木曜日について

　職場での昼休み、私は自販機の前で小銭をジャラジャラさせていた。
　50円玉1枚と、10円玉5枚を、自販機の口へと食べさせる。そうしている間、疲れた私の頭はどうでもいい事を考えていた。
　一週間の７日間で、私は一番木曜日が嫌いだ。
　私の仕事は平日の8時間で、土日が休日だ。
　月曜は休み明けでHP回復されているので、元気よく仕事ができる。そのまま火曜日、ギリギリ水曜日の午前中も勢いにのって頑張る。
　しかし、水曜の午後から、あれ？ 今日は何曜日だった？ と確認してしまうのだ。
　分かっていても確認せずにはいられない。
　水曜日の午後の疲れにしては、雲行きが怪しい疲れだからだ。
　そして、木曜日。
　どう考えても私の身体の疲れは、５連勤目の金曜日の午後からの疲れなのである。
　金曜日なら、明日は土曜日で休みだと、その日１日燃え尽きるほどに頑張ろうと思えるが、現実は木曜日なのだ。
　週明けからの勢いも失速し、さらにまだ明日の真実の金曜日を乗り越えねばならない現実･･･。
「ウソでしょ･･･！」
　呟かずにはいられない。
　一週間の私の心の移り変わりは、
　月曜日･･･始まりだ！ 元気よく頑張るぞ！
　火曜日･･･若干疲れてる、やっぱ年なのね。でもまだまだ行けるわ、このまま波に乗るわよ！
　水曜日･･･あれ？ 今日木曜だよね？ こんなに疲れてるもん、木曜だよね！？
　木曜日･･･ウソでしょ、さすがに今日は金曜だよね！？ 身体の疲れ、ヤバすぎるもん！ 金曜に決まってるよね！？
　金曜日･･･ウェーイ！ 明日は休みだ嬉しい！頑張ろう！
　
　という流れだ。
　歳をとる毎に、月曜の勢いが失速するのが早くなったように思う。
　木曜日が金曜レベルの疲れなので、テンションが下がってしまう。
　私の中では、木曜日＝過酷な労働曜日 なのだ。木曜に楽しみを見つけた方がいいのではないか、と思うほどに、モチベーションが上がらない。
　地球の重力がとても気になる木曜日に、私はなんとかテンションを上げて過ごす方法を考えるのだ。
　木曜･･･、木だ。
　同僚たちを、木に例えるならなんの木か考えたりしてみた。ちなみに私の願望は、白樺の木だ。この辺りにはなくて珍しいし、色白美肌スレンダー美人っぽくて、とても素敵な木だと思うからだ。
　人の悪口ばかり言っているあのおばさんは、杉の木だ。花粉をそこら中に飛ばして皆を悩ませるからだ。
　心が広い、尊敬できる上司は、某ＣＭに出てくるお馴染みの、この木なんの木の大きな木だ。鳥たちがワイワイとその枝に止まりたがるように人望が厚いからだ。合ってる合ってる。
　一瞬楽しくなったが、結局はしょうもない。やはり木曜は嫌いだな。あと半日、早く終わってほしい。
　でもそんな気持ちで仕事をするのはもっとつまらない。なんとか、この重力に勝つためにと、私は自販機で栄養ドリンクを買ったのだ。
　
　財布を鞄に片付け、ドリンクの蓋を開けながら思った。
　木曜日って、必要･･･？
　やはり私の中では、木曜は日曜に変わって欲しい曜日なのだ。
　
　月、火、水、日、金、土日。
　いや、人間は欲の塊だ。やはり理想は、
　月、日、水、日、金、土日。
　1日置きに仕事をし、さらに土日連休。これ最高の一週間じゃないか。
　そんなことを思いながら、栄養ドリンクを飲み干した。