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『あまいろショコラータ』 総括感想

☆シナリオ(19/50)

☆キャラ(20/40)

☆その他(4/10)

☆総括(43/100)

 プレイ時間は約7時間。推奨攻略順はありません。残念ながら普通に可愛いで終わってしまった作品でした。ミドルプライスらしいとも言えます。確かにキャラクターの可愛らしさは相応のものでした。梱枝りこ先生、しらたま先生の可愛らしい絵柄も健在です。しかしそれらを彩るシナリオ、サブキャラの扱い、システム、演出面。その全てがかなり中途半端に感じてしまいました。正直、購入するにはかなり勇気が必要な作品であると感じてしまいます。したがって、今後私が『あまショコ2』、『3』をプレイしてみて良かったと思えるかどうか、そこに尽きます。今後に期待大です。



〈注意 この先ネタバレを含みます〉






☆作品紹介

 2020年1月に発売したきゃべつそふとの3作品目です。『アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-』や『さくらの雲*スカアレットの恋』を生み出したきゃべつそふとが誇るキャラクターゲーム。何と言っても、本作のアピールポイントは原画の梱枝りこ先生、しらたま先生のイラストです。圧倒的な可愛らしい絵柄。こちらが本作の醍醐味となります。またシナリオ、システム面もきゃべつそふとということもあり、概ね大丈夫であろうと考えました。ネット上の知人から勧められたこともあり、即『1・2・3パック』を購入しました。
 有名なきゃべつそふと作品ということで、期待大でした。一方でシナリオには期待し過ぎない程度だったです。本作は冬茜トム先生シナリオの作品とは別ラインの作品です。シナリオに期待し過ぎると、手痛いしっぺ返しを食らうことが目に見えています。ゆっくりと珈琲を飲みながら、プレイしました。さて、私は本作にどういった感情を持ったのか、存分に語りましょう。


☆シナリオ(19/50)

 良く言えば伝統的、しかし残念ながらありきたりで、印象には残らないシナリオでした。

〇印象には残らないシナリオ

 前提としてですが、本作は所謂ミドルプライス作品です。したがって、ロープライスと異なり、相応のシナリオが求められています。しかし、残念ながら本作のシナリオはロープライス水準程度のものしか達成できていない。そう感じました。
 本作のストーリーラインとしては単純明快で、喫茶店セタリアの経営をしていく中でヒロインである千絵莉、みくりと主人公、柚希がアルバイトをする。そこに恋愛が介在することで各々成長していくという話です。さて、本作のストーリーですが、最も気になった点として主人公である柚希がほとんど自発的に動かずにストーリー展開がなされているなと感じました。試験勉強やアルバイトの簡単な接客の指導、人生に関する所感を述べる等、一応動きらしきことは、ライターさんとしてもしているつもりなのでしょう。しかし主人公が、しかもロープライスではなくミドルプイライスクラスで行う行動としては些か以上に弱いかなという印象を持ちました。逆に言うと、何故この程度のことで周囲から絶賛されるのかという違和感が拭えませんでしたね。一言で言うと、主人公に個性を感じず、独自の存在意義もないに等しく感じました。
 勿論、悪い点ばかりではありません。喫茶店でのアルバイトを通じてヒロインと心を通わせるというストーリーラインはしっかりできており、最低限のシナリオは担保されているとも感じております。しかし、これも伝統的なアルバイトシナリオをなぞっているだけで、ノベルゲームをある程度プレイされている方にとっては退屈に映ることでしょう。


 その上で、各シナリオを軽く振り返ってみます。

〇千絵莉√

 千絵莉の年相応さが光る素敵な√でしたね。キウイによって発情するなど、きちんと18禁要素も全面に出しているところが魅力でした。デート描写も好きです。千絵莉は大企業のお嬢さまです。しかし、だからこそお金の大切さを誰よりも理解している。そこがデートでも垣間見えたのが良い見せ方だなと思いました。また、二回目のHの導入も印象的でした。千絵莉にとっての「大人」とは何か。そこに柚希が提案という形で支えに入る。大人とはどういったものかをあくまでも一個人の、彼氏としての発想として助言する姿は素敵でしたね。
 一方、結局のところ、千絵莉のコンプレックスである両親への想い、成長を見せたいという点ではかなり不完全燃焼に終わってしまいました。またアルバイトリーダーの件でも、千絵莉とナナ、苺華でギャップが生じていただけというオチでした。勿論、最終的にED後に千絵莉がバイトリーダーになる、という着地点ではありました。その着地点自体は大変納得できます。しかし、肝心の過程を飛ばし過ぎて、ミドルプライス作品としては非常に残念な気持ちになりました。
 したがって、千絵莉√の総括としては、骨子は無難ですが、シナリオの根幹、つまりオチや過程を急ぎ過ぎるあまり√全体に激しいガタがきているという内容です。バイトリーダーの件や両親の件は掘り下げる余地が多分にありました。そこを掘り下げて盛り上げることはできなかったのかなと純粋に疑問でした。


