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誰かに伝えたいことなんかねえよ
「文才あるよね。」
友達がみんな、ほめてくれた。
大学生のとき、私がコツコツと毎日更新してるブログを欠かさずに読んでくれた友達。
「えー、そうかなあ?」
調子のった。
あのころは、書くときに必ず「あいつの悪口言ってやろう」くらいの気持ちで書いてた。
悪口っていうか、ちがうの。
「そういうとこ直したほうがいいと思います」っていう、まあ悪口ですね。すいません。めちゃめちゃ上から目線でえらそうなこと書いてたわ。
でも、なぜだかね。
多くの友達にズキュンと刺さったらしい。
「気づきをありがとう。」って。
そのブログは、すでに闇へと葬った。思いだすと恥ずかしい黒歴史。
世の中のこと、なーんにも知らないようなハタチ前後の小娘が。自分のことを「最強」だと思ってた。もしあのときウタが存在してたら、カラオケの持ち曲に「私は最強」入ってたな絶対。
20代、社会でいろいろブチのめされて。
30代、社会で生き残れるよう丸くなって。
そうしないと、大人で生きてけないじゃん。
そしたらさ、「誰かになにかを伝えよう」なんて。おこがましい気がして、言えなくなった。みんな勝手に生きてるよって。
「文章力を上げる本」を読むと、ぜーんぶ共通して、こう書いてある。
だれか1人に向けて書きましょう。
だるぅ!
何冊ものライティング本を読んで、私はイラついてきた。
でも、本当にそのとおりで。1人に向けて、頭からケムリ出しながら書いた文章は、人のこころに届くんだよね。
だから、書く人は苦しいよね。
誰かを想いつづけながら書くってさ。呪いみたいなもんじゃん。そりゃあ魂、かつお節みたいに削れてくよ。
それで1本書きあげたことのある人、ほんとすごいよ。「おつかれさま!」って拍手して、ビールでも奢りたい。枝豆も添えて。いぶりがっこ入りのポテトサラダも食べてほしい。
私は今、誰かに伝えたいことなんかないよ。
伝えたいことなくても、「エッセイじゃなくてただの日記」って言われても。note書く日があっても、別にいいよね。
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