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【ドラマ感想】まさに人生ドラマ『私の解放日誌』

またお気に入りが見つかって嬉しい限りだ。

今回のドラマは、先日終了したばかりの『私の解放日誌』。じわじわと心に沁みる名作『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん』の脚本家の最新作とあって、放送が始まる前からずっと期待していた。軽くネタバレするかもしれないので、未視聴の方はご注意を。

どんなドラマ?

京畿道の静かな田舎町に両親と暮らす三兄妹。愛を求める長女ヨム・ギジョン、計画性のない人生を望む次男ヨム・チャンヒ、人生で1度も満足したことがない末っ子ヨム・ミジョン。

そんな家族の元にク氏と名乗るミステリアスな男が現れ、住み込みで父親の仕事を手伝うようになる。朝から酔っぱらい、自分の素性を一切明かそうとしない彼は一体何者なのか。

まずこのポスターの雰囲気が好き

見覚えのある息苦しさ

社会の中で目立たないタイプの人たちがたくさん出てくる。というか、ほぼそういう人たちだ。人が多いと疲れるとか、周囲と上手く馴染めないとか、わかる人にはよく分かる。

田舎特有の狭いコミュニティの息苦しさ、社会での立ち振る舞い、人間関係の煩わしさ。誰もが感じたことのあるような息苦しさを見事に描いている。人生のなかでどれかひとつくらい、みんな経験しているのでは?と思えるくらいだ。

何も起こらないし、誰にも愛されない。平凡で退屈な日々はそれでも続いていく。心の底では変化を強く望みながら、また通勤の電車に揺られる。みんな解放されたい。弱い自分から、取り繕ってしまう自分から、隣の席の口うるさい同僚から、運命から。

愛すべき隣人

「あー、お風呂に入れてくれるロボットがほしい」とギジョンが言っていたのに笑ってしまった。私と考えること同じ!このシーンやク氏のまさかの跳躍力のシーンで使われたコメディ的演出には少し驚いたのだけど、よりこのドラマが好きになった。

それぞれの物語が同時に進行していくが、やはりク氏とミジョンが好きだ。ミジョンは近寄りがたい雰囲気の彼に近づいていき、そういうしているうちに少しずつ自分の考えていることを吐露するようになるク氏。お互いがお互いに作用して、変化を生んでいく。

自身の解放を考える内省的ドラマ

未だかつて、こんなにも内省的なドラマがあっただろうか。それぞれの生き延び方を丁寧に描いていた。生き方ではなく、生き延び方。ミジョンは「1日5分のときめきを探す」と言っていた。それを真似するク氏が愛おしかった。

人生において変化が起きるときは宝くじが当たるとか、ピンチを救ってくれるヒーローが突然現れるとか、大きいことじゃない。ちょっとだけ自分を愛らしく思えるとか、転がったコインがあと少しのところで道端の排水口に落ちなかったとか、そういうことだ。

ところで、解放とはなんだろう。まず自分は何に縛られているのだろうか。何が原因でそこから逃れられないのだろうか。そういったことに気づき、自分自身や運命を認めること。そこからが解放を考えるスタートだ。

ものすごく癒やされたドラマだった。セリフも良いのよ。あと少しのところで持ちこたえて、今日も生き延びようと思った。


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