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『ラブピカルポッピー!』 総括感想


☆シナリオ(32/50)

☆キャラ(35/40)

☆その他(7/10)

☆総括(74/100)

 プレイ時間は約17時間。共通√7時間。メインヒロイン2時間。サブヒロイン1時間。独特のノリ、ヒロイン間のワチャワチャが大変豊富なため、雰囲気が大変良い点が武器。強烈に印象に残る場面が存在せず、細かい指摘点はある。しかしそれらの若干の不満点を押しのけるくらいパワフルでエネルギッシュな作品。シナリオ重視の作品の合間にはさんでプレイしたり、メンタルが落ちている時にプレイすると元気を貰える不思議な作品であり、購入価値、満足度は点数以上に高い。そういった意味では個性的な作品と言えるでしょう。


〈注意 この先ネタバレを含みます〉



☆作品紹介

 SMEEの15周年記念に発売された本作。私自身はSMEE作品を『Making*Lovers』しかプレイしていません。そして、私が『Making*Lovers』に点けた点数は67点。最大の理由としては、ヒロイン、キャラクター同士の掛け合いが少な過ぎて、繋がりを感じられず、物語自体がかなり単調に感じたからです。また、物語自体にも燃え、泣き等の付属要素が全く存在せず、終始イチャイチャして終わってしまった印象の作品です。当然、良い点もありました。それはヒロインとの濃厚なイチャラブ描写。他社とは異なる独特なノリ。平和な世界観。印象的なHシーンです。私にとって、SMEEとはそういったメーカー様でした。良くも悪くも特徴はあります。強力なインパクトやキャラクター間の繋がりがあれば化ける。そう考えていました。
 さて、本作『ラブピカルポッピー!』は「原点回帰」をテーマに制作された、所謂キャラゲーです。日々の疲れを癒すため、そしてSMEE様の出方を伺うためには本作は私にとって必要でした。何より、私はとあるネタバレ(致命的ではない程度の)を食らい、この作品は間違いなく私の好みだと直感しました。よって発売日ではありませんが、購入に至ります。
 私にとってSMEEは新規開拓の余地が残っているメーカー様です。メーカー様に対する不安と同時に期待もあります。しかし、楽しんでプレイさせていただきました。

☆シナリオ(32/50)


 インパクト不足、しかしキャラクター間の雰囲気が良く、取り付きやすい。


〇全体的な所感

 まず私が感じたのは、ヒロインを取り巻く舞台設定が上手いなという点です。そして、それらを制御する主人公も説得力があるスペックをしています。
 本作は実家の火事が原因で紆余曲折あり、主人公が女子寮の寮母として勤めることになるという背景を持ちます。主人公は成人済みで、作中で飲酒する描写もある程度には大人です。それは年齢に基づくスペック(見識の広さ)があることに繋がります。したがって、本作では綾子以外全員のヒロインが主人公より年齢が低く、ヒロインが恋愛感情を持つに至る過程も丁寧なため、非常に恋愛に説得力がありました。それはつきつめていくと主人公の魅力とヒロインの引き出しの広さを活かしきれていることに繋がっていると私は捉えています。
 さらにSMEEらしく(と言えるほど私はSMEE作品をプレイしていませんが)、プレイヤーに不快感を持たせうるようなキャラクターが出てくることなく、悪意なしの善意100%状態で物語が楽しめます。これは本当に大きいです。所謂「雰囲気が良い作品」ですね。私は善意100%の作品を何回か見てきましたが、(特にシナリオ重視の作品であるほど)その善意が歪に感じるのです。どうにも不自然なのですよ。その意味でキャラゲー方向に突き抜けた本作の善意で構成されている雰囲気は私の好みと合致しました(無論、涼花√では違和感がありましたが)。
 懸念点は全体のプレイ時間が短く、その優しい雰囲気を十分には堪能しきれない点だとは思います。本作はプレイ時間が長くても約20時間。相当短いと考えています。個別√も2時間掛かるかくらいです。これはなかなか由々しき問題だとは思いますね。ただし、濃密ではありました。総合的に見ると、主人公に概ね好感が持て、優しい雰囲気と独特のノリで十分に満足できる作品だったのではないかなと思っています。


