じ期間になって伊勢でお会いしたかったです。

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日曜日のテーマをRockにしていたんですが、ちょっと書いていても自分として面白みが見いだせないでいたので、思い切ってあたらしいテーマにしようと思っています。

思いつくまでは、思いついたテーマで書いていくフリーな日にしてみようかと思っています。

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