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【2024年8月17日(土)】まささん(MA²様)とのコラボ対談スペース・内容


<この記事の要約>

●MA²で企画・シナリオ・スクリプトを担当するまささんと対談
●ゲーム作りの原点とこだわりのポイントについて質問
●『Control』の魅力についてネタバレなしで語り合う

 いつもお世話になっております。えりんぎです。本日も当ブログの記事を閲覧いただき大変ありがとうございます。
 
 さて、本日は、私が2024年8月17日(土)に行われた「まささん(代表作:『Control』)」とのコラボ対談スペース(X上でのスペース)の内容を、MA²(エムエースクエア)様の許可を得た上で記事化させていただきました。

MA²様WEBページ


 8月17日(土)にリスナーとして参加していただいた方も、参加できなかった方も、あるいはコラボ対談スペース自体に関心がない方も、こういうことをしているよ、程度に記事を閲覧いただけると幸いです。
 
 なお、まささんが所属しているサークル、MA²様から頒布されている作品『Control』については以下のように感想記事化してあります。

 当該記事はMA²様のガイドラインを遵守したネタバレなしの感想記事ですので、もし作品自体に興味がおありなら是非、閲覧いただきますようお願い申し上げます。
 
 それでは、早速対談の内容に移ります!


1.簡単な自己紹介

幼少期よりゲーム三昧の人生

まささん:
MA²というゲーム制作サークルで企画・シナリオ・スクリプトを担当しております。まさと申します。本日はよろしくお願い致します。
 
えりんぎ:
はい、よろしくお願い致します。早速ですが、簡単な自己紹介を、私の方から。
では、改めましてみなさん、こんばんは。えりんぎと申します。現在はYouTube、ラジオ、スペース、ブログにてビジュアルノベルの魅力の発信や、自分の価値観について発信する活動をしています。ちょっと色々と手を出し過ぎている感もありますが、自分の整理できる範囲で楽しんでいますので、何卒よろしくお願い致します。

まささん:
MA²ではミステリー系の18禁のアドベンチャーゲームを中心に作っており、正式に発足したのは 2022年の8月になります。今、最初の作品である恋愛ミステリーアドベンチャーゲーム『Control』を作っており、最新バージョンは共通√とヒロインの一人である小原節子(おばらせつこ)というヒロインの個別√を収録した『節子編ver.2』になります。先日パッケージ版が完売したので、ダウンロード版だけになりますが、現在頒布中です。

えりんぎ:
まささんは大分昔からゲームにすごく親しみを持っているようですね。

まささん:
そうですね。幼稚園に入る前からだと思いますが、ファミコン(ファミリーコンピュータ)よりもさらに昔、ゲーム&ウォッチという携帯型のゲームがあったんですが、その頃からゲームばかりしていますね(笑)
 
その後順当に、スーパーファミコン、PCエンジン、メガドライブ、セガサターン、プレイステーション各機、Switchなどの家庭用のゲーム機に加え、アーケードゲームも小学生の頃からプレイしてきましたが、アドベンチャーゲームに関しては特にファミコンの時代の『ポートピア連続殺人事件』や『オホーツクに消ゆ』、『ファミコン探偵倶楽部』などが私の原点になっていると思います。

えりんぎ:
やはりすごくご経験があるんですね。また、夏コミお疲れ様でした。

まささん:
いえいえ。本当にとんでもなく暑かったので、結構ハードでしたけど(汗)、ありがとうございます。

えりんぎ:
私も同人活動を学生時代にしていたことがあって。コミケにサークル参加する側の雰囲気も、一般参加する側の雰囲気も分かるんですけど、やっぱり体調崩しますよね(笑)

まささん:
相当対策しないと危ないですね。今回は2日目の西棟に配置されましたが大分暑かったので。ただ、エアコンを含む設備の大規模改修が会議棟から順次進んでいるので、西棟や東1~6もいずれは涼しくなると思いますが。

えりんぎ:
夏コミの(Xの)ポストも拝見していましたが、『Control』を買っていらっしゃる方もすごく多かったという印象を受けました。

まささん:
ありがとうございます。

えりんぎ:
私も実は、今回のスペースに臨むにあたって、作品への理解を深めるために2周目をプレイしました。

まささん:
ありがとうございます!

