みかん色の夜空に

(この物語はフィクションです。)
 その道に面した家にはみかんの木がある。今日みかんが一つなっているのを見つけた。なんだかうれしい。夜空はみかんのようなきれいなオレンジの色をしていた。その道を右に曲がるとハナ子ちゃんのうちがある。僕はハナ子ちゃんの家はたくさんの花の鉢植えがありきれいな日本庭園のようだと思った。かごの中にも赤い花が咲いている。
 ハナ子ちゃんはとても眠そうに起きてきておどろいていた。
「どうしたの。こんなに早く。しかもお天気なのに黒い長靴を履いて・・・」
「僕は夢の道先案内人。寅次郎ことトコロテンの寅なのだ。自分でつけた愛称だけれど」と言った。

 「天への梯子に昇りに行こう。昨日の雨で丁度いい感じなんだ」僕は花子ちゃんに飴を一つあげた。鳥が二羽飛んで行った。
「もし、梯子がなくなってしまったら、どうやって帰ってくるの?」と不安げに聞くハナ子ちゃんに
「あの道のみかんのなる木のコブにろうそくが灯るようにセットしておいたよ」と、僕は言った。
「まあ、とても小さな木で心配だわ」と、ハナ子ちゃんがいうので
「そうだね。でも自分と神様を信じて。ビリーブ ユア セルフ!& ゴッド!」
  そして、僕らは手をつないだ。ハナ子ちゃんは赤色と黄色の花柄のシャツに黒いパンツをはいて藍色のスニーカーをはいていた。リュックにはまんまるのトンボがかかれたバッチがついていて色鉛筆とスケッチブック、それからコーヒーの入った水筒が入れてあった。絵を描くのが好きらしい。 
 ほら、あの公園のまるい形をしたすべり台。上へと明るい光が向かっていて雲を突き抜けているよ」と大きな黒色の雲を見ながら僕は言った。さわやかな風がふく。そして、僕たちは口笛をふく、そして笑った。桜の木はゆらゆらと揺れていた。  
「あ!風に桜の花びらがユラリと舞って良くみえないわ!」
「さあ、いくよ。」
「この梯子どこに繋がっているの?」と、ハナ子ちゃんは聞いた。
「君のこころの中だ」
「え?何で夜空にあるの?」
「夜空と繋がっているのだよ。怖くなったらこの飴を食べて。心が落ちつくから」
「ありがとう」ハナ子ちゃんは飴の袋を手に取った。
「さあ、ここが始まりだ。たんぽぽ花を頭にさしてあげよう」
「なに、そのおまじない?」桜の花びら舞いちる中に二人の影が黒く見えた。
「ただの御守りさ。でも、結構効くのだよ。じゃあいいね」と言って二人は、二人は静かに昇って行った。                      
 「これが明るい道?おもったよりもゆらゆらして絹の上を歩いているみたい」
「この道はシルクロードに通じている?」
「エ?」
「そうかもね」     
「上に着いたらまずしゃべらずで振り向かないこと。凛としてつつましくしていると心も穏やかになる」トコロテンの寅ちゃんは言った。
「楽しみね」とハナ子ちゃんが言うと
「実際はサイコロを転がすスゴロクに似ている。迷宮。つまりラビリンスのようになっている」                          
「え?なんだか怖いわ」とハナ子ちゃんが言うと
「そんな時はいつでも心の中に正しい言葉で自分で灯をともすのだ。自分で自分を明るく照らすのだよ。もう始まってしまった。全てをみつめるまではかえれない。でも、楽しいこともある。本当は知らない方がいいこともある。
あの一番星をごらん?夜空はやみであってもあの美しく輝く星をた目印に帰ってくるのだ。何が起きても心の中の出来事。全て丸なのだよ」と言うと寅はハナ子ちゃんの手をギュッと握った。
 「さあ、ここだよ」
「まあ、この道ぬかるんでいて歩きにくいわ。」