〇シナリオ全体の迫力不足

 次にシナリオ全般の話です。これははっきり言って印象に残るエピソードが不足していたと言わざるを得ません。個々に見ていくと、希未√の妊娠騒動や、美卯√の今時のインフルエンサー活動に対する理解等面白い点はあります。しかし悲しきかな、尺の都合で掘り下げと言えるほど掘り下げられていないと、私は感じます。これは同時に手軽にスナック感覚でシナリオを摂取できるというメリットにも転化できます。ゆえに完全に悪い点ではありません。しかし、本作を一つの作品として、記憶に残るものか、もう一周プレイしたいか問われると否と答えざるを得ません。
 総合的に見て、作品としての個性がSMEEの「原点回帰」=キャラの個性を伸ばし、キャラ同士の繋がりを重視する、という点にばかり重きを置き過ぎています。ゆえにシナリオが疎かになっている点は否定できないでしょう。具体的な点は個別√で触れるとして、本作はポッと出の設定や納得いかない展開、果ては意味不明と言っても良い感情の動きも一部あったと思います。そこから目を背けることは私には無理でした。


〇印象に残らないが、イチャイチャは全力で楽しめる

 前述した通り、本作の致命的な弱点はズバリ「プレイヤーに印象付けるエピソードの弱さ」が挙げられると考えています。事実、私は、自分の好みの展開であった希未√くらいしか、本作の個性らしきものを見出すことが出来ていません。
 しかし、本作で得るものが無かったかと言うとそれは大きな間違いです。私は本作から大きなエネルギー、活力を貰いました。ヒロインがとにかく日常を楽しんでいる感覚がするのですよ。例を挙げると、クレープ喫茶での仕事です。本来、仕事とは辛いものです。しかし、本作ではそうした辛さをかわしきり、労働の良い点に着目しています。その点を私は尊いと感じます。
 同様のことが日常シーン全般にも言えますね。ヒロインの個性の掘り下げが一定水準以上出来ている(詳しくはキャラの項目で触れます)。そんな本作だからこそ、付き合った後、ヒロインとのイチャイチャは全力で楽しめましたし、Hへの導入もかなり早く、かつ自然でした。そういった意味で高〇生の全力の恋愛を描いており、かつ性意識も(一部ツッコミはありますが)年齢水準程度は全ヒロインに備わっていたので、読んでいて違和感がなかったです。付き合った後は18禁ビジュアルノベルにあるべき役割をしっかりと果たせている良作という認識ですね。

 次に、個別√を見ていきます。

〇希未√

 私が最も気に入っている√です。希未のワガママボディを活かしきれていましたし、希未の過去からの想いも主人公と共有出来て、今の幸せを受容出来ている。そんな温かみに満ちた√でしたね。そして、何と言っても、ヒロインが妊娠する描写にある程度の尺が割かれている。ここは100点です。流石に妊娠時期の不安定さ等は作品の雰囲気の関係もあり、描写は避けていましたが、ヒロインとの関係を一段階上げて、密接な関係にしようという意思は強く伝わってきました。
 欲を言えば、妊娠中のことまで詳細に書いてもらいたいというのが本音です。しかも本√の悪い点は後半部分。終盤にいきなり時が経ったかと思えば、今まで強調されていこなかった希未の語学力堪能設定がなぜか生えてきて、しかも主人公との関係性が変わっている(主人公への言葉遣いが丁寧語→タメ口になっていたり)。この点はかなり印象ダウンです。
 しかしですね、こういったキャラゲー独特の急いた展開も必要なのだろうなと感じるくらい本作の中では明らかに存在感を放っていた√です。私は(勿論、主人公がきちんと責任を取ることができる立場であることが前提で)ヒロインが妊娠する展開を非常に好ましく思っています。理由は私の単純な好みもありますが、性行為の果ての象徴は妊娠。そして、幸せの究極は家庭だと私が強く感じているからです。ゆえに本作の希未√の終わり方も、相応に言いたいことはありましたが、概ね満足しました。