えりんぎ:
やはり面白い作品だと改めて思いました。
私自身、『Control』を知ったのが5月11日の昼に私がスペースを開いた際、サウンド担当のKeica*さんに「こういう同人作品が色々あるよ」とご紹介いただいた中に『Control』が入っていたんですね。私も同人作品が好きなのでプレイしてみたら「これは面白いじゃん!」って。

まささん:
ありがとうございます。

えりんぎ:
ミステリーも好きですし、それですごく興味を持ちました。ですからKeica*さんには本当に感謝しておりますし、何より作品を制作なさっているMA²の方々には本当に感謝してもしきれないと思っています。

まささん:
とんでもないです。こちらこそ。
 

えりんぎ:
やっぱり良作と言われているゲームっていうのは、それ相応の覚悟と信念を持って作られていると思っていて。実際に2周目をプレイして、演劇に関してある程度知識がないとこの作品書くのは難しいだろうなと感じました。

まささん:
どうなんでしょうね(笑) 経験が全くないわけではないんですが、さほど詳しくはないと思います。取材は勿論しましたが。

2.シナリオライターを志したきっかけ

二度目の大学受験直前にプレイした
『EVE burst error』と、人生の転機
直前にプレイした『WHITE ALBUM2』

えりんぎ:
シナリオライターを志したきっかけは何だったんでしょうか?

まささん:
所謂エ〇ゲをプレイし始めたのは大学生からなんですが、そのエ〇ゲのライト版と言うべきコンシューマー版、当時はセガサターン向けのソフトでしたが、それをプレイし始めたのは浪人生の頃でした。その頃に『野々村病院の人々』をプレイして「うわ、これ面白いな」と思って(笑) その後大学入試直前には「もうここまで来たらあとは心をリラックスさせよう」と、ゲームばかりしていたんですがその中で『EVE burst error』をプレイしたんですね(笑)

えりんぎ:
いやあ、これはまた特大の衝撃作を、繊細な時期にプレイなさいましたね(笑)

まささん:
はい(笑)、ものすごく衝撃受けました。それまで私は悲しい物語や感動的な作品に触れても泣くことはまずなかったんですが、この『EVE』をクリアした後は、本当に涙が止まらなくなって、ボロボロになりました。でも、それが落ち着いた後、「なぜ自分はこういう風に心を動かされたんだろう」と思う一方、作中のいろんな謎が自分の中で消化しきれず、「どうしてこういう話の流れになったんだろう?」といった疑問が次から次へと湧いてきて。それですぐに2周目をプレイし、ひたすらメモを取って(笑)、「ここにこんな伏線がある」といったことを発見しました(笑)

えりんぎ:
分かります、分かりますよ(笑)

まささん:
そんなことをしているうちに、「こんなすごい作品をいつか自分も作れるようになりたい」と思ったのが、ゲーム作りのきっかけでしたね。その『EVE burst error』のシナリオを作ったのが菅野ひろゆきさんという方なんですけど、大学入学後も『DESIRE』や『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がサターンに移植されたので、菅野さんの作品を中心にプレイしていきました。
それと同時に大学の勉強もしながらゲーム作りに関わる知識を学んでいって、色々チャレンジしたんですが、正直上手くいかず…。しばらくは純粋にプレイヤーとして楽しんでいましたね。社会人になったら忙しくなったので、それも滞りがちにはなったんですが。

えりんぎ:
はい。

まささん:
そうして15年ほど経った2015年、チラッと観た『冴えない彼女の育てかた』という、丸戸史明さんが作った、まさに同人ゲームを作る内容のライトノベルなんですけど。

えりんぎ:
そうですよね。

まささん:
はい。そのアニメに出会い、コミカライズや原作に触れたことが、自分自身を見つめ直すきっかけになり、後々2017年には自分の生きる道も変わりました。
『冴えカノ』に出会った後の2016年には丸戸さんが『WHITE ALBUM2』を作っていることを知り、まずアニメをその年の年末に一気見しました。この段階で「これはとんでもない作品だ」と感じ、どんどんのめり込んでいきましたね。
そして年が明けたら早々に原作ゲームの実はPC版……は元々買っていたんですがずっと積んでいたので、それを棚の奥から引っ張り出してきて(笑)、一ヶ月かけて一気にプレイしました。

えりんぎ:
そうですよね。それくらいは掛かると思いますよ(笑)

まささん:
そうしてクリアし、「やっぱりこの『WHITE ALBUM2』はもう本当にとんでもない作品だ」と再認識しました。それは勿論、物語も絵も音楽も、また単純に作品の規模もとんでもないんですが、やはりゲームとしても凄い、「エ〇ゲの何たるかを知り尽くしている人が作っている作品だ」というのを強く感じて。