「心の中で祈ってみて。うまく歩けるから」
「そう、確かに。何となくこの世界になれつつあるわ」
「ドレスに着替えるかい?舞踏会があるのだ」と寅ちゃんが言うとハナ子ちゃんは
「え?心の中の?」と聞いた。
「そう心の中の」と寅ちゃんは言った。
 「じゃあ、一番シンプルなものに。黒の無地のワンピースに赤色の花柄のタンクトップを着ようか?丸い石のネックレスと、それに頭にきれいな花のピンをつけよう。君にピッタリだ。元々ハナ子ちゃんはおしゃれなので何でも似合うよ。でも、心の中の冒険が先なんだ。必ず賢者になれる。」と寅ちゃんは得意げに言った。
「まあ、大きな門があるわ。地獄門みたい!」ハナ子ちゃんは突然現れた大きな門にビックリして言った。
 「おっと君の心の中の出来事は、この眼鏡で
見ないと見えないんだ。スーパーな近視なんでね」と、寅ちゃんは言った。
「僕はここで待っているよ!案内人の鷹を1羽つけるからひとりでいけるね」
 「ありがとう。寅ちゃん。でもどうして私なの?」とハナ子ちゃんは不思議そうにしていた。
「君の心が僕を呼んだのだ」と寅ちゃんは一事言った。
 「オイラ、鷹のウインって言うんだ。ヨロシク」
「こんにちは」
「よろしく」と鷹のウインとハナ子ちゃんはすぐに友達になった。
「ここから、先はあの、黒いSL列車に乗っていくのだ。駅におりても出発時間を守るようにね。」と寅ちゃんは言って手を振った。
「ハイ、ありがとう」と言うとハナ子ちゃんと鷹のウインのせたSLは出発した。
 少し進むと、行くところのろうそくの灯がうれしい。なんだかいっぱい花も咲いている。
「だって、ここはわたしのこころの中、きれいでないわけがない」と、ハナ子ちゃんは笑った。
「ハナ子ちゃん、一つ目の駅だよ」とウインは教えた。
「車掌さん、降りてもいいかしら?」と言うと、まん中分けの髭の生えた車掌さんは
「23分に出発するから、降りてもいいよ。でもまた間に合うように帰っておいで」と言った。一人と一羽は黒く大きなSL列車を降りるとなんだか変な少し怖いような気持ちになった。
鷹のウインは笑って
「人の心はコロコロかわるものだ。でもまだ、大丈夫。このSL列車は7駅で終点だ。見ない方がいい。探さない方がいいこともあるかもしれない。それでも君は行くのだろう?」と言った。
「まあ、ウインってば痛いところを突くのね!」
「頭の飾りを触ってごらん。少し心が落ち着くから」とウインが言うと
「オーイ!プリンセス!発車しますよー!」と車掌さんの声が聞こえた。
「あまり、観光できなかったわ」とハナ子ちゃんが残念そうに言うと
「次の駅で・・・」とウインは言ってまた列車に一緒に乗り込んだ。
「あれ?いつの間にかたくさんの人が乗っているわ!」
「ハーイ!こんにちは。僕の名前は野中福。君はハナ子ちゃんにウインだね」
「どうして、知っているの?」と、ハナ子ちゃんが聞くと
「なんだ、野暮ったいこと聞いて!だって、ここは君の心の中だもの。君が思ったから僕は現れたんだ」と、福は言った。                
「???」
「大丈夫。プリンセス、すべてはうまくいっている」
「何を探しているの?」
「人魚姫の石の玉、グレイトエッグ」
「へぇ、何なの?それ?」
「昔、ああ、わかりづらいかもしれない。君の心の中にも神話のじだいがあるんだ。」と、福は語り始めた。     
「その 神話の中にいた頃、美しい人魚姫が湖にいたという。彼女はその美しさで人を魅了したという。彼女の笑顔は男女問わず人の心を感動させたということだ。
 それに目をつけた海賊は彼女をさらって金儲けの道具としたらしい。彼女は悲しみのあまり