〇涼花√

 正直、メインヒロインの中で一番印象が薄い√でした。まず実妹ヒロイン設定を活かしきれていません。実兄、実妹であることの葛藤はあって当然なので良いとして、問題は父親含む周囲の反応。そして、実妹問題をピックアップせず、保護猫対応に物語を着地させた点です。ここは厳しく見ています。
 第1に、父親含めて実妹という設定である以上、何らかの拒否反応が出るのが自然なはず。それを出さなかったのは本作の善性的な側面が悪い方向に働いている結果であると言えます。ゆえに私は言いたい。本作の涼花は義妹であるか、妹設定自体を無くして、幼馴染等の無難な設定にしておく必要があったと。正直、涼花√は設定面で割を食っており、本作の致命的な弱点になっています。涼花という優等生&保護精神豊か&母性に富むキャラクター性があってこそようやく機能していると言ってよいほど、私は本√には不満を持ちました。
 第2に、保護猫案件です。正直、実妹問題への対応をシナリオで深堀させないための逃げ道にとってつけて用意したシナリオという印象が私の中で先行していまいました。しかし、実際に沿う思った方もいらっしゃるでしょう。それくらい、本√は歪なのです。保護猫活動に最初から熱心、猫や犬等に関心がある等の設定を最初から打ち出せていれば良かったのですが、残念ながらその設定もありません。挙句の果てに優等生設定はあまり生かされていませんでした(努力家、という点くらいです)。
 総じて、なぜ、実妹にしてしまったのか極めて謎かつ不可解な√でありますし、読んでいてかなり不自然な√でした。

〇綾子√

 無難of無難。読んでいて一社会人として極めて共感出来ました。というか、飲み会の描写がある作品は名作の法則が働いています。私は常に主張していますが、飲み会の場はアルコールの恩恵もあり、非常にヒロイン(と他登場人物)の心中を掘り下げやすく、非常にビジュアルノベル、というか物語向きなのですよ。大変残念ながら、成人済みヒロインが少ないビジュアルノベル界隈では飲み会描写はドラマやアニメ等の他媒体より明確に少ないです。
 その意味で綾子はくたびれた社会人像を綺麗に抽出し、キャラクターにしていました。作中で綾子が言っていましたが、「やりがいはあるのだが、満足感は得られていない」とのこと。これは社会人なら、もしかすると学生の方でも経験があるのではないでしょうか。本√では綾子のそんな葛藤を恋愛関係という形で、お互いに支え合いながら生きていこうという非常に前向きな結論の下、上手く描写し切れていた印象です。
 総合評価、最大級です。好みに突き刺さった希未√に匹敵するほど楽しめました。

