『あまいろショコラータ2』 総括感想
☆シナリオ(29/50)
☆キャラ(30/40)
☆その他(4/10)
☆総括(63/100)
プレイ時間は約10時間。共通4時間、苺華2時間、ナナ、かぐや1.5時間、他回収で1時間。推奨攻略順はありません。本作に関して言えば、とある理由で(後述します)お気に入りのキャラクターから攻略することを強く推奨します。前作では全くと言っていいほど、配慮されていなかった点、未完成だった点を大幅に改善し、点数も佳作級に上がりました。これはほぼすべて苺華√による功績が大きいです。手痛いなと感じる部分もあるのですが、概ね良し。ただし、それなりに疑問点も多いので、細かい部分を気にしすぎる方にはあまりお勧めしません。私は苺華が突き刺さったので、プレイして良かったです。
〈注意 この先ネタバレを含みます〉
☆作品紹介
2021年5月に発売された本作。『あまいろショコラータ』無印の続編です。しかし、最低限の説明が序盤である程度なされる親切設計なので、本作から購入したも大丈夫です。時系列としてはクリスマス付近以降ですね。新しい和菓子屋さん「もちづき」と、前作にも登場した「スイートテイル」が本作の主な舞台ですね。
何と言ってもきゃべつそふと様。そして、梱枝りこ先生&しらたま先生の美麗なイラストを存分に楽しむことができます。
私は正直、前作の『あまいろショコラータ』が合いませんでした。理由は後述します。しかし、ここまで完成度が低いと感じてしまう作品の続編をプレイするのには、はっきり言って抵抗もありました。一方、期待もありましたね。理由は本作のメインヒロインである御園 苺華と舞羽 ナナ(通称「スイートテイル組」)が大変に好みだったからですね。前作の感想でも触れましたが、是非ナナを攻略させて欲しい。ナナの恋愛が見たい。そう思わせてくれた程度には、私は『あまいろショコラータ』に好感をもっています。
いざ、可愛いケモミミ王国のあまーい空間に出陣します。
☆シナリオ(29/50)
前作の欠点の大幅な改善、しかし完全に解決するには至らず、違和感を覚える
〇前作の欠点と本作の改善点
前作『無印』で私が感じた不満点は大きく分けて6点あります。それに対しての『2』での対処を述べます。
① 主人公である柚希がほとんど自発的に動かずにストーリー展開がなされている。
→一部改善
② 物語の過程を飛ばし過ぎ、急激に物語が進んで、付いていけない。
→改善しきれず
③ 物語に大きな見せ場、迫力があったかと言うと決してそうではなく、ある種平坦だった。
→一部改善
④ 未完成、透けて見える分割商法。
→完全改善
⑤ BGMに和風(みくりに合う)がないなど、雰囲気と合っていない場面がある。
→完全改善
⑥ EDムービーに他√の重要要素がネタバレされてしまう点。
→改善されず
上記6つ。前作には欠点があったと見ています。そのうち、⑤、⑥は「その他」の項目で述べるとして、残りの①~④の4点。ここは概ね改善されました。少なくとも改善する意思が見えました。したがって、前作以上に本作は、一定程度の評価はされる必要があるでしょう。順に見ていきます。
① 主人公である柚希がほとんど自発的に動かずにストーリー展開がなされている
苺華√で改善されていました。前作は主人公である柚希の自発性がほとんど感じられず、恋愛感情に関する知識が皆無のみくりはともかくとして、千絵莉が主人公に惚れる要素がかなり少ないと捉えております。実際、ナナ√、かぐや√でもその傾向は強いです。ここまでくると、もう柚希の個性と考えて良さそうです。実際、ライターである先生方もそのようにお考えなのでしょう。しかし、そのままでは「惚れる理由」を見出せなくなります。事実、本作でもナナ、かぐや√ではかなり疑問符が付いたところです。
一方、苺華√。この√の柚希は良かったです。自発的に行動し、苺華の心を仕留めにいきました。純粋に感嘆します。
② 物語の過程を飛ばし過ぎ、急激に物語が進んで、付いていけない
前作では獣人回りの設定開示が急過ぎて、お話のメリハリがついていなかったのですね。この点は改善したいという意思を感じることができました。具体的には柚希がお守り作成で疲労し、倒れた時に、選択肢でスイートテイルか、もちづきか選択するという場面。ここから物語が加速します。それは大変良いと考えています。
しかし、そこから√に入ってからの流れが正直、分かりづらかったですね。ここは私の認識なのですが、ナナ、かぐやに関しては敢えて性急さを入れつつ、という側面があると思います。それは、偏に獣人関係の設定から離れて、一個人としての関係の始まりだから、という面なのでしょう。しかし、その緩急の付け方に驚いてしまった部分は否めませんでした。
