私、まだまだ伸びしろあるなと思った話。
先日、私用があり、1人で飛行機に乗った。LCC(ローコストキャリア)のタイムセールでチケットが取れたので、リーズナブルな移動となった(ありがたい)。
以前も利用したことがある航空会社だったが、機体の内装は初めてのタイプだった。
高級感はないが(すみません)、思ったよりも座席は広い。これなら片道2時間半、快適に過ごせそうだ。
座席は、通路を挟んで両側に3席ずつ並んでいる。私は通路側を選んでいた。横には20代と思われるカップルか夫婦(以下カップル)。女性が私の横に座っていた。
ほぼ定刻通りに離陸。私は本を読んでいた。お隣りカップルは、仲良く1つのスマホで野球を観戦している。
しばらくして、私はある事に気が付いた。
空調が強すぎる。私の頭頂にガンガン風が当たっているのだ。しかも冷房。出発地の気温が高かったので、機内を冷やすため、最初だけ強いのかなと思っていたが、なかなか弱まる気配がない。
頭上にある空調の吹き出し口を見ると、細長いものが3席まとめて1つ。今まで見たことのある、丸型でそれぞれの席に1つずつある吹き出し口ではないようだ。丸型タイプなら、真ん中につまみがあり、調整できる。
ーーあ、これは調整できないタイプなのか。
瞬時に判断し、少し残念な気持ちになる。
私は偏頭痛持ちなので、気圧、風、光などの刺激で痛みが出てしまう。経験上、頭や首筋に長時間直接風を浴び続けると、特に良くない。
これはまずい。どうしよう。何か頭を保護する物はないかな。今日は帽子も持ち合わせていない。
そこで、いいことを思い付いた。
ーーうん、仕方ない!これでいくか。えいっ。
バッグの中からハンカチタオルを取り出し、頭にかぶることにした。思ったよりサイズが大きめだったので、かぶると、鼻の真ん中位まで覆われた。
視界を奪われたので、読書は諦めて、イヤホンで音楽を聴くことにした。
見えないので分からないが、横のカップルは、多分ギョッとしたと思う。隣りのおばさんが急に頭にハンカチをかぶっているのだから。
ーー背に腹はかえられないのよ。ごめんなさいね。
人目を気にしている場合ではないのだ。あの頭痛に比べれば、ちょっとくらい変な人と思われることくらい全然オッケーだ。
音楽を聴いているうちにいつの間にか寝ていたようで、気付いたらあと少しで着陸の時間だった。
相変わらず、空調は強い。
でも、ハンカチのおかげで、頭の芯まで冷えることは免れているようだった。
程なくして、無事に目的地の空港に着陸した。
ーーあー、よかった。これでもう大丈夫。
バッグにハンカチを戻し、飲み物や本も片付ける。
ところが。今度は、地上を車輪で移動している機体がなかなか止まらない。地方から、しかもLCCあるあるなのかも知れないが、建物からだいぶ遠い場所に着陸するのだ。そこからの移動にめちゃくちゃ時間がかかっている。
またも頭頂に浴びる強風。またハンカチをかぶるのもなんだかなあと思っていたら、前の座席ポケットにあるものを見つけた。
それは、機内販売などのお知らせが書いてある厚紙だ。下敷きみたいなやつ。あ、これちょうどいい。
今度はその厚紙を両手で持ち、頭にかぶせた。紙なので、いい感じに三日月カーブになり、強風からばっちりガードしてくれる。ありがたや。
でも、これまた、かなり奇妙な光景だったはずだ。ハンカチの次は厚紙を取り出し、頭にかぶるおばさん…。私だったら、本当にこの人大丈夫か、と思うだろう。
それからしばらくして、やっと機体が所定の場所に到着した。下敷きをポケットにお返しする。お世話になりました。
ポーン♪という音とともに、シートベルトサインが消える。すぐさま私は席を離れ、通路に立った。
ーーやった!早く、ここから脱出しなければ!
荷物を取り出し、前の方が順番に降りて行くのを待つ。
すると、降りる準備をするため、私が座っていた席にカップルの女性がずれて座った。その隣りに男性。女性はちょっとびっくりしたような素振りを見せた。多分、空調に驚いたのだ。
ーーですよね、ですよね。その席、めちゃくちゃ強風なんですよ。
そう心の中で話しかけた、その時。
カップルの男性の右手がすっと上に伸びた。
クルクル。キュッ。
ーーん?
なんと!
見間違いかと思ったが、それは間違いなく空調の調整つまみだった。
長方形の吹き出し口の近くに、それぞれの席用に調整つまみが3つ並んであったのだ。
ーーえ。
実は私、吹き出し口を確認した時、確かにそのつまみも見た。ただ、勝手にそれは照明のスイッチだと思い込んだのだ。
ガーン。
空調、調整できたのか…。私がガンガン浴び続けた冷房は、つまみが全開になっていたせいだったのだ。
どうりで、周りの誰も寒がっていないはずだ。冷静に考えれば、空調が調整できないことなんてないのだ。そんなことも考え付かずに、私は頭を強風から守ることだけに必死になっていた。
その事実を知った瞬間、私はほんのちょっとの敗北感と、男性への尊敬の念を抱いた。
私が2時間半考え付かなかったことを、男性はものの5秒で見抜き、解決に至ったのだ。
そして、しばらくすると、男性に対して感謝の気持ちも出てきた。だって、その男性がつまみで空調調整をしてくれなかったら、私は「あの航空会社の機体は空調調整できない」と負の感情を抱いたままとなり、この先お得なチケットがあっても避けたかもしれないからだ。
歳を重ねても、日常生活には知らないこと、分からないことがあるもんだな。私、まだまだ伸びしろあるな~と思った(知ってます、分かってます。本当は伸びしろじゃなくて、勘が悪いとか、判断力の低下って言うこと。でも敢えてそう言わせといてください。よろしくお願いします)。
それと、何か困った時は、やっぱり自分だけで何とかしようとしないで、若い方々(今回はCAさんでも良かったよな…)にも遠慮せずにアドバイスをもらおう、と心に誓った。
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最後までお読み頂きありがとうございます。
今までもあんなことやこんなこと(↓)など、色々と失敗の多い人生な気がします。まあ、それも含めて私なんだなあと改めて思った出来事でした。
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