『私を石に変えて下さい』と神様にお願いした。
 神さまは哀れに思い彼女を石像に変えた。海賊たちは人魚姫の石像を浜に捨てて去っていった。その人魚姫の石像は毎夜涙を流したという。月日は流れて、その涙はいつの間にか大きな海となった。彼女の身体は風化して細かく4つの石の玉に分かれて海に漂ったらしい。唯一彼女の手に握られていた旗だけが何処か遠くの砂浜に刺さっていると聞いた。その四つの人魚姫の石の玉には霊験があり不治の病を治したり、光で人を導いたりすると言うことだ」と福は得意げに言った。
「へー!面白そうね」
「僕はその石の玉を手に入れて好きな子と家族になりたいんだ」と福が言うと
「まあ、いい夢ね。スゴイじゃない!頑張ってね」とハナ子は言った。
 「やあ、このSL列車はチューリップ畑を通ると海の中に潜るぞー」と車掌さんが叫んだ。
「エ?福君。どうすればいい?」
「よし、ここは君の心の中のだ。自分を信じることだ。」と、福は言った。
「ねえ、福?私達もいっしょに連れて行ってくれない?」
「いいけれど君はかえれるのかい?」
「すべてを見届けたら帰れるわ!あの星を目印にかえるの。それに鷹のウインが導いてくれるみたい」
「君は変わっているな。心の中なんて見ない方がイイゼ」
「このSLで帰れるの?」
「その鷹のウインをが最後はちからになってくれるさ!」
「よろしく 福!」
「よろしく ハナ子!」
「さあ、皆さん、お待たせしました。ここからは人魚姫の涙の海に入ります。入水しないようシートをかけます。どうぞおきをつけて」というと天井にシートがかかった。そして、機体は大きく揺れ、そっと海の中にはいって行った。
 そこにはイルカのムレや真鯛、えび、マグロ、などが舞いおどり思ったより楽しいところだった。
「いつも笑顔でいること。感謝すること。それにお金は一円もかからない。そして、生きて行くのにじゅうぶんなお金、それらは人生を豊かにする調味料だ」と、福は話した。
「でも、海の中には戒めもある」とも、福は言った。泡がシャボン玉のように上にのぼってゆく。
「すごい!美しい!」と、ハナ子は感動しました。すると、
「あれ、なんだか音がする。日本の童謡みたいな優しい音が…」とつづけた。
「え?僕には何も聞こえないぜ!」と、福は答えた。
 車掌さんは
「プリンセス、お名前は?」と、聞いた。
「ハナ子です。」と、答えると彼は
「ああ、君とは初めて会った気がしない。君はとてもいい耳をしているらしい」
「え?一応聴力は悪くないけれど」
「いえ!神の音が聞こえているのだとおもいます。」
「え?神様?」
「はい、海神マリーン様です」と、車掌さんは笑った。
「どうも、好かれているようですよ!先ほどから魚達がよろこんでいます。なにか、海の思い出はありますか?」と、聞かれたのでハナ子はよく考えて
「この海じゃないけれど小さいころから海に潜るのはスキでよくみんなでおよぎに行ったわ!」と、微笑んだ。
「すべては繋がっているのです。この海はあなたの心の故郷。どうか楽しんで」と、車掌さんは言った。
 ハナ子は
「ヤッホー」とうれしくなった。
「海神マリーン様って人魚姫の石の玉のことをご存じかしら?しかもどんなかたなんだろう?」
「さあ?」
「さて、皆さま。次の駅には料理店があります。一時間ほど止まりますのでお夕食でもどうぞマリーン様はこのSL列車の終点の大黒城にいらっしゃいますよ」と、車掌さんは笑った。
「さあ、腹を満たすために次の駅で降りてみよう!」と、福は言った。
「OK」と、ハナ子もパチンと指を鳴らした。