〇美卯√

 今時のキャラ付けがされている承認欲求高い系キャラです。私は女性のSNS事情にあまり詳しい方ではありません。しかし美卯の努力は賞賛される必要があるものでしょう。努力が力になるという意味で私の好む√でした。
 「価値観の共有」が本質の本√。グイグイ来る系の八重歯ヒロインでして、付き合ってからのギャップも見ている分には楽しいです。主人公の満更でも無さ、主人公自身が美卯を受け入れていく過程が丁寧だったのもかなり好感が持てました。また心を開いた相手に対してのみ性に奔放で、隠す気があまりないのも私としては好むところです。
 美卯は向上心と野心に溢れています。私も現在、こうした感想活動を中心に様々な活動をさせていただく身として美卯からは見習うことが多々あるなと思いました。本√ではその向上心と野心に対する、周囲(両親も含めて)からの理解、という形で表に出していましたね。特にシナリオ後半の両親との対談の際に美卯(夢佳)が言った「私自身が納得するまで、続けたい」という言葉がまさに美卯(夢佳)の本心であり、支柱であるのでしょう。この言葉は自身の活動に確固とした自信を持ち、覚悟をしてきたキャラクターだからこそできる発言でしょうね。
 正直、両親との関係は夢佳の方にも非があると考えています。それはシナリオライターの先生も意図しているのではないでしょうか。しかし両親(=他の人間)との関係性の未熟さも主人公に支えられて今後、成長する。その結果が最後の社長業のシーンに発展しているのだろうと考えると素敵です。幻想的な流星群を撮影せず、自身の目にのみ刻みつけるという心の変化をED付近で描写している点も含めて、美卯の価値観、距離感の変化に寄り添ったシナリオだと思います。私からツッコミを入れるところは両親との話し合いで美卯(夢佳)に非があり過ぎて、擁護の余地があまりない点くらいです。良いシナリオでした。

〇珠祈√

 努力家な寮長で、小柄目なちんちくりんヒロイン。表情が大変豊かで、スクリーンショットの機会が相当ありました。本作の可愛い枠はもしかすると珠祈かもしれません。そんな珠祈は付き合ってからは甘えん坊の側面を前面に出してきます。率直に愛でていたいですし、プレイしていて、癒されました。しかし、珠祈のポイントは「甘えさせてくれる属性」を同時に持っている小さなお母さん系ヒロインということです。普段、甘える立場でありながら、肝心な時、重要な時に甘えさせてくれる。母性に富んだキャラクターと言ってよいでしょう。努力家ですが、周囲に取り繕っている点も主人公の前では曝け出しており(実際はその周囲にもバレているという結果でしたが)、好きな人の前でのみ特別、という価値観念もビジュアルノベルヒロインとして理想像でした。
 私が特に気に入っているのはEDですね。数年後も、主人公と、現在とほぼ変わらず寮生の世話をし続けている。私はEDで、数年後の「先」を見る展開が大変好みなので、そういった意味で私に突き刺さりました。声優さんも原ぽぽ子さんということで大変キャラに合っており、可愛らしいキャラクター性を補強していました。珠祈の価値観形成が祖父母からきており、納得感もある。正直、珠祈はただ可愛いだけでシナリオとしての個性(良くも悪くも)が少なく、最後に攻略したにもかかわらずあまり印象に残らないキャラではありました。そういった意味では私にはあまり刺さらないキャラではありますし、シナリオの破壊力は明確に不足しています。しかし、好きな方には堪らないキャラ付けであるのではないでしょうか。

〇たんぽぽ√

 純粋で、素直キャラ。しかし主人公のおっぱいへの視線に気付き、指摘する。プールのシーンでの積極性等、意外と「女」を出してくるあたり全く侮れないキャラクターだなと感じました。そんなたんぽぽ√はまさにたんぽぽの花言葉の通り、「幸せ」に尽きるでしょう。田舎出身で、底なしの善性を持つたんぽぽ。親友であるサヤとの一件でも分かる通り、たんぽぽの純粋さと優しさは本物です。そんなたんぽぽだからこそ星九頭寮生含め全員が放っておかなかったのだろうなと強く実感します。綾子√同様、流石にサブヒロインということで√自体はかなり短いです。しかし得るものはあった、たんぽぽのキャラクターを掘り下げる良√と言えるでしょう。
 告白シーンも地味に好きです。というか本作で一番好きかもしれません。主人公への好意を自覚するシーンもたんぽぽならではの純粋な、しかし確実に女性視点から見てそういうものなのだなと納得させるものがありました。ここは感覚的なものですが、たんぽぽのキャラクターにはそれくらい不思議な恋愛の方が合っていると感じます。総じて、たんぽぽの表情豊かさをシナリオで補完している、つまり幼少期から育った環境が田舎だったからこそ、という観点で見ることができるサブキャラクターらしいシナリオであったと考えました。

