韓国ドラマレビュー#24 『その年、私たちは』私たちみんな主人公
毎週楽しみにしていたドラマがまたひとつ、終わってしまった。終わりがあれば始まりがある。新たな名作に出会えることを期待して、ロスを乗り越えていこう。
このドラマはドキュメンタリーを軸に話が進む。インタビューに答える形式になっていて、登場人物の気持ちを丁寧に追いながら見ることができた。設定が活かされていてとてもよかった。
軽くネタバレするかもしれないので、未視聴の方はご注意を。
どんなドラマ?
高校時代に撮影したドキュメンタリーが人気を集めたことで、10年ぶりにカメラの前に立った元恋人同士のチェ・ウン(チェ・ウシク)とクク・ヨンス(キム・ダミ)。もう二度と会うことはないと思っていたのに…。
癒やし★★★★★
スピード感★★☆☆☆
優しさ★★★★★★★
目線の転換がすばらしい
最初はウンがヨンスを見つめる視点、後半にかけてヨンスがウンを見つめる視点。どちらも相手を見ているのに、伝わっていない。本当にもどかしくて、もどかし死にするかと思った。
ウンが「あいつのことが嫌いだ」と言うたびに、「好きだ」に聞こえて困った。ウンは何度もヨンスの腕をつかむ。いつも必死で、今にも泣き出しそうなウンの顔が忘れられない。
ハルモニに楽をさせて平凡な生活がしたいヨンス。「必死に生きたくない」というウンとは2人の現実があまりにも違うから、劣等感を気づかれないように。ヨンスがひとり水道の水を流しながら泣くシーン、感情移入しすぎてもらい泣き。
ジウン、NJ、チェラン、複数の人の目線から立体的に浮かび上がる構成になっているのもよくできている。「僕たちはみんな、哀れだよな」とウンは言う。視聴者は心の声とともに彼らみんなの視線を追うことができたが、現実に生きる私たちは自分の目線でしか見られない。目の前の人の背景にある事情までは見えない。だからこそすれ違うし、だからこそ寄り添える。
嫌な人が出てこないのもこのドラマの好きなところ。恋敵?NJちゃんも嫌味がなくてとても良い子で好き。芸能人だろうが人間。違う世界の人として描いていなくて、親近感があってよかった。
自分の人生を生きる
単純に美しい、楽しいエンタメで終わらず、「自分をさらけ出す怖さ」「弱みを見せられない弱さ」「向き合う怖さ」をしっかり見つめているところがすばらしいところだ。みんなどこか弱さを抱えている。
ウンのこのセリフに泣きそうになってしまった。見下されるのが嫌で、謝るのが難しいヨンス。そんなヨンスのことを誰より分かっていて、ふたりの仲直りの仕方をよく理解しているウン。愛に溢れていて泣きそう。ちいさな声でごめん、というヨンスも可愛くて。
彼らは一緒にいることで人間として成長していく。与えてばかり、待つばかりから自分のやりたいことをきちんと言えるようになり、「ごめん」も「つらい」も吐き出せるようになる。そんな関係は健全で理想的だ。自分の人生を生きている同士、そういうパートナーと一緒にいることの幸せ。
本当に本当に大好きなドラマ。これで終わりじゃなく、彼らは私の中で「その年」を生き続ける。史上最高の完璧な「サランへ」を聞きたいならこのドラマを見るべし。