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Work|山形県酒造組合の冊子を制作しました

2021年に入ってからバタバタをする日々が続いておりました。山形県酒造組合さんのGI認証の価値を伝える冊子「和の酒、山形」の編集・制作のためで、3月に上旬に日本語版完成、下旬に英語版がぶじに完成しました。

非売品で山形県酒造組合からの配布限定なので普通には手に入らないのですが、日本語版の冊子のpdf山形県酒造組合さんのサイトで見られますので、ご興味ある方はパラパラっと見てみてください。

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GI認証とは何か

GI認証自体は、前職の料理専門誌時代に始まった制度なのでなんとなく知ってはいました。以下は農作物に関する農林水産省が管轄するGI認証についてです。

地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が「地理的表示保護制度」です。
農林水産省は、地理的表示保護制度の導入を通じて、それらの生産業者の利益の保護を図ると同時に、農林水産業や関連産業の発展、需要者の利益を図るよう取組を進めてまいります。(農林水産省HPより)

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令和3年3月12日現在 食料産業局 知的財産課

お酒については、国税庁の管轄になっていて、上とは別に登録がされています。

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日本のお酒(日本酒と焼酎)の認定については「日本酒のブランド価値向上や輸出促進の観点から、国レベルの地理的表示(Geographical Indication:GI)として「日本酒」を指定するため、所要の準備を進めてきた」としています。

GI認証を受けた日本酒は生産地域(日本酒全体の認証は除く)としては、全国で6例。もっともはやいのは、石川県の白山地域です。山形県はその次、県単位の認証としては日本でもっとも早い例になります。

日本酒のGI認証には、ざっくりと言えば酒米が国産、醸造から瓶詰までをその地域で行っていることが条件になります。もちろんその他にも県やエリアごとに独自のレギュレーションを決めていて、酒米だけでなく、麹や酵母を県やエリアで開発したものにするなどを決めています。

ちなみに山形GIの原料と製法の基準は以下のようになっています。

(1) 原料
・ 米及び米こうじに国内産米のみを用いたものであること。
・ 水に山形県内で採水した水のみを用いたものであること。
・ 酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
ただし、酒税法施行令第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の50を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。
(2) 製法
・ 酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の製造方法により、山形県内において製造されたものであること。
・ 製造工程上、貯蔵する場合は山形県内で行うこと。
・ 山形県内で、消費者に引き渡すことを予定した容器に詰めること。

原産地呼称に関する認証制度には、ヨーロッパのA.O.P.(保護原産地呼称、Appellation d'Origine Protégée)などが知られているように、グローバルにプロダクトを広げていくためには必要なもので、シャブリやボルドーという名前を産地以外のワインに名付けられないように、山形で作っていないものには「山形酒」とは一切名乗れないようにするものです。

これによって粗悪品や安全性の低いもの、偽物品によってブランドの価値を傷つけられる可能性が低くなり(欠陥品を飲んで「これが山形の酒?期待していたのにがっかり」みたいなことがなくなります)、より高いクオリティを維持しながら海外展開ができるというものです。

未来のビジョン」を大事にした

今回の「和の酒、山形」では、「なんかクール」って感じ始めているワインの格付けや認証制度に慣れた海外のお酒好きな人に「日本酒にもGI認証があるんですよ」ということを知ってもらうことを目的に制作したものです。

海外のレストランや美食家は、日本酒のどんな情報が欲しいんだろうと考えていくなかで、ヒントになったのは、海外を問わず様々なプロダクトが掲げる「未来のビジョン」です。

もちろんGI認証の条件などの基本的な情報は入れていますが、大事にしたのは山形県の酒蔵が「なぜGIの認証を得ようとしたのか」「それによって思い描く未来はどんな世界なのか?」ということをしっかり冊子のなかに残すこと。

これからは、味わいや価格、入手のしやすさといった価値とは別に、「10年後、20年後の未来に一緒にいたいか」というような、未来感がそのプロダクトを愛用する、愛する条件になっていくのではないかと思っています。

冊子の方では、山形県酒造組合の顧問を務める小関敏彦さんに「1000年後も飲み継がれる日本酒」というテーマでお話をお聞きしたりもしています。

ちなみに冊子の制作は1月から2月の緊急事態宣言中だったこともあって、フルリモートで制作。写真撮影の立ち合いで現地にも行けないので、緊急事態宣言が発令されていない県にお住いのフォトグラファーさんにお願いして撮影してもらうなど、慣れない編集作業でしたが、落ち着いたいい雰囲気の冊子になったと思っています。

酒類の販売はダメになっても
お酒は嫌いにならないでください

奇しくも3回目の緊急事態宣言が発令されて、該当自治体では飲食店での酒類の販売などの自粛要請が出るようです。山形県の日本酒も、飲食店向けの卸が少なくなって困っているところも多いと思います。

山形の酒だけを買って欲しいということを言いたいわけではなくて、名実ともに「日本の酒」と呼ぶにふさわしい日本酒を、緊急事態宣言下でもちょっと思い出していただいて(できたら時間があるときに冊子をお読みいただいて)、日本酒を飲みながらおうち時間をゆっくり過ごしてみてはいかがでしょうか(もちろんワインも大好きです)。

たとえ酒の販売が禁止されても(今回は自粛)、お酒にはまったく罪がありませんので、お酒を嫌いにならないでほしいな、と強く思います。

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