えりんぎ:
そうですよね。本当に『WHITE ALBUM2』はもう Top of Topの地位にいると思っています。

まささん:
こうして『冴えカノ』と『WHITE ALBUM2』に出会い、さらに自分の身の回りの状況が変わったこともあり、「もう1回ゲーム作りにチャレンジしよう」と思い立ちました。
その一方で『WHITE ALBUM2』にどんどんのめり込み、まさに今いらっしゃるCoHさん(CoHさんにお名前を掲載する、ご許可をいただきましたので、お名前を公開させていただきます)がきっかけだったんですが。CoHさんの『WHITE ALBUM2』の演奏動画を観るようになってからSNSを始め、『WHITE ALBUM2』が好きな人と交流を深めていく中で、2019年から二次創作の小説を作り始めました。
そうして『WHITE ALBUM2』のSSを7本作ったんですが、今、MA²でキャラクターデザインとイラストを担当して下さっているまいまいさんが、2022年の年初にそのSSを読んで下さって、すごく熱い感想を送って下さったんですね。そのやりとりの中で、「近々ゲーム作りに挑戦したいと思っています」と話をしたら、同じような事を思っていらっしゃって、「じゃあ一緒に作りませんか?」とお誘いした結果、MA²を立ち上げる事になったという、そんな流れですね。

CoHさんのチャンネル

えりんぎ:
ありがとうございます。MA²が発足したのはつい最近なんですね。

まささん:
そうですね。『Control』の最初の体験版をリリースしたのが2022年の冬コミですが、その後コミケごとにバージョンアップさせていますね。

えりんぎ:
なるほど。サークルさんごとに様々な歴史があるとは思うんですが、MA²ではそういったSSとかを中心に活動なさっていたまささんと、それに対して熱い感想を送って下さったまいまいさんがいらっしゃって、その中でゲーム作りをしようと決意を固められたんですね。

まささん:
そうですね。まいまいさんは本当に絵が上手い方ですし、それに加えてエ〇ゲを含めたゲームがすごくお好きで詳しいですし、さらにミステリー小説に関しては、私よりも遥かに読書量がある方なので。

えりんぎ:
そうなんですか!?

まささん:
勿論、イラストの面でも絶大な力をいただいていますが、ゲーム全体や物語を作っていく中でも、まいまいさんのお力はかなり大きいですね。

えりんぎ:
ありがとうございます。そういうことなんですね。まいまい先生の力もあって、色々な方々が集って、MA²の今に至るっていう現状ですね。

まささん:
そうですね。

えりんぎ:
ありがとうございます。ところでまささんが、シナリオに最も魅力を感じた作品は、何だったんでしょうか?

まささん:
「最も」となると本当に難しいので、(笑)、やはり『EVE burst error』と『WHITE ALBUM2』の2つですね。物語の方向性自体は違うんですけど(笑)

えりんぎ:
違いますよね(笑)

まささん:
やっぱりこの2つが圧倒的ですね。自分の中では。『EVE』に関しては、主人公が2人いるシステムを活かした、ゲームだからこそできる、結末に至るまでの伏線の仕掛け方が特に魅力的ですね。

えりんぎ:
はい。設定だけは(知っています)。残念ながら未プレイなんですけど、いつか絶対プレイしようという作品なので。

まささん:
はい。菅野さんは、ゲームだからこそ表現できることと、プレイヤーがゲームの進行に関与できる、相互作用を及ぼせるインタラクティブ性に強く拘っていたので、
そこは私も見習いたいと思っています。私自身元々色んなジャンルのゲームをプレイしてきたので、やはりゲーム性は大事なポイントですね。ゲーム性という観点では『EVE』よりも『YU-NO』の方がもっと凄くて、完全に世界観とゲームシステムが一体化している作品なので。自分が知る限りでは少なくとも未だにあれを超えるアドベンチャーゲームは出ていないと感じています。ああいう作品は流石に、自分のスクリプトのスキルが全然大したことないのもあり、絶対に作れないと正直感じています(笑)

えりんぎ:
はい(笑)

まささん:
『WHITE ALBUM2』に関しては心理描写がとてつもなく繊細で、しかも恐ろしく理詰めで作ってあるので、原作と全く異なる展開を想像する余地がほとんどないんですよ。ですから、一つ一つの場面や台詞、その演出、魅せ方含めて、「どうしてこういう風にしたのか?」という意図が、手に取るように分かるんですよね。

えりんぎ:
うーん、選択肢にもすごく意味がある作品というか、必然性がある作品だと私は解釈しているんですけど。

まささん:
そうですね。それで如何にプレイヤーの感情をグワングワン揺さぶりまくるか、そのコントロールの仕方はものすごく巧いと思いました。そしてエ〇ゲの常識を逆手に取ったことも結構しているので、本当にエ〇ゲ作りの教科書だと自分は感じていますね。あのとんでもない作品の規模を除いては(笑)

