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人生は選択の連続だ。何をするにも、目の前の選択肢から一つを選ばなくては前に進めない。 …
「わたしたちの一生ってさ、最大公約数探しなんだよね」 要はお互いに探り合いをし続けない…
シオンには日課がある。毎日、昼と夜に一度ずつ、『彼』のことを想うという日課だ。その時に…
思えば遠くまで来たものだ。 私の故郷は美しく、澄んだ空気に包まれて、清水が山と動物た…
ハギさんは見るからに大人しそうで、事実、とても口数が少ない。陽気な社長のもと、人と話す…
夕暮れの、僅かな間にしか見られない絵があるという。とても貴重な絵で、その話を聞いた人間…
この季節になると、夜でもうっすらと地上が明るくなる。月が生えてくるからだ。 白く、淡い光を発しながら少しずつ地中から覗く月は、私たちの掌にすっぽり収まる大きさで、細い蔓で連なって生えてくる。空に浮かぶ月と同様の模様で、全容は綺麗な球形をしている。夜毎に地面から覗く面積が大きくなり、ちょうどひと月で、地面から完全に全ての部分が出る。 ひと月目の晩には自ずと蔓が切れ、ゆっくりと空へ上っていく。無数の小さな月が浮かぶ様子は幻想的で、その日は郊外の畑へ多くの観光客が訪れる。畑で
近所に住むホシ君は博識で、植物や昆虫、天体や文学など様々なことを、小さな私に色々教えて…
海底に咲く花がある。人魚の涙から生まれるその花は、月の光を集めたような色で波にそよぎ、…
高校に入学して、それまでの陰気だった自分から脱却したかったぼくは、大幅にイメチェンして…
昨今、気軽に旅行へ出かけることが、なかなか難しくなった。海外はもちろん、隣の県へ出かけ…
目の前に積み重ねられた紙の束を見つめながら、おれは喉の奥から唸り声が漏れ出るのを止めら…
雨の中、黒い着物の母が、白い花に包まれた父を見て泣き崩れたのを覚えている。幼い私は幼い…
男は職場の駐車場で一人、たそがれていた。空は気持ちの良い晴れ具合で、夏の太陽が容赦なく地面に照りつける。男の手の中で、冷えていたペットボトルがどんどんと温くなっていく。 「あ、いたいた。警部、こんなとこにいたんですか」 快活な声と共に、彼の部下である若者が駆け寄って来た。 「せっかく世間を騒がせていた大怪盗を逮捕したというのに、どうしてそんな所でたそがれてるんです」 「……あいつは本当に捕まったんだよな」 「何言ってるんです。警部がその手で捕まえたんじゃないですか」 部