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ていの創作小説

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自分の創作小説をまとめています。
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2020年8月の記事一覧

リンドウ(誕生花ss)

 雨の中、黒い着物の母が、白い花に包まれた父を見て泣き崩れたのを覚えている。幼い私は幼い…

てい
4年前
4

過去見

 なんでも、過去を見ることの出来る女がいると言うので、ある日出かけて行った。真剣に見たい…

てい
4年前
3

スパティフィラム(誕生花ss)

 心の清らかな者にしか、楽園の扉は開かれない。それは宗教的な話ではなく、この社会における…

てい
4年前
3

アジサイ(誕生花ss)

 男は職場の駐車場で一人、たそがれていた。空は気持ちの良い晴れ具合で、夏の太陽が容赦なく…

てい
4年前
5

アサガオ(ヘブンリー・ブルー)(誕生花ss)

 天国の青。  その名の通り、抜けるような青空の色をした花々が咲き乱れていた。見渡す限り…

てい
4年前

モンステラ(誕生花ss)

 開店おめでとう、というメッセージと共に大振りの花がスタンドに飾られ、店先を華やかに彩っ…

てい
4年前
2

アロマティカス(誕生花ss)

 河川敷とかいうあまりにベタ、王道中の王道過ぎて逆に珍しいくらいの舞台で、弟は二歳上の不良生徒五名と、たった一人で闘っていた。夕陽に照らされた川の美しさが、揉み合い取っ組み合い罵倒を飛ばし合う野郎共のお陰で台無しだ。  おれは、ここまで案内してくれた美少女と共に、離れた場所から様子を観察している。弟は人数に気圧されることもなく果敢に立ち向かっているが、なにぶん多勢に無勢の感がある。 「今回の原因は?」 「購買のメロンパンです」  美少女の話によると、購買で時折売られる老舗ホテ

グリーンネックレス(誕生花ss)

 二〇××年八月二十五日。  あれは健やかに成長している。ひと月前に打った試験薬が今にな…

てい
4年前
2

ドウダンツツジ(誕生花ss)

「あたしね、宇宙人なの」  くりっとした大きな目で私を見ながら、アカリは言う。はいはい、…

てい
4年前
4

光る魚(童話)

 海が見える崖の上に、小さな町がありました。その小さな町に、クルという少年が、お兄さんの…

てい
4年前
1

ゲッカビジン(誕生花ss)

 病気がちな幼い王子の夜伽は、色の白い美人だった。王子が体調を崩して床に臥す度、彼女は水…

てい
4年前
4

トレニア(誕生花ss)

 ひらめきは探偵にとって必要不可欠のものである。  と言うのは私の持論だが、古今東西、ネ…

てい
4年前
2

サギソウ(誕生花ss)

 毎晩、夢に女が出る。真っ白い着物を着て、綺麗な顔をしているが、生気がない。わたしが毎日…

てい
4年前
2

アーティチョーク(誕生花ss)

 彼らは、ある日地球に降って来た。一見すると人の頭ほどの大きさの、硬く閉じた植物のツボミのようだが、実は人類より遥かに高度な文明を有する知的生命体だった。  彼らは人類を救いに来たのだ。 「アサミ、オカエリ」  データの処理を間違えて上司にこっぴどく叱られ力無く帰宅した私を、ツボミ(彼らの固有名は私たちに発音することは不可能なので、便宜上、誰もが彼らのことをそう呼ぶ)が転がるようにして迎えてくれた。 「ただいま……」 「ストレスチガアガッテイルヨウダ」  ツボミは言いながら、