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新生活が始まる不安を友人2人と泣きながら話した話

昨日、地元の友達と久しぶりに夜ご飯を食べた。2人とは中高と同じ部活で、大学はそれぞれ違うけれど年に3回は集まって遊ぶような仲だ。そのうちのS美がちょうど誕生日だったこともあり、最後に地元でお祝いしようと話がまとまった。S美とK子はお昼ごろから会っていたらしく、そこに私が夜から合流する形になった。

駅周辺で待ち合わせたときから、マスクからのぞくS美の目元がほんのり赤くなっていた。店に向かう道中も、「ここ最近今までにないくらいメンタルやばいねん」と漏らしていた。電車の中でもちょっときてた、と。

向かったのは以前にも同じメンバーで来たことがある馴染みのお店で、自家製の釜焼きピザとパスタが絶品のイタリアンだ。個人経営のお店なので店員さんもフレンドリーでパッと明るい。たくさんあるメニューの品の中からオレンジのノンアルカクテルと彩り野菜のサラダ、水牛モッツァレラとバジルのトマトソースパスタ、サーモンとトマトのピザ、レモンとはちみつのチーズピザを注文した。

料理が運ばれてくる間、最初にそれぞれの配属先について話した。私とS美はひとまず東京研修、K子は京都の北部に赴任になった。東京組は秋ごろには上京することが確定していたので心の準備も引っ越しの手配もそれなりにできていたが、K子は3月の初頭にやっと配属発表があったそうだ。もともと実家通いの希望を出していたために、一人暮らしの実感も皆無だと話していた。慌てて家電やベット等を購入していく中で、「あれ…?ほんまに春から一人暮らし?」と急に自分事になっていったという。

みんな今回はなぜかノンアルコールのドリンクを頼んだ。美味しい。サラダとパスタをとりわけながら、まだ目が潤み続けているバースデーガールS美の話を聞いた。彼女によると、職業柄入社前から勉強することが多く、休日も自腹でスクールに通うことが決まっている。同期と顔を合わせた際に、周りはみんなずっと前から試験勉強を始めており、自分だけ遅れていることにとても焦っている。1か月前に彼氏と別れたこともあって、その時も寂しいとか悲しい気持ちだったけれど、今は仕事やっていけるかなとか、東京で一人暮らしやっていけるかなとか、もう、生きていけるかなとかそんなことばっかり考えてしまう。家族や友達と離れて一から人間関係作っていくのも不安やし、なんかもうどうしたらいいかわからん……というようなことを涙ながらに話してくれた。
今文字に書き起こしてみると少し冷静に俯瞰できるけれど、普段あまり泣き顔を見せない彼女の表情と言葉に、聞いている側もつられて泣きそうになった。

一枚目のピザが運ばれてきた。閑話休題。
サーモンとトマトのピザは口に入れた瞬間サーモン、あとからオリーブオイルとトマトの風味がいっぱいに広がる。美味しい。
私は大学2回生のときから一人暮らしをしているので、一人暮らしをするということにおいてだけはなんとかなるさ、むしろ知らん土地でうまいことやりくりしたろうやないかという気概が不思議とある。が、未知の「はたらく」ということ、それに付随する人間関係や仕事、何かわからないけれど急にむくむくと湧き上がってくる自己責任、学生でなくなることへの漠然とした不安、ほんまに自分大丈夫か?という考えてもどうにもならなことに対する釈然としないモヤモヤはここのところすぐ頭をもたげる。そういったことをお互いとにかく言い合った。言葉として形になってなくても、とにかく自分たちが出せる言葉でその場に出すしかできなかった。みんな解決策を求めてるんじゃなくて、ただただ不安であることを誰かに聞いてほしかった。1人が泣くのを見ると、またつられて2人も涙が出る、をまた繰り返した。

二枚目のピザが運ばれてきた。閑話休題。
食後のデザートのようなレモンとはちみつのチーズピザ。お好みでどうぞのはちみつをピザにかけていると、2人に「もっと!いっぱいかけて!」と援護された。はちみつポットの二分の一がなくなるくらいまでたっぷりかけた。
ああ、レモンの甘酸っぱい酸味とはちみつの優しい甘さがチーズと一緒になって口に飛び込んでくる。塩味のピザ生地と相まってこれまた美味しい。

料理を食べ終わって、少ししてから一旦お店を出ることにした。ピザを食べながら泣いたり笑ったりしている20代女性3人はどう見られていたのか……。少し申し訳なさもあったけれど、お店を出るまで店員さんとシェフの方が明るく見送ってくださった。もうこんな小さな気遣いでもまたなんだかじんわりしてくる。

お店を出ると21時過ぎになっていた。何となく解散しがたくて、近くのコーヒーチェーン店に移動することに決まった。そこからは不安話だけじゃなくて、この間行った旅行の話、地元の友人の話、最近あった出来事など取り止めのないことをたくさん話した。中でも面白かったのが、ただ各々の日記を上げていくLINEのグループを新たに作ろう、となった話。ご飯は食べているか、夜眠れているか、メンタルが弱ってないか、何でもいいからつぶやいて、返信しなくても大丈夫なトークルームを作った。1日たった今のところ、「掃除ができてえらい」「朝起きて30分だけ勉強した。えらい」「兄からホワイトデーのお返しもらった。かわいい」「自己嫌悪の波きた。情けない」「自分も昨日なった!大丈夫や」とかなり平和に励まし合い、自分たちを全力肯定する場となっている。とても貴重だと思う。


随分と長い間、弱さを人に見せられない、上手く人に頼れない、という状態が続いていた。必要以上に自分を責めてしまったり、同じぐるぐる思考に陥って、また気持ちが沈む、閉塞する悪循環を繰り返していた。今回、10年来の友人と、ようやくお互いの弱さを共有し合えるようになった。溜め込む前に、まずそのままの形で安心して吐き出せる場所ができた。このことはすごく、自分にとっても大事で、ありがたいことだなと思う。自分だけではないことを、また改めて感じさせられたいい夜だった。

そして釜焼きピザが、とてもとても美味しかった。

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