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Event|「無機質なモノとの奇妙な一致」初日が終わって

ポップアップレストラン「無機質なモノとの奇妙な一致」では、コースのメニュー表のかわりに、テーブルには1冊のフォトブックが置いてあります。

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その中には、7枚の写真が掲載されていて、その1点づつに写真のタイトルとキャプションがついています。キャプションは、シェフ竹矢匠吾によるもの。写真から受けたインスピレーションが短い文章で語られています。

02_entrée_時計の裏側__

時計の裏

時計そのものを動かしているにもかかわらず、スポットが当たるのはつねに時計の表面。ふだんは表に見えない時計の裏に、ドロっとした「嫉妬」の感情が見えてきました。

お客様は、その写真とキャプションを手掛かりに、料理のイメージを膨らませていきます。または、ご自分だったら別のことをその写真からイメージを受けるというようなことを考えてもよいと思います。

渋谷が少しだけ涼しくなってきた真夏の夜。いよいよ料理が始まります。

料理はコース形式で7皿お出しいたします。

しかし説明はそれだけです。それがどんな味なのか、何という料理なのか、どんな食材を使っているのか、わかりません。ただ唯一わかっていることは、シェフ竹矢が写真から発想を広げていった料理であることだけです。

もちろん、ひと皿づつお召し上がりのあとに、写真からどうやって料理が生まれたのかの背景や使っている食材の必然性などを、シェフ竹矢からひと席ひと席まわりながら説明をしていきます。

そこでようやく料理の意図が分かったときに、召し上がった料理はどのように思い返すでしょうか? 理解度が高まったことで、味の記憶に変化がでるのか、よけいにおいしいと思うのでしょうか?

ハッピーエンドの映画だけじゃ物足りない

ポップアップレストラン「無機質なモノとの奇妙な一致」を体験していただくと、料理は言葉によってさまざまなフレームがあることに気づかされると思います。そして、言葉のフレームを取り払ったときに、食べるという行為は、過去の経験に大いに依存していることにも気づかされると思います。

また、別の視点からみれば、食材を軽視し生産者を冒とくしているのではないか、と感じることもあるかもしれません。

食事は楽しいもので「おいしい!」と思えるものがなくては、やっぱり満足しない。そんなご意見も出てくるはずです(じっさい、初日のご感想でも同様のメッセージをいただきました)。

ポップアップレストラン「無機質なモノとの奇妙な一致」は、もしかしたらハッピーエンドの映画ではなく、主人公が必ずしもハッピーとは言えない終わり方をする映画のようなものかもしれません。

アンハッピーエンドの映画に見えても、その主人公が本当にアンハッピーなのかどうかは、見る人によって変わってきます。きっとその映画を見た後、エンディングやそれまでの伏線に対して、同行者といろいろな話をすると思います。

その終わってからの会話は、映画の話をしているようで、お互いの価値観を話し合っていると僕は思います。映画だけでなく、美術展や観劇などもそうで、おそらく普段話さない話題ですから、たとえば長く付き合っているようなパートナーの意外な一面が見えたりすることもあると思います。

さらに自分自身に対する新しい発見もあるでしょう。

答えは、あなたの中にしかない。
そして、おいしさはあなたのなかにしかないのです。

2日間の初日が終わり、残すは27日(木)の最終日のみ。ぜひ「無機質なモノとの奇妙な一致」を体験いただいて、あなたの中にある新しい食体験の扉を開いてみてください。

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無機質なモノとの奇妙な一致
2020年8月27日(木) 19:30~22:00 12名
コース料理 7 皿 13000 円(ノンアルドリンク、税込)
場所:JINNAN HOUSE(渋谷駅、原宿駅から各徒歩8分)
東京都渋谷区神南1-2-5
予約:https://mukishitu-kimyou.peatix.com
※お支払いは当日、現金以外でお願いいたします(カード、交通系IC、PayPayなどのQRコード決済)


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