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神無月十六日の子一つ時
今ここには風がない
空は高く冷たく
雲は動かない

全ての境界が曖昧になるこの場所に
人は静まり
沈黙者は雄弁に語る

露に濡れた木肌
無風の中でそよぐ葉ら
虫の音の高さ低さは重なり
月が雲に隠される

湿度を帯びた柔らかい土
月明りがぼやけ
靄は広がる
入り口まであと少し

この子の柔らかな皮膚がここにあるから
かろうじてとどまっている

いつでも行ける
いつでも見られる

どんな景色も、どんな世界にも
恐れはない

またしてもあなたの大きさに
自分の小ささを感じる
そのことが同時に
なんという安らぎか

今ここに時間は存在しない

左様ならば
このまま

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