怖くなんかない
8月21日。
10日間の山の中での夏期講習会が終わった。
講習中には
練習場のホテルであちこちから
(部屋はもちろん、階段の踊り場やエントランスでも)
いろいろな楽器の音が聞こえ、
外国語が飛び交い、
夜は国際フェスティバルレベルの講師コンサートを
楽しむこともでき、とても贅沢な気分に浸れた。
最終日には発表会で
娘の成長した姿を見ることができ、
上手な先輩たちの演奏も聞けて勉強になった。
帰る日の朝、せっかくだから
山を満喫しようということになった。
娘は
パパとミニゴルフを楽しみ
ママとケーブルカーに乗りたいという。
ケーブルカー?ここに登るの?良いね!と
軽い気持ちで乗ったのに、
鉄のケーブルカーがガタンと音を立てて
上昇し出した途端に
私は強い後悔に襲われた。
上を見ても下を見ても
クラクラする!
あんな高いところまで
登るって正気じゃない!
乗っている時間は10分もなかったと思うけれど
ものすごく長く感じた。
数年前にやはり娘に付き合って
旅行先で観覧車に乗り、
冷や汗をかいたことを思い出した。
頂上は2700m、
足がすくんであまり動けない。
走り出す娘に悲鳴をあげそうになり
危ないから走らない!と
手をギュッと繋いでいれば
ママ痛いよ、え、怖いの?嘘でしょ?
と言われる始末…。
ハイそうですよ、怖いんです。
娘に恐怖心を移してはいけないと
知っている呼吸法を駆使して気持ちを落ち着ける。
大切なのは
怖さに焦点を合わせないことだ。
怖くなんかない
怖くなんかない
少し落ち着いてきて周りを見渡せば
歩いて登ってくる人、降りてゆく人、
自転車で降りる人など
勇敢な山人たちがたくさんいた。
そしてこの日は
よく晴れて風もなく
青空に浮かんでいるような山頂からの景色は
本当に絶景だった。
帰りのケーブルカーは
ずっとずっと早く感じた。
下のカフェで待っていた夫に
娘は、頂上がどんなに素晴らしかったかを
力説していた。
アパートに別れを告げ
荷物を車に詰めて
帰途に着く。
帰りの車窓から見た湖のブルーは
ちょっと信じられないような色だった。
これからストレスを感じた時は
目を瞑ってこの青を思い出そう
そう思った。
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