3.『Control』の魅力についてネタバレなしで語る

豊富な選択肢、テンポの良い文章、
魅力的なビジュアルとキャラクター

えりんぎ:
次は『Control』の魅力について、ネタバレなしで語ろうと思いますが、やはり選択肢がとても多いというのは大きいですね。私は同人作品をさほどプレイしていないのですが、私の知る限りで同人作品は凝った選択肢が出てこない傾向にあると感じていました。それに対し『Control』は、節子に対して正志が取る行動を、文字通り選択肢で選ぶのを本当に逐一、丁寧に作っている作品だと思いました。そこがまず凄いと思った点ですね。

まささん:
ありがとうございます。

えりんぎ:
もう一つ挙げるとしたら、私、2周目をプレイしてようやく気付いたんですが(笑)、地の文がほとんどないですよね。1周目には全然気付かなかったんですが(笑)、キャラに喋らせてここまで描写するのは凄いと思いました。特に『Control』は演劇モノじゃないですか?

まささん:
はい。

えりんぎ:
ですからそれぞれのキャラクターに、演じる得意分野や、あるいは脚本の執筆、機材関係の担当などの。役割があるわけですよね。

まささん:
はい。

えりんぎ:
それを各キャラがそれぞれの背景の下で選択しており、それに対して主人公が選択肢でアプローチできるという点が非常に明確だったので、プレイしていて「なるほど。確かにそういう行動になるわ」と思ったんですよね。

まささん:
ありがとうございます。そうですね。選択肢を沢山作ることと、地の文を極力入れないことは、特に拘ったポイントですね。選択肢に関してはゲーム性をちゃんと持たせたいのが一番の理由です。自分自身も選択肢が少ない、もしくはないゲームは、プレイしているうちにどうしても飽きてきちゃうんですよね(笑)

えりんぎ:
それはとても分かります(笑)正直、分かります。

まささん:
世の中には、それこそ『魔法使いの夜』という、選択肢が全くないビジュアルノベルもありますけど、逆にあれは、その演出の凄さと奈須(きのこ)さんの文章で押し切れるからそれが出来るって事だと思うんですよね。

えりんぎ:
そうですよね。それは思います。共感もします。

まささん:
ただ、「やっぱりゲームではないよな」とは感じてしまいますね。もの凄い作品だとは思うんですが。
だから、自分はゲームであることに拘りたいからこそ、選択肢を多くして、主人公である溝口正志(みぞぐちまさし)という脚本担当の新人がいますけど、彼を主人公としてプレイヤーの方には感情移入して欲しいという想いもあって選択肢は……あまり多くなり過ぎない程度にではありますが(笑)、できるだけ入れていますね。
地の文を極力入れないことに関しては、菅野さんも丸戸さんも強く拘っていらっしゃると思いますが、私自身もやはりそうです。地の文を入れるとどうしてもテンポが悪くなって、ゲームをプレイする上ではダレる原因になるんですよね。それに「地の文をしっかり書くのであれば小説でいいじゃん」と、どうしても自分は思ってしまうんです。ゲームだから、絵でも音でも、スクリプトを使った動きでも魅せられますし、取れる表現手法は色々あるわけで。
となればそれを使わない手はないですし、そうすれば地の文や説明文をバッサリ省けるんですよね(笑) 実際に書く方としても、その方が楽というのは正直ありますし、プレイする側からしてもテンポ良くサクサク進めるので、実際には長い物語だとしても途中でダレるのを防ぐことができます。ですから地の文はできるだけ入れず、ビジュアルやサウンドで演出できる、表現できることはむしろそちら優先で表現することに、特に拘っていますね。その分まいまいさんのイラストや、Keica*さんのサウンドに大分負担掛けているとは思いますが(笑)

えりんぎ:
でもゲームは総合芸術と言われていますよね、巷では。

まささん:
はい。

えりんぎ:
その通りだと思うんですよ、私は。ビジュアルノベルと謳っている以上、やはりビジュアルとノベルは必要なんですよ、私にとって。まいまいさんのビジュアルと、まささんのノベル、それを彩って下さるKeica*先生はじめとしたサウンドクリエイターの皆さんのサウンド。それらが調和して作品を形成していくのだと私は思っています。やはり『Control』は、同人作品の中では商業作品に引けを取らないレベルだと、正直思いましたね。