③ 物語に大きな見せ場、迫力があったかと言うと決してそうではなく、ある種平坦だった。
これもかなり苺華√に救われており、改善傾向にあります。前作まではセタリアのみが舞台で、大きな動きも残念ながらなく、上述した通り、主人公の能動的な動きもありませんでした。しかし、苺華√の柚希は自発的に、しかも、早期のプロポーズ。そして、苺華と生涯を共にするべく魔法使いになるという目標を持っています。これは物語の緩急として機能しており、シナリオの改善に繋がったのではないかと見ています。
④ 未完成、透けて見える分割商法。
前作の最も大きな欠点です。商品として、あまりにも未完成部分が露骨です。なぜクリア後に「???」が2つもあるのでしょうか?正直、訳が分からず、落胆してしまいました。どう見ても、前作のこの「???」は苺華、ナナのシナリオの名残でしょう。これはいくら何でもミドルプライスとはいえ、製品の購入者たるプレイヤーに失礼というものではないかと強く感じました。
それで、本作はと言うと、幸いというべきか、完全に解消されていましたね。まあ当たり前なのですが、謎の「???」は存在せず、攻略不可キャラクター(みつき)にも攻略不可なりの理由を持たせたています。そして、苺華、ナナ、かぐやといった魅力的なキャラクターに(不均等ではありますが)出番を割いています。そこが納得できる出来であったため、本項目は完全に解消されたと言ってよいでしょう。
総じて、①~④に関して完全と言えない部分こそあれど、改善する意思を強く感じました。私はここを高く評価したいと思います。逆に言えば、『無印』の出来が壊滅的だったという見方もできます。
〇全体的に説得力がない
一方、本作独自の気になる点というのも当然あります。その最たる例がズバリ「説得力の不足」です。
これはキャラゲーとしては仕方ないことで言及すること自体がある種、恥ずかしいのですが、苺華、ナナ、かぐやといった「学生(しかも高〇生設定)アルバイト」にいくら何でも頼りすぎていませんか?かなりリアルとかけ離れていました。無論、喫茶店経営の物語なのですから、多少の違和感は多めに見ます。しかし、千絵莉とみくりが喫茶店アルバイト初心者であった前作と異なり、苺華、ナナ、かぐやはかなり喫茶店、和菓子屋での労働に慣れています。だからこそ、設定面、描写面で、上記三名に依存し過ぎているのですよ。はっきり言って、これではスイートテイル、もちづきの経営に説得力を持たせることができていません。私はプレイヤーを物語に没入させる上での説得力を非常に重視します。ゆえにこの違和感は激しいものでした。
また、かぐやに関しても、その恋愛に残念ながら説得力を見出すことができませんでしたね。男性が苦手というコンプレックスの解消、諸所の手助け。これだけで男性が苦手だった、かぐやが柚希に恋愛感情を見出すのは正直、弱いと思ってしまいましたね。苺華とナナが恋愛回りで上手く立ち回っていたと捉えているだけにここは気になりました。
仕方がないことなのですが、ここにも若干の、しかし無視できない程度の落とし穴があったので、点数を落としています。
以上を踏まえて、個別√を見ていきましょう。
〇苺華√
本作で最高峰のシナリオです。文句がありません。
本√は前半と後半に分かれております。前半が獣人間の掟、規則の取り仕切り。後半が苺華との恋愛、ドМな性癖の開示部分です。前半は物語の良いアクセントです。ツッコむだけ野暮と言うものでしょう。それで、後半部分。もう最高ですね。柚希が積極的に動き、婚約指輪を渡し、苺華とデート等のイベントを重ねて、性交渉に至る。その過程が非常に丁寧であり、分かりやすかったのですね。苺華のドМな部分もよくよく苺華の行動を観察しているとそれはもう分かりやすい範囲でした。しかも、双方の愛情を確かめ合う程度で、本気でドМプレイを望んでいるわけではないところも重要なポイントです。犬には「服従のポーズ」という仕草があります。苺華にも同じことが言えます。読んでいて非常に愛らしく、可愛かったです。
良かった点はいくらでも挙げられます。苺華への告白のCGで苺華が嬉し泣きしている点。性交渉までの過程を重視し、その間のイベント(デート等)を増やしている点。柚希が内心引いているものの、苺華の性癖に付き合ってあげている点。そして、何と言っても、最後に通常Hを収録してある点。その全てが至高であり、無駄がなく構成されていました。正直、彼女の√だけであれば、そして苺華の√に肉付けがさらにされていれば、シナリオはこれ以上の点数になったことでしょう。
