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『ERISAEKIWedding』 ・・・これは、私、佐伯エリ個人のウエディングプロデュースブランドです。このブランドのコンセプトは『私の色を出さないこと』

そのお二人の色が何色なのか、二人の内面から滲み出るグラデーションの中からそれを探し出して、その色から二人の世界を創っていくウエディング。佐伯の色は出さない。見た目で私が創ったことを感じさせない。ただ、できれば、『今日のこの結婚式は、一体だれがプロデュースしたんだろう?』と、居合わせた人の心をこつんとノックできるようなクオリティには到達させたい。完成度、という意味で。つまり、毎回違う色にはなるけれど、とにかく心にしみ入るような、誰も見たことのない『美しい色』に仕上げたくて。

前に、私の仕事観を黙って聞いてくれたあるひとが、しばらく考えた後にこんな言葉をくれました。『佐伯さんの色は、何色かな?いや、色とかじゃないですね。普通なら白って言いそうだけど、白は”白色”だから。なんというか、色も形もない、こう、丸い霧みたいにふわふわとした、でも触ったらなんだか柔らかくて優しいものみたいだ。』って。色がない、無色透明で、形もない。だけど確かにそこにいる。この言葉が、自分のウエディングプランナーとしてのあり方を、そのまま的確に表現してくれているような気がしました。

『今、この瞬間、ウエディングプランナーとしての私は、誰のために、何のために存在しているか?どうあるべきか?』という問いは、結婚式に向き合う中で、常に心の真ん中にあります。カップルさんのため、ご家族のため、ご友人などゲストのため、アーティストやクリエイターのため、会場スタッフのため。その時によって、姿や形、色を変えて、そこで、どんな想いで仕事に向き合っているのか・・・そんなことを考えながら、この6/6に軽井沢で行われた一組の結婚式に向けて自分が何をしたのか、を書こうと思っていたのですが。

えーとね・・・だめなんです。書けないですね。なんか、書いては消し、書いては消しを繰り返しておりまして。

困ったなぁと、と持て余し、書き始めてから3日くらい経っています。

あの日。決して大袈裟でなく本当に、この世のものとは思えない、とても美しい景色が広がっていました。初夏の軽井沢の新緑、柔らかな木漏れ日、虫の鳴き声、葉擦れの音。アコースティックのギターヴォーカルとウッドベースの温かな音色。色彩豊かで美しい料理。花嫁が心を込めて編んだ真っ白なマクラメのセレモニーバックドロップ。凛としてシンプル、芯のあるデザインの装花。遠くから近くから、静かに微笑みながらシャッターを切りつづけるフォトグラファー。とても優しく心地よい笑顔のサービスマンたち。いつどんな風にお二人を誘導したのかを一切感じさせない、キャプテンの的確でさりげなく、美しい所作・・・。フランス製のたおやかなドレスと、オーダーメイドのハンサムなスーツに身を包み、活き活きとしたブーケ・ブートニアに彩られた若き夫婦は、とてもリラックスして、今、この1分1秒を噛みしめている。ゲストは誰もが笑顔で二人を見守っている。

そして、これが本当に不思議な感覚なのですが、挙式でもパーティでも、私が、シーンを次に動かそうと心に決めた時にはすでに、お客様の心情まで含めて準備が整っていて、あとは私がGOを出すだけ、というところまで全てが仕上がっていました。

今、思い出して感じるのは、『みんな、一体いつの間に、どう創ったんだろう?』ということ。なんの指示も出していないのに。ミーティングすらしていないのに。A4一枚の進行表しかないのに。もちろん、感性を研ぎ澄ませて、時間を先読みしながら、その瞬間その瞬間の小さなリクエストや細かな変更はハンドリングしていくけれど、基本的に、約束の時間に日本全国から集まってきたクリエイターたちは、『佐伯さん、何かありますか?』『任せる。この景色に似合うように。美しく、センスよく。君が一番良いと思う方法で。』『はい。』こんな会話を交わすだけで、笑顔で自分の持ち場に散っていって、それぞれの仕事をしていました。

