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Human|俳人、夏井いつきさんの添削

普段、平日は夜の1時くらいに帰宅しているので、こう家にいると、いつもは観られないテレビ番組が観られて楽しいものです。

今日は、TBSの「プレバト‼」を観ました。

僕は、この番組の俳句のコーナーが好きなんです。出演者の俳句を評価する夏井いつきさんの選評がとてもていねいで論理的で、編集者としてこんな風に著者と原稿のやりとりができたらなと思いながら楽しませてもらっています(今日の梅沢富美男さんの句で、「三葉芹挿して」にしたのはうまい!と唸りました)。

俳句ブームの牽引者というのも納得できる、なっとくできる選評と添削です。

人の原稿を自分の原稿のように直していた自分

番組では、出演者の俳句を作者を隠して採点する企画で、単語選びと、助詞の的確な選択など、添削のポイントがいろいろとあって文章の伝え方として学ぶことが多い。

さらに「著者が何を表現したかったのか」ということを著者自ら話してから夏井さんが添削しています。著者の頭のなかにある情景をきちんと描写できているか、ということを夏井さんが理解したうえで添削しているところが、編集者の鏡ともいえるやりかただなと思いながら、見させてもらっている。

編集の仕事をしていて、著者なり筆者の原稿をものすごく直す人がいる。僕自身も、かなり直す方だと思う。締め切りの関係もあって、直しの依頼を著者や筆者に戻せないこともあるなど、言い訳はあります。しかし、夏井さんのように原稿を直すことをしてこないでいた。

じっさい、直すことがあたりまえになってくると、テープ起こしをまとめるかのように、人の原稿をまるで自分の原稿のように直してしまう。

しかし、夏井先生の直し方をみていると、はっとさせられる。

あなたは、こう書きたいんでしょう?」と、著者や筆者が書きたい情景を引き受けたうえで、その情景がより伝わりやすい表現に添削している。この直しが、論理的で、迷いがなく、しかもその効果が目に見えてわかりやすい。著者や筆者がもつ世界が、ありありと受け取り側に伝わってくるのだ。

これを見ていると、僕がこれまでやってきたライターさんとの原稿のやりとりは、相手を無視した独りよがりに思えて、とても恥ずかしくなってくる。

夏井さんは、著者の俳句をより良くしたのに対し、僕は、人の原稿を自分の原稿にしていただけなんだと、反省させられる。

雑誌のクオリティだとこれくらい情報量がないといけない」とか「これでは読者のニーズにこたえられない」と一方的にすすめててきた雑誌時代。それでは、全部自分の価値でしかなくて、読者の幅を狭めるだけだったのかもしれない。

今、メディアの仕事を離れ、個人の専属編集者や企業やプロダクトの発信を担う編集者になりたいと思っている。そのうえで、ほれ込んだ人やプロダクトのことを咀嚼して、それをよりよい形で伝えていこうとしている。

あなたが伝えたいことはどういうことですか?」という一言から始められる編集者でありたいと、夏井さんの添削からあらためて誓わせてもらった。


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