まささん:
ありがとうございます。特に今年に入ってから、サウンド担当のKeica*さんもそうですし、演出や販促物などのビジュアルデザイン作って下さっているちくわぶさんのお二人が加入したことで、様々な演出を大幅に強化できるようになったので、より一層文章に頼らない表現の仕方を取れるようになったという気はしています。

えりんぎ:
確かにある意味、文章に頼らず、雰囲気というか抽象的というか……。

まささん:
会話劇ですよね。できる限り会話だけで完結させる。ただ、説明臭い会話にならないようには気を付けなければならないんですけどね(笑)、逆に。

えりんぎ:
あー、確かにそれはあるかもしれませんね。

まささん:
それはそれで難しいんですが。あともう一つ付け加えさせてもらうと、できるだけ主人公以外の視点を入れないことにも拘っていますね。

えりんぎ:
主人公以外の視点を入れない? 正志以外(の視点を入れない)ということですか?

まささん:
そうですね。他のゲームでは、主人公がいない場面が幕間として描かれることが結構あると思うんですけど。

えりんぎ:
はい。Another Viewですね。

まささん:
はい。それが入るとどうしてもプレイヤーが神の視点になるという懸念はあるので、それは出来るだけ入れたくない。そうすることによって、かえって感情移入がしにくくなったり、表現できることに大きな制約が生まれたりするのを実際、作っていて感じるんですが(笑)、それでも主人公視点を出来るだけ崩さないことには拘っていますね。

えりんぎ:
確かに、『Control』をプレイしていて思ったのが、正志が選択をしていっているから、後半になっていくにつれてどんどんどんどん個性が出てくるんですよ。

まささん:
なるほど(笑)、はい(笑)

えりんぎ:
私が選んでいるから、プレイヤーが選んでいるから、どんどん正志というキャラクターが選択肢でヒロインにアプローチをするじゃないですか?

まささん:
はい。

えりんぎ:
それによって、ある種軽薄な側面を持っていることや、あるいは脚本作りにどれだけ全身全霊を尽くしているのかを分からせる選択肢があると、私は感じたんですね。

まささん:
なるほど。そうですね。それに関しては2つ、理由があると思います。1つは、菅野ひろゆきさんの作品にはコマンド式総当たり式のアドベンチャーゲームが多いんですが、その中には、「明らかにこれを選んでも話が進まないな」というコマンドが結構あるんですね。

えりんぎ:
はい。
 
まささん:
そのコマンドが、とてつもなく下らなくて面白いんですよね(笑)

えりんぎ:
はい、はい、はい、はい!

まささん:
本来は一本道のシナリオをプレイしている中でダレさせないための工夫ではあると思うんですが、それも菅野さんの作品の好きなポイントの一つですので、そのエッセンスは取り入れたいと思っていますね。丸戸さんも、選択肢ではなくとも普段の会話劇の中で、そういうお茶らけた部分や、ネタっぽいことも入れたりしているので、そういう肩の力を抜くような、面白さっていうのは(あるのかなと)。

えりんぎ:
そうですね。一時の清涼剤になるような。

まささん:
それが物語の緩急付けるポイントにもなるので。

えりんぎ:
ダレさせないという意味でも。はい。

まささん:
もう一つは、大分裏話的になりますが、正志には、最初はそんなに強烈な個性を持たせるつもりが、実はなかったんですね。

えりんぎ:
なるほど。

まささん:
書いていくうちにだんだんそういう風になっていった面はありますね(笑)

えりんぎ:
そうなんですか?

まささん:
意識していないとやはり自分が影響を受けてきた作品のニュアンスが結構出てきてしまって。
自分もそういう書き方をした方が楽しいっていうのもあるんですが。「ロミオとジュリエット」の公演が終わった後で正志が、エコーズという演劇サークルについて夏美に教えてもらうという場面、ありますよね。

えりんぎ:
はい、ありますね。

まささん:
そのシナリオをまいまいさんにお読みいただいたら、「結構女慣れしている雰囲気ありますね」と言われまして(笑)

えりんぎ:
確かに(笑)

まささん:
それで「だったらそこを伸ばすか」と自分は思って、正志をそういうチャラい、セクハラ主人公的なキャラクターに振っていったところはありますね。

えりんぎ:
なるほど、そういう背景もあるんですね。私…正志もすごく個性的、というか主人公として魅力的なキャラクターしているなとは思っているんですけど、私、宮田君が好きなんですよね。

まささん:
ああ、はい。一郎ですね。

えりんぎ:
はい。私、男性は宮田。女性は…節子編なのである意味必然とも言える、節子が好きなんですが、宮田は本当に、よくこんなキャラを作ったなと思っています。

まささん:
ネタバレにならない範囲で、どういうところが魅力的、あるいは面白いと思いました?