 4つ目の駅でを降りると丸いドーム型になった『ツバメの玉子料理店』と言う名の看板がかかり、駅ごと料理店の中にはいっていて活気のあるら料理店に2人は驚いた。
「わー、すごいなあ」
「良いにおい」2人はワクワクして、店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ、こんばんわ。お客様は2名様ですか?」髪を横に流したボーイがいうので
「あと、鷹を1羽良いですか?おとなしくて悪さはしません」とハナ子はいった。
「では、どうぞ」と言って中にとおされました。なんだか人間の形をした魚がたくさんいるような、いや、人間に憧れていると魚たち。パーティーの時には人薬を飲んで人の形をしてくるんだ」
「人薬?」
「それこそマリーン様の家族に伝わる秘薬だよ」
「お客様、なにをお召し上がりになりますか?おお、頭にタンポポの花が、ママがさしてくれたのですか?」
「エエ?まあ、」
「とてもお似合いだ、今日は海の幸のパスタなんてどうですか?アイスコーヒーはサービスいたしますよ」
「わー!うれしい」
「福とウインはどうする?」
「僕は日本一おいしいという焼き鳥が特に好きなんだ。それと、日本のハムとソーセージ。それと、チョコモナカのアイスで」と言うと
「焼き鳥か~、おいらを食べないでくれよ!おいらは海老しゅうまい。元々の海老の味が一番グットだな」とウインは言った。
「付け合わせでブロッコリーも」と、付け加えた。
「かしこまりました。できればチップを」と、言うので50円をわたした。
 20分後、軽い食事が運ばれてきて2人と1羽はとても、おいしくたべた。
「ここは、一応三ツ星レストランなんです。」と、ボーイは得意気に言った。
「確かに!」というと、ハナ子ちゃんはあることに気がついた。
3つ隣のテーブルに座っている少年がしているネックレスに大きな石の玉がついていることに。その石は七色に輝いていた。
「ああ、あの男の子のネックレス!もしかしたら人魚の石の玉かも知れない。本人は分かっていてあれを首にかけているのかな」と福はいった。
「ああ、あり得る。そしてとても危ない」と鷹のウインも言った。
「どうして?」とハナ子が聞くと
「不治の病を治す石の玉だ。海賊だけでなく、欲しいと狙っているやつがわんさかいる。ターゲットになるゾ。きっと」と福が言った。
「あの少年にコンタクトを取ってみよう」と、ハナ子は言った。
 彼はウエーブのかかった髪をしていて眉毛の太い少年だった。
「私、作戦を考えたわ。トイレに行くふりをしてハンカチを落とすのよ。それを拾ってもらうっていうのはどう?」
「ああ、いいねえ!」とウインと福は言った。予定通りハナ子は彼のすぐ横でハンカチを落とした。すると、それに気がついたその少年は拾おうとかがんだ拍子にハナ子の頭と少年の頭がガチンと当たった。とても痛かった。
「やあ、ごめん。これどうぞ」と、少年はハナ子に桃色のハンカチを渡した。声の響きがとても深く綺麗でハナ子はドキドキした。服も黒い質のよい服を着ていて、上品だった。
 「あなたのネックレス素敵ね。もし、時間があれば私達の席に来てくれない?そのネックレスに興味があってね。」と、ハナ子は言った。
「いいよ!僕はもう、食事が終わっているから。お父さん、ちょっと彼女の席に遊びに行っていい?」と、少年が聞くといいよ!と、父親は笑って手を振った。
「いらっしゃーい!僕の名前は福。君は?」
「鷲太だ」
「私はハナ子。よろしくね」
「いい名前だね」
「ところで君のしているネックレスどうしたの?」
「ああ、これかい?これは家に古くから伝わるものでいつもはしないのだけれど今日は僕のバースデーで家族と食事にきたからしてきたんだ」と、鷲太は言った。
