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「青春18きっぷ」の旅の途中、福知山のおじさんに天橋立に連れて行ってもらった話。
あれは、私が大学時代の春休み。約20年前のことだ。
友人と2人で「青春18きっぷ」の旅に出た。
「青春18きっぷ」は、日本全国のJR線の普通・快速列車の普通車自由席及びBRT(バス高速輸送システム)、ならびにJR西日本宮島フェリーに自由に乗り降りできる切符。
新幹線や特急列車、JR線以外の私鉄列車等には乗車することはできない。
値段は1枚5回分がセットになって12,050円。1枚あたり2,410円。
1人で5日続けて使うこともできるし、5人で日帰り旅行に使うこともできる。
使用期間は、学生の長期休みに合わせた春・夏・冬の3シーズン。
ちなみに、「18歳の心意気があれば、どなたでも」ということらしいので、年齢制限はない。
20年前にいくらだったか覚えていなかったが、当時のポスターに金額が書いてあった。
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11,500円だったようだ(そんなに値上がりしてないことに驚き)。
九州を出発して山陽を通り、兵庫、京都、大阪、奈良、名古屋を経由、京都に戻って山陰からまた九州へ、という約1週間の旅だったと記憶している。
今みたいに、スマホもデジカメも手にしていない時代。ガラケーとインスタントカメラと時刻表を相棒に、普通列車を乗り継ぎ、途中下車して観光しながら、ひたすら移動した。
都会では通勤、帰宅ラッシュの満員車両に乗ってしまったり、田舎では貸切のようにガラガラの車両で車窓からの景色を堪能したり。
その日に行き着いた先でホテルを探し、なければネットカフェで夜を明かす、という無謀さ。さすが学生だ。途中、三宮に住む高校時代の友人宅に2泊させてもらったりもした。
兵庫で明石焼きを食べ、京都の三年坂で舞妓体験をした。大阪では吉本新喜劇(友人が内場勝則さんのファンだった)を観て、奈良では東大寺の大仏様を拝んだ。名古屋では、もちろん金のシャチホコ、名古屋城へ。
あんなに長い時間電車に乗って旅したのは初めてだったし、これからあるかも分からない。本当に貴重で充実した旅だった。
…と、ここからが本題。
京都からの復路、「せっかくだから、天橋立を見に行こう!!」と思い立った。
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天橋立
京都府北部、日本海の宮津湾にある『天橋立』は、陸奥の『松島』・安芸の『宮島』とともに、日本三景の一つ。
幅は約20~170m・全長約3.6kmの砂州に約6,700本もの松が生い茂る珍しい地形で、何千年もの歳月をかけて自然がつくりだした神秘の造形です。
股覗きすると、龍が天に昇るように見えるのだとか。
その日、京都駅から向かい、福知山駅で乗り換え、天橋立に行く予定にしていた。でも、福知山駅に着いたのが真夜中23時半。そこから移動するのは無理だった。
始発まで5時間くらいある。もちろん宿は取っていない。福知山駅周辺で、ファミレスかネットカフェなどで時間を潰すつもりでいた。
でも、駅から外に出て、2人で呆然とした。
ーーな、何もない!
現在は分からないが、当時の福知山駅の前にはファミレスどころかコンビニもなく、ひっそりとした感じだったのだ。
ーーしまった!
それで、駅の待合室にあった分厚い電話帳(懐かしい)を手に取り、どこか時間を潰すところがないか2人で探した。
旅の終盤。予算も底を尽きかけていて、タクシーに乗り、ホテルに泊まるような金銭的余裕はなかった。
電話帳をめくり、居酒屋らしき店に何件か電話を掛けたが、なかなかつながらない。
そして、6件目くらいで。ついに電話がつながった!
「はい。ウルシバラです。」
おじさんが出た。
あれ?お店の名前、違うよね?番号、間違えた??
ーーえっと、居酒屋さんじゃないんですか?
おじさん「あー、ちょっと前にその店たたんじゃってね。」
あら〜、残念。
ーーそうなんですね。…じゃあ、失礼します。
と言って、電話を切ろうとしたその時。
「あ、待って、待って。どうしたの?」
おじさんが聞いてきた。
それで、事情を話し、ついでにどこか時間を潰せる場所がないか尋ねてみた。
「なるほど!分かった。朝まで空いてる喫茶店を案内してあげる。ちょっと待ってて!」
ガチャ。切れる電話。
ええー?!