えりんぎ:
結構、オラオラキャラじゃないですか。

まささん:
まあ、そうですね(笑)

えりんぎ:
結構珍しいと思ったんですよ。ここまで主人公に圧かけてくる男性キャラクターで、でも芯は通っているというところですね。

まささん:
そうですね。一郎に関しては、作劇上の必然でああいう俺様キャラにしたという面もありますし、自分の考えとしては、あくまで男性向けのエ〇ゲではあるんですけど、女性がプレイしても嫌悪感を抱かれないものにしたいなという想いはやはりあります。
それは菅野さんや丸戸さんの作品もそうなので。その中で特に一郎は、女性に好かれるタイプの男キャラにしたいと、少なからず意識はしています。単純に、ああいうキャラが書きやすいというのもありますが(笑)

えりんぎ:
確かに、物語を動かす上で確かに必要なエッセンスを所持しているキャラクターではあると思っているんですけど。

まささん:
私自身もものづくりが好きな人間ですから、ああいうクリエイティブなことに対して狂気を孕んだ一途さを持っている人間に憧れているので、傍から見るととんでもない奴だけど、一本筋が通っているっていうキャラに、必然的になりましたね。
本当に色々な方が、それこそまいまいさんも一郎と節子が好きと企画初期の段階から言って下さっているんですが、それを作っている自分自身がちゃんと魅力を分かっていない面が、正直あるかもしれないですね(笑)

えりんぎ:
? 一郎と節子に対してってことですか? そうなんですか?

まささん:
「なんでここまで受けるんだろう?」というのは、自分自身があんまり分かっていないですね。

えりんぎ:
一郎、大分、分かりやすいと思いますけどね(笑)

まささん:
(一郎)かなり嫌な奴、分かりやすい嫌な奴ですが(笑)

えりんぎ:
うーん、確かに嫌な奴ではありますけど、それは正志(と他のメンバー)に対して優しくないというだけで。

まささん:
全員に対して決して優しくはないですけどね(笑)

えりんぎ:
実際、そういう設定ですからね。なるほど。色々と裏話が。

まささん:
いや、結構、作っている本人の方が逆に分からない事は、たくさんありますよ。

4.ノベルゲーム情報発信者やユーザーに対して制作者様視点で思うこと


面白いゲーム→ポジティブな感想
→ユーザー拡大の好循環形成を

えりんぎ:
私自身、ビジュアルノベルに関して動画制作やブログによる感想執筆、ラジオ、動画で作品紹介を続けていきたいと考えています。活動期間としては短いんですが、ブログについてはある程度長く続けております。こういった活動をしている方は、今ここ(スペースのリスナー)に来て下さっているCyberさん、HARIBOさん、リミットさん、ポロさん、developさん(上記皆様にもお名前を掲載する許可をいただきましたので、お名前を公開させていただきます)など、ブログや批評空間でご活躍中の方が多いんですよ。そういった方々はXのユーザーにもすごく多いと思うんですが、何かアドバイスや激励はありますか?

まささん:
率直に、こうしてゲームをプレイして下さり、それを紹介し、感想もいただけるのは本当にありがたいことだと思います。最近は商業でもそうですし、同人だとなおさら、その作品のことを知っていただき、さらに手に取っていただくのは、本当に難しいことだと思います。にもかかわらず手を伸ばし発信して下さるのは本当に、漢字で書く通り「有り難い」ことだと思います。

えりんぎ:
有る事が難しいというか。

まささん:
ですから、作る側としても面白いゲームをちゃんと作って、それをプレイして喜んでいただいて、紹介・感想発信していただいて、それを見た他の方がまたゲームをプレイし発信してくれる。そのフィードバックを私たちのような作り手が受け取って、より面白い作品を作っていくという好循環ができれば、一番理想的だと思いますね。

えりんぎ:
そうですね。本当に私もそう思います。共感します。

まささん:
ですから今回えりんぎさんに、私の前にはKeica*さんにもお声掛け下さいましたが、そういう形で声掛けて下さったのは本当に嬉しいです。実際、作品に対する想いや、単純なゲームの紹介を含めて、情報発信の場を求めているサークルはたくさんあると思うんですよね。ですから、同人ゲームを作るサークルは山ほどあるので、勿論全部紹介するのは現実的ではないんですが、実際にご自分がプレイなさって、「これは面白いな」「他の人にも教えたいな」と思い、「実際にゲームを作っている人はどういう人なんだ? どんなことを考えているんだろう?」と興味を持った人がいたとしたら、今回のような形でお声掛けいただければ、きっと喜んでこういった場に出てくれると思います。

