とにかく免許を取りたい人の話

 今、私は自動車の教習所に通っている。20代も後半というこの歳になってようやく、である。

 本当は、ずっと車の免許を取りたいと思っていた。たぶん、姉が免許を取って家の車を運転するようになってから。あの不器用な姉でも運転しているのだから、私にだってできるのでは?という、生意気極まりない考えをもったのがきっかけだった。

 それまでは、両親が運転する車に当たり前のように乗っていたが、姉の運転を見るようになってから「私も運転したい」と思うようになった。免許を取った友人の「ぜったい車の免許は取ったほうがいい!行動の幅が広がる!」といったことばも私の背中を押した。

 しかし、免許を取るには結構な金がかかる。当時の私に、そこまでの財政的な余裕はなかった。思い立った時に遠くまでドライブしたり、お気に入りの音楽を流しながら気ままに運転してみたい…。そんな憧ればかりを募らせ、月日が経った。

 貯金が少しずつ増え、もうそろそろドン!と出費があっても大丈夫なのではと思えるくらいになった。「免許?私持ってないんですよー、本当はめっちゃ取りたいんですけどね」という何度使ったか分からないセリフともようやくおさらばできそうだった。

 とはいえ、安く済むのに越したことはないので、教習所は非公認のところを選んだ。学科は完全自習、仮免と本免の試験は警察の運転免許センターまで受けに行く、というパターンだ。免許取得までのハードルが高くなるのは嫌だったが、ふつうの教習所に通うとなると、かかる時間もお金も多すぎると思った。

 そんなわけで、今私はとある教習所に通っている。初の仮免試験では、学科は通ったものの技能試験で落ちてしまった。先週、二回目の仮免技能試験をなんとかパスし、今は本免試験に向けて縦列駐車や路上教習などを行っているところだ。

 技術的にはまだまだ改善が必要だし、初めての路上はだいぶ緊張もした。が、とにかく運転が楽しい。ハンドルをくいっと動かすだけで、人が数人乗れるような大きな物体を自在に操れる楽しさ。ハンドルを握ったときの、ざらりとしたあの感触。ウィンカーを出した時のカチカチ音。アクセルを踏みこめば一気に加速し、風を切るように進んでいく気持ちよさ(今はまだそれほどスピードを出せないが)。あらゆる要素が、私をワクワクさせるのだ。

 車を運転していると、なんだか自分が自由になれている気がする。自分だけの空間で、ハンドルを操り大きな箱を走らせる。好きな音楽をかけてもいい。唐突に「どこそこに行こう!」と思い立って一直線に向かうこともできる。私はどこにでも行ける!そんな気持ちになるのだ。

 たかが車の運転でおおげさな、と言われるかもしれない。日々の通勤や買い物などで必要だから車を使っているに過ぎない、という人も多いだろう。私も免許を取ってしょっちゅう車を運転するようになれば、今ほどワクワクはしなくなるのかもしれない。

 思うに、今の私はそれだけ解放感や自由の感覚に飢えているのだろう。自分が望む空間で、自分が思うように舵をとり、風を切ってどこまでも進んでいける。そんな時間を持てることが嬉しいのだ。免許を取ってすぐというのは難しいが、遠くないうちに自分の車を持ちたいとも思っている。どんな車がいいかなと考える時間もなんだか楽しい。

 
 はやる気持ちを抑えられないまま文章を綴ったが、要約すると「はやく車の免許取りたいな」ということです、はい。

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