〇Hシーン

 Hシーンは正直、可もなく不可もなくです。理由は一部キャラクター(特にバストが小さい涼花や珠祈)の一部CGにおいておっぱいが大き過ぎると感じる部分がある等、CG的な違和感があったからです。一方、Hへの導入は概ね自然でした。特に希未、綾子、美卯、たんぽぽは主人公からの性欲も正直に描写されていたと思いますし、その点極めて好感が持てます。
 数としては、メインヒロインは3シーン、サブヒロインは2シーンの計16シーンです。正直、不足していると言えます。これは尺全体の都合なので仕方ないのですが、もう少し頑張って計4シーンあるドスケベヒロインが存在しても良いとは思っています。結果的に、私は本作のHシーンについてはあまり評価していません。

 総合的に見て、前述した通り、弱点自体は多いと言えるでしょう。特に涼花√は結構痛いと言ってよく、珠祈もはっきり言って印象に残るシナリオではありません。しかし、それ以外のシナリオの満足度はかなり上位に位置し、十分キャラゲー上位を狙えるレベルであると考えます。総合的に見て、少し甘いとも思いましたが、大台の30点を突破し、32点を点けました。

☆キャラ(35/40)

 キャラクターの扱いは流石SMEE様です。見事と言う他ありません。最上位のキャラクターゲームと渡り合えるほどだと考えています。無論、個性が豊かとは言え、シナリオが尺、内容共に薄過ぎてキャラクターの強さ、個性を活かしきれていない、さらに厳しい言葉を使うと一部個性を殺してしまっている(希未の表情豊かな顔芸や涼花の優等生設定等)部分はあるでしょう。その意味で厳しく見て5点減点してあります。
 しかし、前述したシナリオに付随するキャラクターの埋没以外褒めるところしか見当たりませんね。希未、涼花√の一部以外かなり納得できる行動動機が出来ていました。特に素晴らしいと感じたのは美卯√での美卯の成長物語です。恋人になる過程でインフルエンサーとしての自分を見つめ直し、両親への自身の気持ちへも素直になれた、という過程を私は美しいと評価します。実際、私の好みを度外視して本作を見た場合、美卯√は特徴的な√と言えるでしょうね。
 綾子、たんぽぽといったサブキャラクターにも勿論、良い意味で力が入り過ぎるくらい入っており、非常に好感が持てます。さらに脇キャラクターである星九頭さんやクマさん、寮生の他キャラ達に至るまで大好きになれました。そして、何より重要なのが主人公の存在。彼は成人済みで、寮母√を目指さない場合も含めて、栄養士になるという目標の下、努力を怠っていません。これはヒロインも惚れる、どころかむしろ主人公に惚れない方がおかしいと言ってよいくらい、主人公の動きは恋愛的な意味で完璧でした。私はヒロインが主人公になぜ惚れたのかをキャラクター評価の最重要項目に置いています。そこが疎かになった作品は大体土台がはっきりせず、不安定な語り口にしかならないからです。その意味で、本作は間違いなく成功していました。
 その上で、全体で見た場合、私は希未、綾子、たんぽぽの三人を推したいです。希未については言うまでもありません。今まで語ってきた通り、妊娠までいくシナリオがかなり貴重であることに加えて、妊娠の理由付け(希未の迂闊さ)、希未の実直さを語る上で十分なシナリオが展開されていると感じたためです。
 綾子は社会人ヒロインとしてその生真面目さと時折表に出るダークさが交差し、素敵なキャラ付けになりました。また寮母である主人公が寮母でなくなって、真の社会人を目指す過程の恋愛ということで綾子に強く惹かれていくというのも当然と言えば当然だなと感じました。ここは本編でも触れられていました。デートも無理してしまい、少し失敗し、しかしお互いに責めずに次に生かす方針になって、という具合でお互いに尊重し合っていると言えるでしょう。率直に好みです。
 最後にたんぽぽです。希未、珠祈並みに表情豊かで、純真無垢。しかし意外と女であるという部分が私に刺さりました。特に「女」を結構出してくるところ等、完全にストライクです。本編の最後、野外プレイはたんぽぽの意外過ぎる一面を見ることが出来て、かなり好感触です。こういった笑いが自然と生まれる作品を私は欲していましたし、望んでいるビジュアルノベルファンも多いのではないでしょうか。
 以上です。総合的に見て、シナリオ方向から掘り下げ不足に陥っている部分はかなりあるものの、キャラクター自体はキャラゲーとして見て、大変自然で、読んでいて極めて心地良いと判断したため、キャラには35点を点けました。