えりんぎ:
実際、好循環が生まれていけば本当にいいなと、私も思っています。最近、『GINKA』というANIPLEX.EXE様のビジュアルノベルがあるんですが、動画やブログ、Xのポストなどで感想を投稿してもらい、それをコンテスト形式で表彰する感想キャンペーンを大々的に展開した会社も事実として存在するんですね。
私はそういう感想活動がもっと広がっていって欲しいと思っていて。先日Cyberさんとお話をさせていただいたんですが、「ノベルゲーマーの数だけ、ノベルゲーの感想はあるよね」と仰っていて。

Cyberさんのブログ

まささん:
そうですね。

えりんぎ:
本当にその通りだな、と私も再認識したんですよね。勿論、誹謗中傷は避けなければなりませんが、やっぱり面白いものは面白いですし、「こういうところは気になったけど、こういうところは大好きだ!」という発信は、本当に色んな方にとって有益だと思っているんですよ。

まささん:
そうですね。

えりんぎ:
ですから、そういった方が是非、増えて欲しいと思いますね。

まささん:
本当にそうですね。インターネットやSNSがない時代は、ゲームのパッケージの中に入っているアンケートハガキを書いて送るくらいしか、プレイヤーがメーカーに対して感想や想いを伝える方法はなかったと思いますが、今はこうしてSNSなどで誰もがメディアになれる時代なので、それをお互いに活用しない手はないと思いますね。勿論、誹謗中傷のリスクとは裏返しではありますが、それでも広く自由に発信できるメリットは大きいですよね。逆に言うと、それだけ熱心に感想を書いて発信してくれるのは得難いことなので、商業のメーカーも積極的に動くのは分かる気がしますね。

えりんぎ:
確かに今は本当に、感想が溢れている世の中ではあると正直思っているんですよ。Twitter や動画、ブログを見れば簡単にサーチできるので。こういう感想を制作陣の方々って気にしていらっしゃるんでしょうか?

まささん:
気にはしますよね、当然。その温度差や受け取り方は人それぞれですが、逆に気にしなかったらまずいなとは思います(笑) やはり作り手側が自身の作品を客観視するのはなかなか難しいので。プレイヤーの方の観点が得られるのはとても重要ですよね。どういう受け取られ方するのかは、ある程度は予想できても、完璧にそれを当てるのはまず不可能ですから。

えりんぎ:
プレイヤーがどのような形で享受しているのかを制作者様側が認識出来る範囲はなかなか限られると私も思っているので。そこで認識の祖語が生まれて、作品自体の出来に響くのも悲しいことだと思っています。

まささん:
そうですね。だから、感想は本当にウェルカムなんですけど、それが誹謗中傷までにはいかないにしても、あまりにも厳しい物言いだとやっぱり傷つきますし。特にこういうものづくりをしている人間は、繊細な心の持ち主が多いので。それを商業で、仕事として、生活の種として制作しているのならば、ある程度は甘んじて受け入れなければならない面もあると思います。がしかし、特に同人の場合は、純粋に趣味として作っている人の方が多いと思いますので、厳しい感想で凹まされて、「もう作りたくない」となるのが一番まずいので。そこは手心を加えていただけるとありがたいですね、正直(笑)

えりんぎ:
勿論、そう思います。実は、5月にも同人のクリエイター様とスペースとしてお話をさせていただく機会があったんですが、その先生も同じような事を仰っておりました。

まささん:
そうですか。

えりんぎ:
特に同人作品はある程度感想が直接伝わってしまう面もある媒体なので、すごく攻撃的に感想を言ってしまうと、本当にまささんが仰るように、制作に滞りが生まれることも十分考えられます。それは本当に、ユーザーとしても望んでいるわけではないので、厳重に注意しなければならないとつくづく思います。

まささん:
そうですね。

えりんぎ:
まささん達制作者様視点で、ビジュアルノベルの情報発信者に対して、気を付けて欲しいこと、こうして欲しいという要望はありますか?

まささん:
そうですね。攻撃的な感想もそうですが、特にMA²はミステリーが中心なので、ネタバレは本当に勘弁して欲しいですね。

えりんぎ:
はい。

まささん:
ガイドラインは設定しなければ一切NGになるので設定しましたが、それを超える範囲のネタバレは本当にご勘弁いただきたいですね。
でもそれぐらいですけどね。

えりんぎ:
なるほど。ありがとうございます。ただ、動画やブログを作るうえでネックとなるのが、やはり著作権関係なんですよ。

まささん:
はい。

えりんぎ:
本当に厳重に、細心の注意を払って作っているつもりですが、そうでなければ色んな方にご迷惑をお掛けすることを重々承知した上で活動していかなければならないと、常々考えているところではあります。

まささん:
でも、大変と言えば大変だと思いますけど…実際そういうことで、最近トラブルが色んなところで出てきていると思いますので。それを配慮して下さっているえりんぎさんには本当に感謝しています。

えりんぎ:
私からは以上ですが、まささんからは他に何かございますか?