〇ナナ√
ナナ√も純粋に楽しめましたね。苺華同様『無印』から登場している人物であり、気になっていたプレイヤーも多いことでしょう。
そんなナナ√ですが、告白に至る流れが苺華同様自然かつ、苺華と真逆でナナからの積極的なアプローチであるところがとにかくエモい。ナナの可愛らしさが表に出ていたバレンタインイベントでしたね。
また、ナナの律義さも強く押し出されていた√で、ナナの個性も現れています。「世話になりっぱなしは嫌だ」、「あたしだって、お前を喜ばせたい」。素敵な台詞で、感動しました。小鳥遊さんへの不器用な思いやりと合わせて、ナナの性格を表現できていたと思います。Hシーンも髪下ろしシーンがあり、満足しました。ナナ√最後のHシーン(媚薬のHシーン)は苺華のドスケベさがあらわになる点と合わせて楽しむことができました。苺華の好感度も爆上がりです。
ただ、お店自体が小鳥遊さんに依存し過ぎており、リアル感が欠如しているのは大いに気になるところです。ナナ個人を魅せるためのイベントとして用意したのは理解します。しかし、お店の経営が大丈夫か心配になります。であるならば、共通√で行っていたように、もちづき等とのコラボメニューの探求で四苦八苦する等、スイートテイルの印象を落とさないようなイベントの方が適切であったように感じます。
〇かぐや√
かぐや√は正直、一番印象が薄いです。原因はあの引っ込み思案だったかぐやが、自発的に動いている割に、柚希の反応がいまいちで、苺華√と同一人物か疑ってしまうほどだったからというのもあるのでしょう。しかし、根本的な要因は恋愛の過程に説得力がない点ではないでしょうか。
上述した通り、かぐやの恋愛感情はまっとうではあるのですが、少々、恋愛ゲームに求めているものとしては不足気味です。まして、上述した苺華、ナナの√の出来と乖離しており、驚愕したというのも正直な感想です。新キャラだからこそ、もう少し恋愛に至る過程を補完する、例えば姉のみつきもアドバイザーとして恋愛に深く絡ませる等、やりようはあったはずです。それが出来なかったのは作品としての完成度に少なからず響いていると感じます。
とはいえ、うさぎの獣人らしく性欲が強い一面もあり、需要を満たせる部分も多くあっただけに残念でした。
〇ハーレム√
なぜ、かぐやがいない!非常に不満です。
ハーレム√自体半分夢オチのようなものなので、仕方ないのですが、苺華とナナのみで完結させてしまったのはやはり惜しい。ウサギの獣人である、かぐやの個性を発揮できる絶好の機会だったはず。ハーレムと謳いながら、一部キャラクターを除外してしまうのは正直、印象が悪いです。
あと、千絵莉とみくり、ついでにみつきのシーンも欲しいと思ったのは強欲でしょうか?
〇Hシーン
Hシーンはですね、苺華√中心に良かったです。ナナもかぐやもかなり高評価します。しかし、個性という点で、良い意味で苺華には及ばないのではないでしょうか。いや、だって苺華がえっち過ぎます。ドМで隷属願望あり、魔法があるとはいえ、野外プレイありです。私も非常に満足しました。しかも分かっているのは、苺華と純粋に愛を確かめる通常Hも最後にあるということですね。これがドМエッチだけでも良かったと言えばよかったのですが、個性的過ぎて若干扱いに困っていたと思いますので、これで良かったのだと認識しております。
強いて不満があるとすれば、かぐやとみつきの姉妹丼がなぜか存在しない点ですね。次回作に大いに期待します。
総合的に見て、大きな不満も存在しつつ、苺華√の完成度やユーザーの私的に真摯に対応しようとした姿勢が見えた点。これらを相殺して、30点に届かない程度が妥当と判断しました。かなり善戦した方だと思います。
☆キャラ(30/40)
キャラクターのレベルも前作と比べてかなりパワーアップしています。まず、圧倒的に強いのが苺華ですね。個性が十分にあり、裏で相当ドスケベ(しかも自発的に)。その上で獣人関係の仕事もきちんとこなし、という具合でかなり完成度が高いキャラクターですね。最も好きになれました。
当然、私が前作で好きだと言った、ナナも好みです。Hシーンで髪下ろしがあったのが大きいですね。あの媚薬Hを入れた制作陣の判断はナイスでした。個人的には、さらに乱れてくれていいのよ?と思ったり、ナナの個性もパティシエ部分に集約されてしまい、ゲーム好きな点等は補完しきれていないと感じるところが玉に瑕ですが、許容できる範囲です。