☆その他(7/10)

 まずOP曲である「きみがいちばんばんばんざ~い!」は中毒性が高く、ポップな印象で、大変気に入りました。キャラゲーの中でも印象に残る曲です。これは本当に大きいです。キャラクラ―重視のゲーム(所謂キャラゲー)は曲が印象に残らないことの何と多いことか。確かな評価点です。BGMは変なものは勿論ありませんでしたが、印象に残るものも特にありませんでした。
 世界観は普通です。特にファンタジー要素を不自然に挿入し、おかしなことになるくらいならこちらの方が余程良いと言えます。メーカーであるSMEE様もその旨分かっているのでしょうね。シナリオの項目で述べた通り、非常に優しい世界観で読んでいて安心します。一方、特出した世界観設定も特になく、印象には特に残らないと言った具合ですね。
 最後にシステム面ですが、ここが問題です。まず今流行りのお気に入りボイス登録機能が実装されていないのは、はっきり言って痛過ぎます。派手かつ特徴的なボイスは本作の売りの一つです。時代を考えても実装出来うる機能でしょうし、今後のお気に入りボイス登録機能実装に期待します。また、本作独自の機能として、キャラクターの本音が吹き出しになって表出するシステム、そしてHシーン中に挿入タイミングを選択できるシステムがあります。これに関しては私の感覚で大変申し訳ないのですが、不要だったのではないかと考えています。理由は、両方とも操作がいたずらに煩雑になり過ぎて、面倒臭さが勝ってしまう点にありますね。良い点(メリット)に対して操作の面倒さ、或いはシステム導入による重さが釣り合っていないと判断しています。制作陣のアピールポイントだったのでしょうし、私も理解しようと努めましたが、感想としては正直、不要だった、これが偽らざる気持ちです。
 総じて、その他項目はチグハグさを若干感じたところと、OP曲以外目立った部分がない点を考慮し、7点です。

☆総括(74/100)

 総合的には良作(B)認定です。正直、私は本作に74点という点数以上に好感を持っています。というかメモにまとめて感想を執筆する直前まで、79点のつもりでした。しかし、冷静に判断すると、シナリオの至らなさ、物足りなさ、それらに伴い、キャラクターも上位作品群級の中では印象に残らない、その他も特出している部分はない、と総合して考えれば考える程、点数という観点から見れば74点が妥当だろうという結論になりました。本当はさらに低くも出来ますが、私は本作のことが大好きなのです。毎日、仕事に行く社会人としての私に、優しさと元気、エネルギーを与えてくれた本作とSMEE様には感謝してもし切れません。そういった意味で、私は本作を通じて、好き=点数ではないということを強く学びましたし、気付かされました。
 本作の特出した点。それは不自然さがない「善意でできた世界観」そのものなのではないでしょうか。不要物(不快感)をどこまでも切り捨て、元気と独特のノリでプレイヤーに癒しを与える。その意味で本作はある意味100点です。本作に関わって下さった全てのスタッフの方々に感謝します。また、このような長大極まりない感想を最後まで読んで下さった皆さんにも心から感謝を。ありがとうございました。

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