 「ちょっと見ていい?」と福が言うと
「裏に何か書いてあるんだ。でも、誰にも読めないんだ」とし宗太は言った。
 福がネックレスに触ると一瞬大きく輝いた。
「なんだ、今までこんなことはなかったのに・・・」と宗太
は驚いて言った。ハナ子は
「偉大なるグレートエッグと書いてあるわ」と突然話した。
「え?ハナ子ちゃんは読めるの?君達は特別な人?」と鷲太が言うと
『君達はもう選ばれているんだ』と声が聞こえる。
「なんだ?周りの人達には聞こえていないみたいだ」と鷲太は言った。
「前だ、そのキャンドルの横に飾ってある花がしゃべっているんだ」
「私はただの花ではない。君達三人をここに集めたのは実は私だ。オホン。私はマーガレット伯爵。花の精霊だ君達には人魚姫を復活させる使命を与えよう。誉れと思いたまえ!」
「え?何?結局どうすればいいの?」と、ハナ子はおどろいて言った。
「君、鷲太が持っているものは1つ目の人魚姫の石、グレートエッグだ。あと、三つを探し海神マリーン様のところへ持って行きたまえ。きっと、人魚姫は復活する。私はこの世界の花を自然を守りたい。その一心だ」
「人魚姫は復活しても、また拐われたりしない?」
「それは我々フラワーファンタジー、つまり自然の力が守る、太古の昔、守りきれず悲しい結末をたどられてしまった。今度こそ幸せになって頂きたい。この自然界の女王として君臨して頂くのだ」
「オイ、マーガレット伯爵!勝手な事を言っているけれど人魚姫本人がのぞまないこだったら俺らはしたくないぜ」と鷲太は言った。
「海に還りたいでしょうね」と、ハナ子が言うと
「かもしれぬ。しかし、彼女の復活もまた我らの悲願。我々は、もはや彼女の力なしにはこの世界に居続けることはできなさそうなのだ」と、ガックリ肩を落として言った。
「・・・・・。フラワーファンタジーの世界、つまり草花も大変なのね」とハナ子は言った。
「いいだろう。とりあえず僕らはグレートエッグを見つけに行こう」と鷲太は言いだした。
「君、君はバースディパーティー中ではないのかい?」
「僕はいくよ。このマーガレット伯爵は信用できるのかわからないけれど、僕の家に代々伝わる石の玉だもの。僕の家はこの石の玉を守るためにあって
僕はその後継者だもの。僕は行く」としっかりと言った。福も
「僕も行く」と言うとハナ子も
「私も」と三人は手をギュッと握った。まさに何か時代の大きなうねりの中にいるようで少し怖かった。
 マーガレット伯爵は
「私は花があるところに声をかけてくれればいい。君達のところに必ずでむこう。花あるところに我ありだ。ラジャー」と、笑った。これをといって地図をわたしてくれた。鷲太は両親に
「突然だけれど友と一緒に行きたい」と言いに行った。
「何を言っているんだ。お前のバースディーだぞ」と父親が言うとグレートエッグのペンダントが淡く光った。すると両親は
「気を付けて行ってきなさい」と態度を変えた。レストランの食事を済ませた三人と一羽はマーガレット伯爵のくれた地図をよく見た。
「二つ目のグレートエッグの石の玉は×が描いてある。ここにあると言うことなのかな?」と言うとハナ子の頭にさしていたタンポポが
「それも我々の推測にすぎません。しかし我々自然は君達よりも見えない多くのものを見ます」と言った。
「まあ、力強いわね」とハナ子は言うと
「多分石の玉同士が引かれ合い導き合うでしょう」とタンポポは言ってまた口を閉ざした。
「二つ目の石の玉は砂の中よ、きっと」と、タンポポは呟いた。
「砂?」その言葉はみんなを不安にした。福は腕を組むと