その彼らの様子を、パーティの途中で、一番離れた俯瞰の位置から見た瞬間があって。

サービスマンの手で、今、何が運ばれているのか見えない。ミュージシャンが次に演奏する歓談曲はその場でセレクトされていく。フォトグラファーがファインダー越しに何をのぞいているのかわからない。キャプテンとお二人の会話も聞こえない。ガーデンの一番端の、『その空間』の外にいる私がこの位置から確認できるのは、みんなとお客様の表情だけ。お二人と、ご家族と、ゲストと、創り手と。会話の内容はここまで届かないけれど、全員が心地よい音楽に身を委ね、心からの優しい笑顔で、思い思いに話をしたり、お料理をほおばったり、自由に席を行き来したり。とても自然に、温かな幸せ色の空気が、こんこんと湧き出る清流の湧水のように青空に向かって上昇し続けていて、その景色は、この日のゴールとして私が頭の中でイメージしていた景色そのもので、心からの正直な言葉で表現すると、この世のものとは思えない、まるで、天国で行われているパーティを見ているみたいでした。本当に、うっとりとため息が出るほど美しくて、一瞬、水の中に潜っている時のようにすべての音が消えて、水槽の中からキラキラとした、憧れの外の世界を眺めているかのようだった。全員の心が自然と、ふんわりと集まって、その世界を創っていました。

ただ、その情景を思い出すと、じんわりと涙が出ちゃう。

一枚の、静かな絵画のように美しかったのです。
私、見ているだけでなにもしていないのに。

実は朝、少し雨が降ってきて。週間天気予報では傘マークがついていたこの日。三日前くらいに、ペンションのオーナーさんから『どうにか外で、というお気持ちはよくわかります。でも、この時期の軽井沢は本当に冷える。お客様が薄着でいらした場合、雨でなくても心配です。早めのご判断をされた方が良いかと思います。』というご連絡をいただいていました。長年、その場所で、何度も何度もウエディングを創ってこられた方からの親身なアドバイス。重みのある言葉でした。山の天気と、結婚式と。理想と、本当のおもてなしと。

朝10時、音楽リハーサルをしているとき、パラパラと雨が降りはじめ、私は人前結婚式の原稿を読みながらミュージシャンに目を向けました。彼は私にとっては音楽の解像度を高めてくれる先生でもあり、今回の音楽を一手にプロデュースしてくれた。私は彼からいつも音楽のこと、楽器のこと、たくさん教えてもらっている。何度も一緒に仕事をしてきて、楽器を繊細に管理している姿をすぐそばで見てきている。雨に濡れゆく楽器や機材。このままでは、その大切な楽器を傷めてしまうかもしれない。だけど、彼は私にも楽器にも目もくれず、まるで雨になんて一切気が付いていないかのように、目を閉じて静かに演奏を続けていました。パーティスペースのテーブルに近づいていくと、サービスリーダーがセッティングをしながら『樹の下だから結構濡れないよね。大丈夫だね。』と、私の方を見ずに他のスタッフに向けて、とてもさわやかな笑顔で伝えていて。私が空を仰いで、どこかに晴れ間がないかと雲の隙間に目を凝らしていると、キャプテンやフォトグラファーがいつの間にか隣にいて、『12時(挙式の時間)には0%になりますから』と、携帯の天気予報ページを何度も何度も見せに来てくれた。もういい加減にジャッジしなくては、と、ペンションの奥様のところに行ったら、私が口を開くより先に『佐伯さん、ほら、向こう側、少し明るくなってきましたよ。』って空を指さして。そしてさらに、『ご参列者さんたちも、少しくらいの雨なら我慢して外でやったら良いじゃないか、とおっしゃっているみたいですよ。』と。
こういう時、ブレずにスピーディに冷静で的確な判断をするのが私の仕事なのです。プロデューサーだから。責任者だから。安心安全に、この結婚式が行われるための、最適な判断を。

だけど、ここに集ったひとたちは、今、この時代を乗り越え、改めて夫婦になる決意表明をし、この美しい森の中で大切な人たちと楽しく和やかに、人生の新たなスタートの1日を過ごすことを夢見てきた『お二人の想い』を、結婚式が始まる前からしっかりと感じ取ってくださっていて、雨はきっと上がるから、と心から祈ってくださっていて、私が今にも『諦めて、室内でやりましょう』と言い出さないように、優しい笑顔で支え続けてくれました。そっと背中を正し続けてくれました。『佐伯さん、二人のための決断を、強い心で。』と無言で後押しされているようだった。だから私は何度も心が折れそうになったけれど、『あと少しだけ、このリハーサルが終わるまで、判断するのを待ってもらっても良いですか?』と、素直に頼ることができました。これは、私の言葉であると同時に、お二人の言葉でもある。みんなは一点の曇りない笑顔で『もちろん。』と返してくれた。私の判断が遅れれば遅れるほど、大変になるし、楽器や機材も傷む。時間も遅れる。取り返しのつかないことになる。それでも、『お願いします。』と言える優しい空気を作ってくれていました。オーナーさんもそっと『料理はどんな風にでも対応できるから。』と言ってくれた。
これはきっとclubhouseの、ケーキカットのルームに続く深海ルームで、私に起きた小さくて大きな変化。もう一歩深くお願いできる、ということ。人に委ねるということ。一人で抱え込まない、ということ。心から信頼して、ちゃんと託すということ。そして、『何があっても、必ずみんなが美しく形にしてくれる。』と、信じて諦めない、心の強さを持って、みんなのところまで二人の想いをしっかりとリレーすること。
肌に雨を感じながら、自分に問いかけて、判断に悩んで、自分の物差しを疑って苦しくなって、でも目を閉じると、そっとバディが酸素ボンベを差し出してくれるあの海の中にいるような気がして、不思議と呼吸が戻ってきました。
挙式スタートまであと45分、受付が始まる頃に静かに雨が上がり、さらにあと15分、もう間も無く結婚式が始まる、というところで、私たちが創り上げた二人のための世界に、柔らかくて清らかな初夏の木漏れ日が降り注ぎました。

