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その時にしたいこと

 今日は夜9時に寝ようと、朝起きた時から決めていた。
『 これから就寝します。今日一日お疲れ様でした』 
 と言いたいほどの疲れと、いつもよりも私にかかる重力は、割増になっていたのだ。
 私は昨晩、真剣に睡眠を取っていたのだろうか。夜な夜な寝ぼけながら筋トレとかしていたんじゃないかと、未知なる自分に疑いをかけてしまうほどに、起きた瞬間からの疲れが酷かった。
 これから一日をやり過ごしていかなければならないのか、とうんざりする。
 今、私がいる地球は、昨日と同じ地球なのだろうか・・・。今日は、重力に対してとても敏感だ。
 
 だから絶対、必ず、今夜は9時に寝てやる!
 
 と、重い身体を何とか起こした。
 一日の目標が、『今夜9時に寝る』だ。
 ちょっと目標設定が高すぎるんじゃないだろうか・・・。
 実は、そんな目標を熱い気持ちで思いながら、9時に寝る自信が無いのだ。難易度が高すぎる。
 
 思えば、昔からそうだ。
 どんな目標も、大抵達成できないのが私という個体の個性だ。その熱き思いは時とともに飽きてしまうか忘れ去ってしまうのだ。
 ド忘れというよりも、気分がコロコロ変わると言った方が合っているのかもしれない。
 朝起きる時、今日は絶対9時に寝てやる! と宣言しておきながら、いざその日の9時になると、そんな朝の熱い思いと目標は忘れ去られている。
 その時間になってしまえば、眠気もなくなり、寝ることよりも、やるべき事とやりたい事が優先されてしまうのだ。
 毎回そうだ。
 9時に寝ると宣言しておきながら、9時に寝れたためしがない。
 じゃあ、9時に寝るには、私はどんな動きを自宅に帰ってからするべきなのだろうか。
 頭の中でシミュレーションをする。
 
 仕事が終わり、6時半に自宅に着く。
 それからのムダのない動きが肝だ。
 極力トイレもタメ出しにしておいた方がムダがない。子供たちとの会話も最小限にする。晩酌はしない。スマホは触らない。メダカさんたちの水槽を見ない。ヘチマの観察をしない。LINEも電話も出ない。YouTubeも観ない。
 
 パパパっと夕食を作り、食べる。
 お風呂に入る。
 寝る。
 
 これぐらいシンプルに進めれば、9時に寝ることが実現できそうだ。
 でも、それって、ツマラナイ。
 ムダを省いて省きまくった生活は、何の刺激もないものになってしまう。
 ムダな時間というものは、すごく大切なのかもしれない。むしろムダな時間がなかったら、スパイスなしのカレーや、タコが入っていないたこ焼きのように、つまらない日常となってしまいそうだ。
 ムダな時間のムダは、スパイスやタコのように重要な物なのだ。
 朝の私にとって、『9時に寝る』というムダに多い睡眠が重要だったのが、時の流れとともにその重要な時間はムダに思えてくるのだろう。
 つまり、未来の私が何を重要だと思っているかなんて、今の私には分からないのだ。
 いろんなことを、今決めてしまわなくても良いだろう。
 その時の時間に生きている私が、何を求めているのかで、選択していけば良いのではないか。
 そう。今の私が、未来の私の為に、選択肢を広げるのだ。だから、決めてしまわないでおこう。
 
 こんな事を考える私は、他人からすればムダなことをしているように思えるだろう。しかし、今の私には、そのくだらない事を考える時間は、重要な時間なのだ。
 やはり、私は、やりたい事をやりたいだけして、寝たい時に寝ることにする。

 9時に寝るかどうかは、その時になってみないと分からない。
 その時の私に聞いてみることにする。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 

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