「悩む暇があったら行動する。行動しながらかんがえる」と、言うと鷹のウインは
「まさに、心理」と、笑った。
 とりあえず、三人と一羽は黒いSL列車の終点の七駅目まで行った。終点は田舎の風景でちょっと寂しいところだった。浜辺の後ろに崖がありどこまでも海が続いているようでなぜか世界の果てのような気がした。
「なんだか、寂しいところね。ここも私の心の中なのかしら?」とハナ子が言うと
「心の深い深いところには人の理解できない、悲しみがあるんだ。渇愛と言うのかもしれないな心の中で満たされていない部分があるのかもしれない」と鷲太は言った。崖の前を通ると一本の旗が
立っていた。ライオンズフラッグと書いてあった。
「あっ!これ、人魚姫の持っていた旗じゃないか?」
「そうかも…」
「それに、この海は船がないと行けないぞ!」
「車掌さん、どうしよう」
「そうですねぇ、プリンセス!あの旗はライオンズフラッグ。大切に持っているといいですよ平和のアイテムに変わるかも知れない。実はこの付近は舵が効かなくなって没落したゴースト船が乗り捨てられています。なるべく小さくて使えそうなものを選んで乗って行くといいですよ!」と、言いました。
「ありがとう」と、ハナ子 が言うと
「そうか、じゃあ、みんな行こう!」と鷲太は言った。ハナ子は鷲太はリーダーに向いていると思った。

 崖の後ろに乗り捨てられた船が幾つも見つかった。しかし古すぎて使えないのではないかと思った。
 そこに一艘の小型クルーザーがあった。まだ新しくビクトリー号と書いてあった。三人から四人しか乗れないが
「これにしよう!」と、みんな声を揃えて言った。
 乗り込んでみると結構綺麗で広い。ただエンジンがショートしているだけのようだった。
「僕に任せて!!」と言って散らばっていた後部を使ってチャッチャッと福は直してしまった。
「凄いね、福」と言うと
「うん、父ちゃんが機械技工士なんだ」と胸を張った。適材適所だわとハナ子は思い
「さて、もう一度地図を見よう」と、三人は顔を寄せた。
「エーッと。二つ目のグレートエッグは・・・。ああ、砂漠だ・・・!!」と鷲太が言うと
「え?砂漠?それはないだろう。海しか見えないぞ」と福が言うと
「だって、そう書いてある」
「その地図、本当に合っているのかしら?」
「この辺には花がないから!あ!このタンポポは分かるかもしれないわ。ちょっとしおれているから水をあげよう。もし本当にこの海が人魚の涙で出来ているのならきっと真水だわ」というと転がっていた湯呑に海水を入れてタンポポをさした。しおれていたタンポポは15分もすると元気になり
「この東南東の方向に行くと不思議な自然現象が起きていてそこに砂漠があるわ。でも、早くしないと間に合わない!!」と言った。そして、タンポポはまた沈黙を守った。
「ありがとう」
「じゃあ、レッツゴー!」」と言うと、三人と一羽を乗せたビクトリー号は出港した。30分が過ぎ海の景色も飽きてきた頃、
「ホラ、前、前を見て!!」とハナ子は指をさした。
 平たい雲が天空に浮いている。そこからまるで砂時計の砂のように1本の線になってサラサラとお日様の光に輝いて砂が落ちている。いつから落ちているのかわからないが、その砂は海に積もって丘のように砂の丘に積もっていた。
「砂漠とはこのことか・・・」鷲太は言った。
「なんでこんな現象が起きるのだ」と鷲太は不思議そうに言った。
「人魚姫が再び復活するのが先か、海が砂に埋もれるのが先か・・・。実は良いことと悪いことはセット。ピンチはチャンス、チャンスはピンチなのです」とタンポポは意味ありげに言った。