問題はかぐやですね。かぐや自身は可愛らしいのですよ。しかし、魅せ方、出番に恵まれていませんね。せっかくの新キャラが、みつき含め2名もいるのに旧キャラに頼ってしまったと言いますか。悪く言えば、冷遇されているとも言います。これではいくら何でもかぐや好きの方が可愛そうです。無論、次回作で、この問題は解決されることでしょう。というかそのような作りになっているとしか思えません。みつきの存在はどう見ても温存されていました。この対応は流石に非ユーザーフレンドリーだと認識しております。『3』の完成度については今後、評価させていただくとして、『2』単体として見れば、かぐや、みつきがハーレムから欠損している等の問題点もあり、十分にキャラクター部門で評価できかねる状態にあります。非常に惜しいです。
救いであるのは前作ヒロインの千絵莉とみくりの存在です。彼女達がいてくれたから、三店舗のワイワイガヤガヤを上手く表現できていたのだと思います。
また、主に苺華√で、柚希の存在が光ったのも高評価です。とても個性的かつ積極的な、良い主人公でした。バレンタインデーの婚約指輪のシーンは本当に格好良いです。
トータルで見て、キャラクター部門も前作より大幅に改善されました。かぐや、みつきの冷遇を考慮に入れても大台の30点に乗ると判断しています。
☆その他(4/10)
その他については正直、前作から変わっていませんね。前作同様、ミドルプライスに足を引っ張られてしまったと解釈しています。
というのも、結局、前作の欠点であった「EDムービー中に他√の重要CGがネタバレされてしまう」点が全く改善されていなかったのですね。流石にこれは看過できません。
一応、大分前に記述した本作の改善すべき点を再掲しておきます。
① BGMに和風(みくりに合う)がないなど、雰囲気と合っていない場面がある。
これは完全に改善されましたね。もちづきという完全和風の店舗が舞台ということもあり、新BGM「はんなりうさぎ姉妹」が追加されております。これで、サウンド面で和洋の雰囲気のメリハリがつき、良い雰囲気を保てております。
② EDムービーに他√の重要要素がネタバレされてしまう点。
なぜ改善されなかったのか理解に苦しみます。これは偏にEDムービーが全√、共通だから起こっていること、つまりミドルプライスが原因です。しかし、対策も容易なはずです。共通EDムービーに共通√のCGのみを掲載する等です。しかし、本作はネタバレを軽視しております。
別作品ですが、同社の『アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-』や『さくらの雲*スカアレットの恋』ではあれほど凝ったEDムービーを制作して下さったきゃべつそふと様の作品であるとは正直、思いたくありません。かなり驚愕したポイントで「その他」にダイレクトに響いています。ED曲の『虹色*Sweetie』と、ついでにOP曲『ときめき*Decoration』もなかなかの良曲であるだけに非常に残念です。
以上です。ちなみにシステムはいつものきゃべつそふと様らしく次の選択肢までスキップが存在せず、謎にセーブスロットも少ないという具合でこちらも印象が良いとは言えません。
総合的に見て、雰囲気こそBGMの強化で良くなりましたが、システム面で重大な瑕疵があるため、高得点とはなりませんでした。本作の惜しいポイントです。
☆総括(63/100)
総合的には佳作(C)認定です。この作品は本当に苺華√に救われている。そう思う程度には苺華√の柚希、苺華は素晴らしく、満足のいく出来でした。一方、喫茶店、和菓子屋経営モノにしては少々設定面が甘いと感じられる点やシステム面の不備(と言われても文句は言えないと思います)。これらの要素から佳作とさせていただきます。
ポテンシャルはかなり高い作品だと思っています。私が激しく気になった点が、他の方から見て、気にならない可能性があるからです。しかし、私は作品を商品としてフラットに見たい。そう考えた時、やはりそう簡単に高評価できる作品ではないだろういというのが今の私の正直な感想です。
本作の魅力的な獣人キャラクターは、本作をキャラゲーとして見た場合、必要十分な可愛さを発揮していると見るべきでしょう。そこは全力で私も堪能しました。第一、私の『無印』の点数は43点。お世辞にも良い点数とは言えません。しかし、本作は改善の意思の下、ここまで進化しました。制作陣の努力に敬意を表します。
本日も、ここまで長い感想にお付き合いいただき読者の方々も含め、制作陣の方々にもお礼申し上げます。ありがとうございました。
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