〇みくり√

 正直、みくり√の評価は千絵莉√よりはかなり高かったです。みくりは「獣人の里」から出たばかりで世間一般常識に極めて疎い。所謂「恋愛感情が全く分からなかったヒロイン」です。精神的に幼過ぎるヒロインとも言えます。恋人になった直後、子作りをせがむみくりからは一種の哀愁が漂っていました。正直、私にとっては若干苦手なヒロインです。私の個人的な好みとしては、精神的に成熟し、向けてくる感情の波が重たいキャラクターが好きなのですね。よって、ある意味、みくりとは正反対のキャラクターが好きとも言えます。
 しかしながら、私はみくり√については本作の中でもかなり特出して評価しています。それは偏にみくりの感情の動き、恋愛感情の機微の描写が相応に丁寧だったからですね。みくりは付き合う前から、スキンシップとして柚希に抱きつく等の行為をしていたわけです。しかし作中でナナと苺華の助言もあり、そういった行為を一旦止めてしまいます。自身のスキンシップの過剰さを徐々に自覚し、恥じらいの意識が誕生したのです。この「恥じらいの誕生」についてみくり√では物語の中心に置いていました。私にとってはそこが大変魅力に映りました。序盤のみくりの性認識と世間とのギャップには何度か笑わせられました。一方、付き合い始めて性に覚醒したみくりは女性特有の包容力を持ち、えっちでした。そういう意味では作中で最も成長したのはみくりとも言えるでしょう。ED後もかなり性急さがあったとはいえ、「獣人の里」に戻り「しっぽカフェ」を経営する(?)みくりが大変頼もしく見えたのです。
 実はみくり√も千絵莉√同様、かなり問題を抱えておりまして、みくりの母親(家族)回りの設定でかなり不和というか、諸問題がありました。そこからはライターさんの意図も感じます。後述しますが、本作は中途半端にミドルプライスな影響で、描き切れることまで描写しきれていないのですよ。そこが非常に気になりました。だからと言って、みくり√の全ての魅力が色あせるわけではありません。みくりの将来と成長を値段の範囲で可能な限り描いた√だったとは思います。

〇結局、総合評価は?

 では総合評価はどうだったのかと言うと、残念ですが、シナリオに19点を点けさせていただきました。理由は結局物語に大きな見せ場、迫力があったかと言うと決してそうではなく、ある種平坦だったというのが大き過ぎます。現状、普通にキャラクターの魅力は活かせているけれども、面白かったかというとそんなことはないというシナリオでしたね。普通にキャラが可愛かった、以上。で終わってしまったシナリオでした。

〇Hシーン

 Hシーンですが、千絵莉√3シーン、みくり√3シーン、ハーレムが1シーンの合計7シーンがありました。実用性に関しては正直、人によると思います。梱枝りこ先生、しらたま先生のイラストに何を見出すかによります。
個人的な好み、見解を述べるならば、みくりのHシーンは全体的に良かったと思います。特におしっこですね。柚希がかなり冷静だった点も含めて少し面白かったです。
ただ一点言いたいのは、ハーレムはおまけ要素あり過ぎでしたね。仕方ないとは言え、これを入れるくらいなら後述するようにナナと苺華のシーンを追加して欲しかったなと思ってしまうのは私だけでしょうかね。ハーレムに一定の需要があることは理解しますが、どうにも尺の無駄遣い感がありました。

☆キャラ(20/40)

 キャラクター部門ですが、ここも気になった点と魅力的な点がありました。まず気になった点からお伝えすると、第1に、主に千絵莉のキャラクターに既視感を覚え過ぎる点。第2に、苺華やナナといった魅力的なサブキャラを活かしきれていないと感じた点。第3に、透けて見える分割商法による、キャラクターの扱い全般です。第1の点ですが、みくりはともかく、千絵莉は使い古された典型的な両親に対してコンプレックスを持つお嬢様キャラ+ケモミミキャラということでそれ以上でもそれ以下でもありませんでした。個性を出す上では、それこそみくりのように、精神的幼稚さを前面に出したり、そこに対する身体と知識のギャップを生み出したりする必要があると思います。千絵莉は確かに可愛いキャラです。しかし、そこどまりだったなという印象です。強いて挙げるならキウイを食べて発情するという点が特筆すべき個性でしょうかね。しかしその貴重な個性も活かせていたかと言うと正直、微妙です。結局個性を上手く扱えていない印象が先行してしまっていました。次に2点目、苺華やナナといった魅力的なサブキャラです。正直、ロープライスならまだしも、ミドルプライスではもう少し出番があっても良かったのかなと感じました。千絵莉とみくりのサポートに徹してしまった結果、各々の個性が表出されていないという表現が適切でしょう。最後に3点目。ここが一番不味いのですが、分割商法が見え隠れしています。それに伴い、キャラクターの扱いをライターさん自身が決めかねている節がありました。千絵莉で言えば家庭面やバイトリーダーの件。みくりで言えば獣人の里のことや純粋な人間である母親の件です。その他、苺華、ナナについても「途中まではメイン級の扱いをしたかったのに出来なかった」。その事情が推測できてしまいました。そこが本作の歪み、キャラクターに関する捻じれの正体であると考えます。