 「降りてみよう。僕の石の玉が騒いでいる」と、鷲太は自分の手元にある石が光るのを見て言った。
「どこだろう。すごく深く埋まっていたらどうしよう。」ちょっと歩きにくい。みんなは手分けして探した。すると
「あ、あっちだ!!」と鷲太は叫んだ。その指をさす方向には大きなバラのアーチがあった。赤や黄やピンクの花が咲き誇っている。
 バラのアーチを抜けると大きな花時計があった。ここは、海の水がひかれている神聖な場所だ。時刻は4時15分
「ここだわ!」と、ハナ子は言った。
「何でわかるの?」と、聞くと
「女の第6感。なーんてね。ここは、私の心の中だからよ!」
鷹のウインは上空から
「2」と大きな声で言った。花時計の数字の2のところにグレートエッグがあると言っているのだ。
「ヤッホー」と、福は叫んだ。
「はい、喜ぶのはそこまで。楽天的なのはまだ早い」と、花の精霊マーガレット伯爵が現れた。
「ワー。マーガレット伯爵!」
「さあ、アメでも召し上がって」
「はい」と、ハナ子は言った。
「君達の知恵も良いし~。ところで、そのアメなかなかでしょう?私の一押し。今日は天がお味方になってくださっています。このまま人魚姫様の為に尽くすのか、石の玉探しの道!だらけてはいけないザマス!!」といい
「ハナ子!君こそ心を律し愛のために動けばこの世界は平和になります。何故ならば貴方の心のなかの世界ですから!怖がらないで、皆、目印は花!」と、マーガレット伯爵は言った。
「このアーチを抜けると一気に世界がちがう。とりあえず花時計の2の数字のところを見たまえ!」と、言うとマーガレット伯爵はきえた。
「エエっと、2のところ・・・」
「僕が行こう」鷲太は花時計をよじ登って2の番号のところに行った。ツバメが巣を作っていてひなが数匹いてピイピイと鳴いていた。
 すると、鷲太の胸の石の玉が神々しく光ると光線を発しツバメの巣を照らした。
「ちょっとゴメン」と言って鷲太はツバメの巣の中に手を突っ込んだ。ひなたちはピーと鳴いて抵抗したが二つ目のグレートエッグが手に入った。一つ目よりやや小ぶりで紅色に輝く星のようだった。涙の形をしていて紐をつける穴があいていた。鷲太はゆっくりと降りて行ってハナ子にそれを渡した。福もじっと見つめていた。まん中にトパーズのような模様があった。
「『平和の石。厄を半分取る』と書いてあるわ」とハナ子は言った。
「これはハナ子がするんだ」
「え?」裏を見ると花をかたどったマークが描いてある。
「はい、そうするわ」と、ハナ子は言いハンカチを裂いて糸にし、その石を
大切に胸にかけた。そして肌身はなさなかった。
「大丈夫なのかな?」と福が言うと
「多分そちらの方が良くなるのよ」とハナ子は意味深なことを言った。
「多分、三つめは・・・」と鷲太は福に言った。
 マーガレット伯爵は言った。
「この海にはもう一つの神話のような話があるんだ」
「え?それはグレートエッグと関係している事なのですか?」
「ああ、でもウワサにすぎない。実は海神マリーン様には孫のリュウサ様と言う方がいらっしゃる。ハナ子、君とおない年だ。そしてリュウサ様はお生まれになった時に肩に大きなコブが出来て生まれた。皆そう話をした。手術でそのコブを取ろうとしたが、どうもその肩に埋まっているのはそ紛れもなく最後のグレートエッグらしいのだ。
 リュウサ様は男性ながら人魚姫の後継者と言うべき人なのかもしれない。
詳しくはわからない。
 ただ、君達はいずれ巡り合うだあろう。グレートエッグと言う1本の道の上に立っているのだから・・・」と言ってマーガレット伯爵は消えた。
