いつも最後まで見届けられない
帰り道、道端で話しかけられた。歩いているときからなんとなく、話しかけられそうだなという予感はしていた。
彼女は迷うことなく私に声をかけ、とあるお店に行きたいと言った。「私はここに行きたいです」という日本語を聞いて、とっさにゆっくり話さなければと思った。日本語ネイティブは主語を省略するからだ。だけど勝手に決めつけて話すのは、ただの思い込みで失礼だったかもしれない。反省している。
そのお店は入口が分かりづらく、私も初めて行った時にはどこだか分からなかった記憶がある。反対側のほうを指差してあっちです、と答える。ちゃんと分かるかな、この距離ならついて行こうかなと考える一瞬のうちに、「Thank youありがと!」と言いながら彼女はさっさと立ち去った。あまりにもさっぱりしていた。
いつもこうやって、最後まで見届けられない。私が道を教えた人たち、ちゃんと目的地までたどり着いたんだろうか。たどり着いているといいな。また迷ったとしても、他の誰かに助けてもらってたどり着けていればいい。
ちらちら振り返りながら彼女の姿を追っていたけれど、あっという間に見えなくなった。変な心配は全く必要なさそうだった。
私もまた、どこかで見知らぬ誰かに道を聞いてみたい。そして心配されてみたい。
帰りを急ぐ会社員たちの波に乗って、私も自分の道に戻る。