まささん:
そうですね、作る側の話になりますが、ここ数年でゲームを作りやすい環境が整ってきたことを強く感じています。そのためのツール、ゲームを作るためのスクリプトエンジンもそうですし、素材は無料で使わせてもらえるものもたくさんあります。背景や効果音、楽曲もそうですし、立ち絵の素材もあります。ですから、私は正直スクリプトが得意ではないんですが、それでも何とか組めるくらいのツールがあります。
加えて、SNSなどを通じた制作メンバー募集や作品頒布もしやすくなっています。「ゲームをちょっと作ってみようか、でも大変そうだな」と思っても、とりあえずはどんなに短い作品でも、どんなに拙い作品でも、やってみようと思ったら、まずは試してみて欲しいと思いますね。それで1回形にすれば、そこで得られるものはたくさんあると思います。どんなに小規模で拙い作品でも、数を積み重ねて PDCA をちゃんと回していけば、どんどんクオリティも規模も上がっていって、面白いゲームになっていくはずです。それは自分自身もそうありたいという気持ちはありますが、思い立ったが吉日です。これはゲーム作りに興味はあるけど二の足を踏んでいる人へのメッセージですね。

えりんぎ:
なるほど。確かに、そうですね。そういう方も中にはいらっしゃるかもしれませんからね。本当に。
私もこの対談はブログで公開させていただきたいなと思っているので、是非、読んでいただけるように尽力します(笑)

5.EDトーク

「Control真百合編」を
C105で頒布開始予定

えりんぎ:
Keica*さんの紹介で『Control』を知ることが出来たんですが、そこで「凄いゲームだな!」と思って、私もプレイさせていただいたんですね。

まささん:
ありがとうございます。

えりんぎ:
ですので、そんな制作者の方々とお話するのは正直緊張もしますし、どう進行したら良いかを結構頑張って計画したんですけど。何とか進行出来たようで一安心です。

まささん:
見事な手腕だったと思いますよ(笑)

えりんぎ:
ありがとうございます(笑) 本当に重ねて感謝申し上げます。心からお礼申し上げます。ありがとうございました。また機会がありましたら、まささんとはお話したいと思っております。

まささん:
こちらこそ。

えりんぎ:
はい。こちらこそ、よろしくお願い致します、以後も。続いては、まささんからも感想を。

まささん:
なかなかこういう機会はないので、本当にありがとうございます。私自身そんなに自分からものを言う方ではなく、聞かれれば答えるぐらいのスタンスでいつもいますので。
しかし、今回お話しした私のゲームの作り方が正解だとは思っていません。私自身、ちゃんとした理論を学んだわけではなく、完全に独学で身に付けたものなので、本当にそういうものをちゃんと学んできた人からすれば、拙い部分がたくさんあると思います。それでも経験を積み重ねていって、少しでも面白いゲームを作れるように頑張っていきたいと、改めて思った次第です。今作っている『Control』ですが、もし今年の冬コミ、C105のサークル参加に当選すれば、次のバージョンの『真百合編』、共通√と節子√に加えて、新たにヒロインの一人である岩永真百合(いわながまゆり)の個別√を入れたバージョンを頒布したいと思っています。もしご興味をお持ちいただけたら、冬コミのスペースに足を運んでいただきたく思っております。BOOTH通販も展開する予定ではありますが。

えりんぎ:
私は多分、冬コミには(笑)ちょっと地域柄と、職業柄、参加出来るか怪しいので、是非BOOTHで、楽しませていただければなと思っております(笑)

まささん:
是非是非(笑)、よろしくお願い致します。

えりんぎ:
いや、真百合編も本当に…やっぱり真百合も良いんですよね。私は好きです。

まささん:
ありがとうございます。

えりんぎ:
楽しみにしておりますので。是非、お身体等には気を付けつつ制作していただけると、大変ありがたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い致します。

まささん:
いえいえ、こちらこそありがとうございます。よろしくお願い致します。

執筆:えりんぎ
 
校正:まさ(MA²) (敬称略)
 
スペシャルサンクス:MA²の皆様
 

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