これは、前日ミーティングを終えたプランナーとキャプテンが、それぞれに、この結婚式に想いを馳せて、示し合わせることなく自然発生的にその日の最後に発信したツイートです。これまでに何時間も何時間も、自分たちが大切にしてきた結婚式について深く語り合い考察してきた私たちの、立ち位置と視点が正直によく現れているなと、後から見返して人ごとのように感心してしまいました。

預ける覚悟と、引き受けるプレッシャー。実は二人とも、不安や怖さを抱えている。だけど、私がお客様の想いをその手に持っていられるのは、当日結婚式が動き出すその瞬間まで。それは現場に託さないといけないもので、託したら、形にしてゲストの心に、そして、それぞれの未来に届けてくれるのは、キャプテンをはじめとした創り手の人たち。私の仕事はその前段階。みんなが必ず美しく形にしてくれることを信じて、お二人の想いを感じ、すくいとり、その想いを届けるための最良の方法を想像しながら、お打ち合わせを進め、準備をしていく。お客様に様々なことを提案するその瞬間、迷いや弱さが生まれそうな時には、私は、創り手の心を、そっと隣に手繰り寄せている。『佐伯さん、最高の結婚式、創りましょう。僕のことを信じて任せてください。』と、真っ直ぐに何度も言ってくれたキャプテンの言葉を思い出しながら。

そして、私のプランニングの仕上げは、キャプテンへその想いをしっかりと託すこと。クリエイターたちが二人の想いを感じられる言葉でその指示を進行表に落とし込み、引き継ぐ。そして、その現場を取り仕切り、時間をコントロールし、空気を司るキャプテンが、この結婚式をしっかりと見つめ理解し、現場のど真ん中で『今』を全身で感じ取り、自分の目線で物事を捉えて、最良を考え、想像し、迷いなく動くことができるように。物語が動き始めたら、今度は私がみんなに強さを与える番。ふわふわとした透明な霧のような存在感で、概念としてそっと隣に寄り添い続ける。朝イチで必ずかける『君が一番良いと思う方法で。』という言葉には、そんな想いを込めています。実は一番難しいオーダーだと思います。本当に、ふんわりしていて。だけど、結婚式は生きている。全てをマニュアルでは語れない。創り手にはその瞬間の温度を自分の肌でしっかりと感じ取って、自信を持って動き、最高に良いパフォーマンスをしてほしい。たとえ、実体としての私が、隣で全ての指示を出さなくても。現場のリアルな温度を感じ、佐伯の想い=お二人の想いに想像を張り巡らせて物事を考えられるだけの十分な余白を彼らに用意して、万が一のことがあれば私が全責任を背負う覚悟を持って。そして、目の前のお客様の顔をしっかりと見つめて、様々なことを感じ取ったり疑ったりを続けながらその時間空間を磨き上げ、万が一、刹那の迷いや判断の上で、経験値で、進行表に書かれていることを変えた方がよいかもしれない、変えるべきだという思いが湧き上がってきたその時には『佐伯さんなら(つまりお二人なら)、わかってくれる。』そう自分を信じて強くなり、今、この瞬間のための最適解に、信念と共に進んでもらえるように。

そのスタンスは、全てのクリエイターに連鎖していく。だから、自然と目標に向かって心が一つになるのかな。誰もが能動的に、お互いのなすべき仕事を信じると決めて次の瞬間に想いを馳せ続けなくては、ERISAEKIWeddingの現場では動けなくなってしまうのかもしれません。いや、過酷な現場ですね。これ。ここまで書いて、うん、みんな本当にすごいな。その心情を想像したら、一瞬、息を飲み込みました。その素晴らしさをしみじみと噛み締め、改めて深くみんなを尊敬しています。難しい仕事を、本当に美しく仕上げてくださっている。何事にも替えがたい、この日まで磨き上げてきた才能と技術とセンスと心を、いつも惜しみなく快くご提供くださっている。涼やかな笑顔で、なんの苦労も見せずに。私、間違いなく世界一幸せなウエディングプランナーですね。一緒にお仕事してくださって、本当に、ありがとう。