ーーなんか分かんないけど、おじさんが、待ってて、だって。喫茶店を案内してくれるみたい。どうしよう。
戸惑いながら、友人と待つこと5分。
なんと、電話のおじさんが駅に登場した。見た感じ、70歳手前だろうか。いや、もうちょい若かったかな。
「初めまして、ウルシバラです。よく考えたら、夜中の喫茶店は治安があんまり良くないからね。よかったら、うちで待機しない?この辺、他には何にもないよ。」
正直、躊躇する。
だって、初対面、しかもおじさんのうちに行くってどうなのよ?リスキーだよね??
ただ、元居酒屋の店主なわけだし、悪い人には見えないし…。
「本当に何も心配はいらないからね。おじさんも、若い頃、そうやって旅していたものさ。」
友人と顔を見合わせる。
なんだか他に選択肢がなさそうなので、
ーーじゃ、じゃあ、よろしくお願いします。
と言って、おじさんの車に乗り込んだ。
車は、すぐにおじさんのうちに着いた。
車を降りて、びっくり。めちゃくちゃ大きなお屋敷だったのだ。
和風の一軒家。大きな門の横に立派な松の木がある。門をくぐって、広々とした玄関に案内される。
「あ、そこの客間使って。僕は奥の部屋だから。」
玄関から上がると、広い廊下を挟んですぐ前にある部屋を貸してもらえることに。こたつとテレビがある、多分10畳くらいの和室。こんな立派な場所を提供してもらえるなんて。
ーーありがとうございます。
「それで、明日は始発でどこに行くの?」
ーー天橋立です。
「おー!いいねえ。」
そう言って、おじさんは奥の部屋に消えていった。
2人で温かいこたつに入り、テレビを付ける。数時間なので、交代で仮眠を取ることにした。
ゆっくり部屋で過ごしているうちに、だんだん外が明るくなってきた。ほっとする私たち。
ーーそろそろ始発だね。行こうか。
そう話していたら、おじさんが登場した。
「ちょっとは眠れた?あのさ、僕が車で天橋立、連れてくから。」
え、え?!
ーーそれは、いくら何でもお世話になりすぎなんで、大丈夫です!
と断ったのだが、おじさんが、
「僕も朝ごはん食べたいからさ。」
と言うので、お願いすることにした。
どれくらいの時間、車に乗ったか忘れたが、道中、おじさんが色々な話をしてくれた。
・おじさんも九州出身だということ(そういえば、お店の名前が九州の方言だったような…)
・ちょっと前に、奥さんとお別れして一人暮らしになったこと
・この街が好きで、お店を閉めて寂しいこと
・若い頃はあちこち旅行したこと
・自分もそうしてもらったから、困っている人がいたらつい助けたくなること
私たちも旅のエピソードを話した。おじさんは笑いながら聞いてくれた。たくさん共感もしてくれた。
そうこうするうちに、天橋立の見えるスポットに到着。歩いて山の頂上まで行き、見晴らし台の岩の上から股覗きをした。龍が天に昇るように見えた…と思う。目的を果たし、大満足の私たち。
そして、おじさんは、近くのお店で朝ごはんをご馳走してくれ、最後に駅まで送ってくれた。
至れり尽くせり。当時、ありったけの言葉で感謝を伝えたとは思うが、今考えても、どんな言葉でも足りない気がする。本当に親切な方だった。
旅行の後、御礼の品か、せめて葉書でも送りたいと思ったけれど、福知山の「ウルシバラさん」ということしか分からず、何もできなかった。
今更ながら、調べてみると。
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どのルートで連れて行ってもらったか分からないが、片道1時間前後の、まあまあな距離だったということに驚く。朝ごはんを食べに行く距離じゃない。きっとおじさんは、私たちが気を遣わないよう、そう言ってくれたんだろう。
翌日、無事に九州に到着し、私たちの「青春18きっぷ」の旅が終わった。
こうやって振り返ってみると、旅は、本当に人生を豊かにしてくれる。色んな景色や食べ物、人と出会わせてくれる。もちろん、ハプニングも付きものだけれど。それも含めて大切な経験だ。
またいつか、あんな風に18歳の心意気で旅をしてみたい(多分、宿は事前に取るけど)。子どもたちも、もう少し大きくなったら、自分で計画して旅に出てほしいと願う。
※画像などお借りしました。
*
最後までお読みいただきありがとうございました♩
この場を借りてご挨拶。
ウルシバラさん、親切にしていただいて、ありがとうございました!本当に助かりました。あの時のご恩は、今でも忘れていません。
一緒に旅した友人Kちゃん、本当に貴重で楽しい思い出をありがとう。時刻表見るの得意で、助かったよ。よかったら、またいつか一緒にどうでしょう。笑
※この記事は、2022年12月21日に投稿したものを、今回書き換えて再投稿したものです。
***2024/7/29追記***
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