 と言うのもですね。本作はクリア後の設定画面(上の画像参照)からも分かるように、本来ミドルプライスではなく、フルプライスとして制作されていた可能性があります(少なくとも企画は残っているでしょうし、そうでなければ作り自体が杜撰と言わざるを得ません)。ゆえに前述した苺華、ナナの扱いがいかんせん中途半端だったのが気になりました。せっかく別のケーキ屋さんという舞台が用意されているのです。そこを活用する予定がないわけがないと思うのですよ。私はこういった分割商法自体を否定するつもりはありません。しかし、私は分割にする以上、せめてシステム面、キャラクター面では、それがバレないような勢いで、全力で作品制作をするのが購入したプレイヤーに対する礼儀だと解釈しています。本作ではそのあたりの、商業作品では出来ていて当然の擦り合わせが明確に出来ていなかった。そこに私は不完全性を感じました。ここまで不完全性が表に出てしまった作品は久しぶりです。だから全体として低評価を点けています。 一方の良かった点です。これはみくりのキャラクターと魅力的なサブキャラの存在でしょうか。みくりについては前述した通りでして、みくりは獣人でありますが、普通の女の子(みくりにとっての非現実)に憧れて獣人の里を飛び出した経緯がありましたね。そこをしっかり描写できています。またみくりの、主に性に関する常識形成の過程も概ね丁寧でした。柚希もここに関しては頑張っていたと思いますし、主人公とヒロインの共同で、生活、成長していこうという気概に満ちた良いエンドだったと考えます。またサブキャラクターについても可愛らしくて良いですね。個人的には特にナナは気に入っています。彼女がどんな恋愛をするのか今から次回作が楽しみです(今の時点で、次回作で攻略できるかは、私は分かりませんが)。苺華も無難なサポートキャラながら自分が恋愛するとなるとどういった反応を見せてくれるのか楽しみです。 総合的に見て、商品として、キャラクターに光る面はあれど、その不完全性に目を瞑ることができなかったのでキャラクターは合計20点です。

☆その他(4/10)

 その他の項目ですが、こちらもミドルプライスに引っ張られています。
 まず音楽面ですが、楽曲はKyoKaさんの可愛らしくも格好良い楽曲でした。相変わらず癖はあるアーティストさんだとは思いますが、一先ず良かったです。次にBGMですが、西洋風の街が舞台というだけあって、お洒落で西洋風のBGMでしたね。しかしみくりという和風のキャラクターが存在する以上、一曲、二曲くらいは和風テイストのBGMがあっても良かった気がします。
 次に世界観ですが、これもミドルプライスが…という感じです。率直に申し上げて、世界観を引き出しきれていませんし、キャラクターも不足しています。セタリアに存在しているはずの苺華の母親の存在感(立ち絵)がないのが良い例です。正直、反応に困る出来でした。好きな方は好きなのでしょうが、私から見た時、違和感を覚えましたね。
 さて、最後にシステム面です。ここは指摘させて下さい。何故一ヒロインのEDムービーが流れている間に、別のヒロインの√に入ったイベントCGが流れるのかと。ここは極めて重要かつ、本当に残念な点でした。ネタバレに関する配慮が一切出来ていません。これでは一ヒロインをクリアした後にもう一人を攻略する気力が失せる方もいらっしゃると思います。本当に大きな減点要素です。次回作以降もこの仕様ならば本当に残念です。また逆にミドルプライスに助けられている部分があるのですが、本作はセーブスロットが80スロットしか存在せず、またお気に入りボイス登録機能もないです。無論、普通にプレイする分には快適です。しかし、きゃべつそふとの場合、せっかくの可愛いキャラを隅々まで堪能したいというプレイヤーも多くいらっしゃることでしょう。これは他のきゃべつそふとのフルプライス作品にも言えますが、いくら何でも現代のビジュアルノベルにしてはセーブスロットが少な過ぎます。ここも大きな問題と考えました。
 総合的に見て、その他は4点です。一応、基本的なシステム、世界観がしっかりしているのですが、肝心のところで何も配慮できていない。そこが大変残念です。

☆総括(43/100)

 総合的には駄作(E)認定です。残念ながら私の評価基準上ではこれ以上評価出来ませんでした。厳しい言い方をすると、システムとキャラ上、全く配慮が行き届いていない上にシナリオ、キャラも何もかも中途半端な作品です。お世辞にも印象に残る作品ではなかったです。一方、可愛らしいキャラクターが多く存在し、日常を緩く楽しめるという側面があるのも事実です。そこは期待を裏切っていないと思います。そうです。悪い作品ではないのです。しかし明らかに制作の方々の連携ミスが目立っている作品でした。作品外の事象で評価が低くなるのは大変悲しいことだと認識しております。
 私はきゃべつそふと作品が好きです。『あまいろショコラータ2』『3』も所持しています。今後プレイ予定です。正直、本作や最近の動きを見ているときゃべつそふとはかなり危ういと感じています。今後の制作陣の方々の進化に大変期待します。きゃべつそふとのスタッフ陣の方々、本当にお疲れ様でした。またここまで読んでいただいた読者の皆様にも感謝の気持ちを述べたいと思います。本当にありがとうございました。



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