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勝手な私

 うちの冷蔵庫は観音開きになっていて、設定によっては真ん中の開きを押せば自動で扉が開くようにできている。
 両手が塞がっているが、冷蔵庫の扉を開けたい時、その機能はとてもありがたい。
 肘などでポンと押せば、冷蔵庫は、

『ウイーン・・・』

 と唸り、一瞬考えてから、バン! と自動で開いてくれるのだ。
 とてもありがたい便利な機能だ。
 しかし時に、その便利だったはずの機能に裏切られることがある。

 冷蔵庫の扉を拭く際、私は開けようとも微塵も思っていないのに、冷蔵庫ときたら、

『ウイーン・・・』
 と唸って、バン!と、かなりの勢いで開くのだ。

 危ないじゃないかっ!!

 私は開けようとは思っていないのに、これではびっくり箱と同じようなもの。
 私はイラッとして扉を閉め、再び拭き掃除を始めたのだが、またしても、

『ウイーン・・・』
 バン! と言って、勢いよく扉が開くのだ。

 おかげで扉に顔を強打した!!
 なんという仕打ちだろう。
 私は冷蔵庫をキレイにしようと拭いてあげていたのに、彼女といったらそんな親切な私をぶったのだ。

「こんなひどい設定は解除してやる・・・!」

 私は冷蔵庫の中にある自動開閉の設定ボタンを長押しし、手動に切り替えておいた。


 その日の午後、買い物から帰って、買い出しの品を冷蔵庫へと片付けようとした。
 自動ボタンを押しても、冷蔵庫は『ウイーン』と言わない。開いてくれないのだ。

 なんだよ、私の両手は塞がっているっていうのに・・・!

 私はまた、冷蔵庫に対してイラだった。
 なんで冷蔵庫は、私の現状を見て開くか開かないか判断できないのかとも思った。
 しかしそれは、私が冷蔵庫に対して甘え過ぎていたことに気付かされた。
 開かなくて当然だ。
 だって私が朝、設定ボタンを自動から解除していたのだから。
 私は両手に品物を抱えながら、

「不便だわ・・・」

 と毒づいた。
 私という人間は、なんて勝手なのだろう。
 自分が都合の良いように設定した事を、その時の都合でいちいちイライラとしてしまう小物っぷり。
 自分の中の人間味を感じ、笑えてきてしまった。
 私はやはり設定を、

『ウイーン・・・』
 バン! と開くように戻しておいた。
 
 
 
 
 
 
 

 


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