ミサエちゃんに牛耳られていた
とがった口をさらに尖らせている。ここまできたらスネ夫も負けちゃいないだろう。
「まあ、どうってことないんだよ。仕事なんて山ほどあるし。」
まるでなんともない、といったように体勢を変えぞんざいな態度を取る。それを、そんな戯言を吐けるのは何も知らないやつのやることだ、とただ傍観して、嘲笑とも憫笑とも取れぬ表情を浮かべている妻。怒ることにも呆れているらしい。ひとりで食べていく財力がある女だ。そしてそのやり取りをぼんやり見ているボクはなにを考えているかといえば、お昼ご飯が少なくなったこと、おやつのジャーキーの質が落ちたこと、そしてひそかに恋心を抱いているゴールデンレトリーバーのミサエちゃんのことだ。今頃なにしているかなあ。
”ワン!”
二人の注意をこちらに向ける。君たちの仕事とボクの仕事は関係がないのだから。さて、おさんぽの催促でもするかな。ボクがウンコをしたそうだと察すると彼等は決まって公園の前を通る。そうすればミサエちゃんに会える。軽快な足取りでボクはご主人様のほうへ駆け寄っていった。そうすればいつでも笑ってくれることを知っているから。
どうも〜