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読書日記37 パンダのうんこ

こんばんは。えりたです。
本日、読み終えたのはコチラです。

『パンダのうんこはいい匂い』
■藤岡みなみ
■左右社
■1800円+tax
■ISBN:9784865280951

パンダとふれあいたくて
ひたすらうんこ掃除の四川旅行!?
人がふたりいれば、
それはもう異文化交流――
四川省出身の義母が
洗面台に泳がすフナ、
ラスベガスで生ハム地獄、
首吊りショーで生き死にを考え
映画を作っては他者の身体を想像する。

転がる好奇心でユーモラスに綴る
異文化エッセイ35本!

同書 帯の紹介文より引用(太字は原文)

■異文化に触れるということ

「異文化」という語を聞いて
どんなことを思い浮かべますか?

実は、私にとってのいちばんの異文化は
「男性」なのです。

もちろん、「女性/男性」という二分法が
大雑把に過ぎるのは承知しています。
それでもなお、「男性」って
私にとっては異文化だなと思うのです。
だからこそ、違って当たり前。
自分とは違う文化圏の人だと前提して接すると
存外ラクなのかもな
、などと
思っていたりします。

…なんていうことを考えながら読み始めたら。

筆者の言う「異文化」は
もっとずっと広いものでした。

■経験していないことすべてが異文化だと感じる
■異なるということを意識しつつも、
私もそうであったかもしれない、という感覚を
手放したくはない。

同書 はじめに(5頁)より引用

異文化の拡張。
本書の素敵なところを
まず一つ上げるなら
この「異文化」の拡張だろうと思います。

本書を読んでいると
「たしかにコレも異文化だな」と
思い当たることがいくつもあります。

転校した先のクラスの空気。
入ったことのないお店。
初めて経験する職種のバイト。

そういった「異文化」へ
足を一歩踏み入れるときの緊張感。
密度や温度の大きく異なる場所に
初めはまったく馴染めなくて。
自分が異物である感覚を持て余して。
時間を経て、
知る・馴染むという行程を過ごしても
少しだけ残る、かすかな違和感。
あるいは、初めの異物感の残滓。

筆者はそのあたりの感覚を
丁寧に掬いとります。

すべての知らないこと=異文化に触れ、
自分自身のかたちがどんどん変化していった日々を
エッセイにした。

同書 はじめに(5頁)より引用

そうなんですよね。
異文化に触れ、そこに馴染むことは
すなわち、「自分自身のかたち」が
変化すること、に他ならないんですよね。
読みながら、筆者と似た経験を
記憶から引っ張り出し
うわぁってなったり(何があった)
懐かしくなったり。

集団に対する苦手ポイントが
筆者の藤岡さんとわりと似ているので
読みながら
「志村、うしろ‼」な気持ちになったのは
ココだけの話…

筆者は、そんなふうに
異文化の範囲を少しずつ広げながら
自分のかたちを変えていくことを
楽しんでいきます

それを読んでいると
私のなかの好奇心も
ドンドコと動き出す素振りを見せます。
これも「異文化」として捉えたら
きっともっと細やかに知れるに違いない

「日常のなかの異文化」に対して敏感になり
わくわくした気持ちが湧いてくるのです。
それはとても豊かですてきなことだなと思うのです。

■普段着の言葉で丁寧に手渡す

本書の素敵だと思うところは
もう一つ、印象的な表現の多いことです。

■言葉は光だ。
■記憶の形がそのまま、17歳の私のシルエット

普段着な言葉を平易に用いて
思いを的確に伝える表現。
読むとハッとするし
感覚がありありと浮かぶし。
こういうしなやかな表現って
大好きなんですよね。
…こういうの、書けるようになりたい。マジで。

■「人それぞれ」という前提条件

人それぞれ、ということはどんな時でも
なるべく強調していきたい。(中略)
属性による傾向というものは
どこかにあるのかもしれないが
それが個人のユニークさを超えることはない。

同書 畑で世界と再会する(166頁)より引用

本書で何度も強調されることですが
これは私も心がけています。
「もちろん、人それぞれだけど」と
付け加えては、
怪訝な顔をされることもありますが(笑)
でも、自分自身、
「変なヒト」にカテゴライズされては
「説明させてくれや」と思うことが多いので
人にそれをしない、というのは
強い戒めとして持っています。

だからこそ、それをこのように
きちんと書いてくださっていることに
ものっそい救われたのでした。

■まとめ

本書は「転がる好奇心」にまかせて
拡張された異文化に
どーんと飛び込んで
感じたこと、変化したことを
言葉で掬いとったエッセイです。

異文化を異文化のまま
自分とは関係ないものと
切り離すのではなく。
その背景や歴史にも思いを馳せつつ
どんな小さなことだろうと
やれるところからコミットしていく。
そうすることで
何かが動いていく。
社会が、世界が
より素敵なものになっていく。

タイトルのインパクト以上に
世界への感度が上がる本でした。
読めて、よかった!
そして、パンダ大好きです♡

#読書の秋2022

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