そして、この雨のエピソードはほんの表面上のお話。ここに至るまでのプロセスで、誰かが誰かを想う心をみんなで優しく美しくリレーしてきたから生まれた、ひとつのちいさな奇跡だったと思っています。

外見はいちばん外側の内面。あの限りなく美しい天国みたいな景色は、準備の段階からみんなが時に悩み苦しみ、『この結婚式は二人の未来にどうあるべきか』について考えながら、感性と才能を最大限に発揮して、心を砕いて向き合ってくれた結果として生まれたもの。美しく豊かなそれぞれの内なる海から生まれたもの。関わってくださった人々の、どこまでも深い優しさと、様々な形の愛で溢れていました。

『優しさ』とは、温かな思いやり。寄り添い受け入れていくこと。
『美しさ』とは、精神的に豊かで凛とし、調和がとれて整っているさま。

そして、『愛しあう』とは、見つめあう事ではなく、同じ方向を向いて、呼吸を合わせて、一緒に歩んでいくこと。(フランスの作家、サン=テグジュペリの言葉、『愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである。Love does not consist in gazing at each other, but in looking together in the same direction.』より。私がもっとも好きな愛の概念のひとつです。様々な愛に当てはまると思う。)

あの日、あの空間、結婚式を創る仲間たちの間でも、お客様同士の間でも、今日のこの日を、そしてお二人のことを、徹底的に『愛する』と決めた全員で、私が示したゴール、つまり、お二人が見つめる未来に想いを馳せて、同じ方向を一緒に見つめて、心をひとつにして一歩一歩進んでいた、そんな尊い時間でした。

あんなに毎日原稿を読み込んで創った人前結婚式のことも、とてもドラマティックだったケーキカットのことも、私、ひとつも書いてないですね。ケーキカット、とても美しくて素敵だったんですよね。でも、きっと、キャプテンが書いてくれるかな。

最後に、メッセージカードのことだけご紹介しておきます。最終の進行表をシェアした後に思いついてしまったアイデア。(進行表、何度も送りつけて、皆様、本当にごめんなさい!!)

ケーキカットのnoteで書いたこの言葉を、実は結婚式の3日前にもまだ考えていて。

表現するだけの結婚式ではなく『お祝いした』『お祝いしてもらった』をきちんと感じられる時空を創り、その空間でお二人とゲストの心が何度も何度も交わりあい、その『想い』をお互いの心に色濃く染め重ねてていく結婚式を。

人前式でも、ケーキカットでも、他にもたくさん、色=想いを重ねる仕掛けを施しました。だけど、もしかしたらあともう一色、重ねることができるんじゃないか、と。あと少し、もうあと1ミリでも、想いを深めることができるんじゃないか、と。そんなことをひとりぐるぐると考えながら、2週間前に訪れた滋賀県大津市の結婚式場の副支配人さんのclubhouseのルームでお話しさせてもらっていたら、その時に私たちの間で起きた小さな奇跡を思い出してしまって。

2週間前、はじめてお会いした時に、私たち、実は二人とも偶然『これ、必要なんじゃないか』と同じアイデアを心に温めていたことがわかったんですよね。それは『結婚式に参列されたゲストの声を可視化して届けていく』ということ。参列者のリアルな感想、生の声を、コロナを乗り越えて頑張ってこの日を迎えられたお二人にはもちろん、これから結婚式を挙げたい、挙げさせたいと思っている、まだ見ぬすべての『結婚式に向き合う人々』に向けても。

そこで、副支配人に伝えました。『私、あれ、やってみようと思う!キャプテンに、入れてもおかしくならないか聞いてみる。でも、今日、最終の進行表送ったところなのにまた変えたいって言ったら、怒られるかな・・・』と。そしたら副支配人は優しく笑って『いや、きっと怒らないし、だけど、佐伯さん、こうしてなんでも唐木さんに相談できるようになったのって、すごい進化ですね。』って。

