見出し画像

小さな幸せを。 #0


私が生まれる前から母は血液の病気と闘っていた。お母さんはRh(-)っていう珍しい血なんだってこと、貧血なんだってことを知らされていた。



私が中学生3年生の春。母の病態が悪化した。貧血が進んでしまい、1週間ほど入院となった。輸血で何とか命を繋ぐ毎日。最悪のケースを考えると骨髄移植が必要だと言われていた。「あと、どれだけ生きれるか分かんない。」と母の口から言われ、ひとり布団の中でたくさん泣いた。この時、私は思った。

「なんで早く病気が悪くなったことに気付けなかったのか。もっと早く治療できなかったのか。」
医者でもない、母を助けたいのに何もできない自分が悔しい。
人を助ける仕事について、お母さんみたいに病気で苦しむ人を救いたい。

母が看護師ということもあり、医療系の仕事に保育園のころから憧れていた。この出来事がきっかけで、より強く 「誰かの力になりたい。病気で苦しむ人の手助けがしたい。」と思うようになった。そして私は将来、母親に勧められた『検査技師』という職業に就くことになる。



母がこの後どうなったかというと、治験を終え、認可されたばかりの新薬を服用することになり、何とか命を繋ぎとめることができた。


また、いつもと変わらない日常を家族4人で過ごすことができる。その当時はそんな喜びを噛みしめていた。そして5年、10年とあっという間に経過していた。人間はしばらくするとその生活に慣れてしまう。そして大切なことを忘れていることに気づかない。当たり前に慣れてしまうのがこんなにも怖いものだと、私は痛感することになります。