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喪失感新婚旅行 [12] 新潟 濃ゆいナイト



この日の夜はとにかく濃かったし、時間があっという間に過ぎていた。
新潟では、行きたいと夫が言っていたお店で晩御飯を食べることにした。クラフトビールも取り扱っていて、バーなのか居酒屋さんなのか、よくわからないけど、Googleマップを見ながらその場所に来てもお店が見つからなかった。電話をしてみると、
「そこで合ってます。まだ開けてないんで、あともう少し待ってもらえますか?」
とのこと。
声質が少しイカつめだったので、多分、強面の人がやってるんだろう。そう思った。
イカつい人は苦手なんだよなぁ…と、なんだか嫌な予感さえ感じた。
ちょっと散歩しながら、開店したであろう時間に再び訪れると、カウンターの中でイカついお兄さんが
「いらっしゃいませ。2名様ですか?カウンターへどうぞ。」
と言って私たちをカウンターへ通した。
「飲み物は何にします?」

「俺はこのクラフトビールで。えりさんは?」
「あ、じゃあ、私は、これで…」

「かしこまりました。」

「お待たせしました。お通しと、ビール2つですね。」

乾杯してビールを飲んでいた。
カウンター越しにのイカついお兄さんにドギマギしてしまう。
ふと箸置きに目を向けると、ムーミンのニョロニョロではないか。
というか、あちらこちらにムーミングッズが置いてある。
もしお兄さんがムーミン好きだったら、相当なギャップで、もしかしたらこのピリっとした空気を何とか出来るかもしれない。そう思ったので、思い切って尋ねた。
「あのー…、ムーミンお好きなんですか?ここにも、ここにも…」

お兄さんは、よくぞ聞いてくれましたという感じで、
「そぉなんです!僕、ムーミン大ッ好きなんです。」

と。
バーン!ともの凄い音を立てて、お兄さんの心の扉が開いた音がした、気がした。

ムーミン大ッ好き宣言から、数時間、お兄さんのノンストップなトーキングに私たちはほっぺたが筋肉痛になるくらい笑った。
途中で来店した常連さんも巻き込み、とにかく笑いまくった。
後ろに座っていたお姉さんは、最近食事に行った男性のお刺身の食べ方の癖が強かったせいで顔が良くても萎えてしまったらしく、お刺身を食べる時にいちいち大葉を叩いて香りを出すのが特に1番の萎えポイントで、大葉ペーンというあだ名を勝手につけたという話、
その後に来た男性は、奥さんとラブラブすぎて子供が4人もいる話(ほとんど下ネタだった。)
私たちはここの常連客でもなく、一見客なのにも関わらず、まるで今、久々に会った友達と楽しく話をしているかのように、いつの間にか輪の中に入り込んで、くだらない話に腹を抱えて笑って、すごく嬉しくて楽しくて、良い夜だった。
ふと時計を見ると、深夜2時になっていて、帰りのバスにはもちろん乗れずタクシーでアパホテルまで帰った。

新潟では、インテリアショップやセレクトショップなど、色々と行ったのだけど、この夜の思い出がとてつもなく濃くて、新潟と言えばあのお店と言いたいくらい思い出の場所になった。しかし、今はやっていないらしい。
また会いたい人ナンバーワンのお兄さんは元気にしているだろうか。

それにしても、写真をあまり撮らずに新潟の日程を終えてしまったのがとても悔やまれる。
唯一あった写真は翌朝食べたバスセンターのカレー。
新潟で出会った人たち皆んなに勧めてもらったので、試しに行ってみたらもの凄い衝撃を受けたのを覚えている。
作る人はもちろん、食べる人も何やら忙しそう。驚くほどのスピードで食べ終える人たち。ここで提供されるカレーは、飲み物なのか…?と思うほど。
私たちもカレーを注文する、出てきたのは黄色いカレーに、鮮やかな赤色の福神漬け。なんとカラフルなカレー。
ひとくち食べてみると、それからあっという間に食べ終わってしまった。私はカレーを飲んだのだ。
スパイシーなあのカレーを食べたくなる時が今でもある。
いつの日かまた新潟に訪れた時は立ち寄りたいお店の1つだ。

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