ちなみに、キャプテンはもちろん怒らなかったです。
ただ、また言ってる、と呆れたように笑って『一緒に!!創りますからね。』と。

パーティを結んで、お二人が退場した後に、サービススタッフが、小さなメッセージカードとペンを配ってくれました。

私はお客様に語りかけます。

『今日、この日まで、お二人は結婚式を挙げることに対してたくさん迷い、悩み、考えてきました。それでも人生の次のステージへと進むタイミングに、この日を皆様と一緒に過ごすことを目標に、二人で支え合って準備を進めてきました。
皆様にお願いがあります。もしよろしければ、お二人と今日1日を過ごしたいまのお気持ちを、こちらのカードに記していただけないでしょうか。きっと、お二人の未来に持っていっていただける宝物になると思っています。

また、実はいま日本全国で、お二人のように、結婚式を挙げるべきか悩んでいるカップルさん、そして、親として、挙げさせて良いものか悩んでいる親御さん達がたくさんいらっしゃいます。そんな方達にとって、今から皆様に記していただく言葉は、きっと、背中を押してくれるものになると思います。このカードは、原本はお二人にお届けしますが、お名前を伏せて、SNSなどでご紹介させていただくこともあるかもしれません。もし、難しいという場合は、私に遠慮なくおっしゃってください。

私たちは結婚式をお仕事にさせてもらっております。それは、仕事、という側面も持ちながらも、それを超えて結婚式が、人々の人生にとって大きな意味のあるものである、ということを知っているからです。できれば、これから結婚をするお二人にも、お二人を育んだご家族様ご親族様にも、1組でも多く、今日のこの日のような思い出と共に、未来を歩んでいってほしい。そう願っています。

私は、マイクを置いて皆様の側に行って、自分の声で、今日いちばんの優しく柔らかな言葉使いを意識して、自らの気持ちとして、この想いを伝えました。皆様、慈しむような笑顔を私に向けながら、しっかりとこの想いを聞いてくださり、たくさんのメッセージをお寄せくださいました。誰一人、『SNSには載せないで。』とおっしゃる方はいませんでした。

あとでキャプテンが教えてくれたのですが、パーティが終わってお客様が帰られたその後も、ガーデンが片付けられていく様子を新郎新婦はずっと二人で見ていたそうです。私は、少し離れた場所で、ビデオグラファーさんと話していて。キャプテンはお二人が私を探していると思い『佐伯をお待ちですか?』と伺ったら、『いえ、そうじゃないんです。ただ、皆さんがお片付けされている様子を見ていたくて。今日ここで皆さんと一緒に結婚式をしたことを、噛み締めていたいんですよね。』とお答えになってくださった、と。
私、あとでこの話を聞いて、この結婚式の美しさの本質は、ここにあった、というか、結局、ここにしかないんだなぁと思いました。すべての結婚式の美しさは、お二人の、心の中の美しさが自然と形になった、ただそれだけのことなのだ、と。お二人と出会ったウエディングプランナーが、その心の美しさのありのままを感じ取り、そのフィルターを通して拡張された想いを、さらに創り手が感じ取り、それぞれの感性と融合させ形にしたことで、あの天国のような清らかな空間が目の前にあらわれた。そしてお二人は、その優しい心で、ご参列の皆様の想いとともに、私たち創り手の想いまでしっかりと受け取ってくださってはじめて、この結婚式を美しく完結させたのです。美しい二人の結婚式は、美しく形になる。私のプロデュース力云々ではなく。だって、どこまで行っても結婚式は、私の作品ではない、お二人の心の中から生まれてくるものだから。

結婚式は、人が人を想う『想い』が集まってできている。これはいつも思うことなんだけど、またこうしてひとつの仕事を終えた今、私は、次の海に向かって泳いでいくんだなと感じています。まだ自分も磨かなくてはならないし、もっと深く潜り、もっと感性を研ぎ澄ませて、美しさを追求していかなくてはならないと思っている。今、この時代に、ウエディングプランナーとして生かされ、結婚式という優しく美しく愛に溢れた深い海で、為すべき仕事を与えられた者として。迷い込んだ場所がどんなに暗くても冷たくても、一緒に泳いでくれるバディもいるから強くもなれるし。だけど、きっと世界は時に厳しい。油断していたらあっという間に溺れてしまうから、どんな困難にも負けないように、これからももっともっと、自分を鍛えなくてはです。

いかなる時もお二人に寄り添い続けるための強さと、美しく整え未来に届けるための優しさを、必要な時に差し出し合いながら、同じ方向を見て、この海をどこまでも、お二人の色を追い求めて、それぞれの意志で泳ぎ続けることができるように。

そして、さいごにひとつだけ。


拝啓、結婚式さま。

私と出会ってくれてありがとう。
私は、儚くて尊く、そしてどこまでも美しいあなたのことを、心から愛しています。なにがあっても必ず守るから。だから、これからも末長く、どうぞよろしくね。


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