「あ、ちょっと待ってー!」と言ったが時がすでに遅かった。しかもバラのアーチの向こう側から見えていた景色が砂漠と海だけだったのに対しアーチを越えると大きな森に出た。
「どうなっているんだろう?」
「ここは私の心の中の世界であり砂漠の見せた蜃気楼だったのかもしれない。二つ目が手に入りリュウサ様と言う四つ目のグレートエッグの手がかりも少しつかめてきたんだ。しかも人魚姫の旗、ライオンズフラッグも手に入れた。気を落とさずに計画を練ろう。」
「ああ」
「みんな、オレこれを作ってみたんだ。手作りのパチンコだ。もし海賊やさんぞくに襲われた時目つぶしや煙幕くらいはたける。」と、福は言った。
「ホウ、福は器用だなあ。」とハナ子は言った。
  終点の駅からのルートでアイジャンと言う海神マリーン様の城があると言っていたがこの森の中なのかな?」
「いや、分からない。まだ、三つ目を見つけていないし・・・。しかし何か食べないと、腹ペコだ。」
 「地図は細かいところは全部は見えないんだ。でも車掌さんは言っていた、さわやかな風が吹く方向で良いのかな?」
「イヤ、まさにグレートエッグが必ず引き合うさ。君達に僕が出会ったように」
「ああ」と福が言う。
「さあ、じゃあ森をぬけよう。多分神聖な森だ」と言いながら、でもバラのアーチが出口なのか、それとも入口なのかはわからなかった。
 三人と一羽は少し不安だった。
「毒を持つ動物に気をつけろ。」
 そして、三人は川に沿って進んだ。大きな鯉や夏のツバメがいて感動した。神々の森だった。
「ここは君の心の中の一番深い場所なのかもしれないな」と鷲
太は言う
「何か進むごとに時代が戻っていくかのようだ」動物たちも川辺でゆったりとくつろいでいた。ヘビやヒツジや子牛、水牛、仔馬や猫や犬なども川辺で群れている。
 「ようこそ、お客人その一番年上のものに私はエルフというバッファローだと言った者がいた。
「ようこそ」と言った。
「私達は神の森の生き物です、私達は木の実や果物しか食べないからどうか安心して欲しい。軽やかな風が吹く。
「この森で迷ったら出口はないぞ」と、鷲太は言った。
「私達、とても腹ペコなの」と言うと
「わかりました」とバッファローのエルフは皆にクルミや果物、野菜などを用意させた。
「ありがとう」みんなは急いでガツガツと食べた。
 川の鯉のガープはピヨンと跳ねて
「どこに行くの?」と言うと鷲太は
「僕たちは人魚姫様の復活のためグレートエッグを探している旅の者です」とハッキリと言った。そして、二つ目のグレートエッグを見せると動物たちはハッとして歩み寄った
「勇者様ではありませんか」と言った。
「いえ、違います。あなた達こそ聖獣ではありませんか?」
「食べ物を分け与えて下さりありがとうございました。しかし、申し訳ありませんがお礼をするものがありません」と福が言うと
「この砂漠で我々も困っているのです。どうも人魚姫亡き後リュウサ様がお生まれになったことが何か時空のひずみの様なものを生んだとか・・・」
 鷹のウインは頭の上をくるくると旋回した。
「私達の一番下の仲間に、猿の宗太郎というものがいるのですがとても有能な猿なのですが自分に自信がないのです。彼が一番崇高な心を持って生まれているのに・・・。もっと広い世界に連れ出してあげて下さい」
「わかりました。いっしょに行きましょう」
「私達にはよくわからないのですがグレートエッグの三つ目を持っているのはその宗太郎と言う猿なのではないかと言うことです。私たちでは扱えないものを自在に操る力があるのです。どうか広い世界に連れ出してあげてください」
「それで、本人はどこにいるのだ?」
「コンクリートの壁の中にいます。我々動物の中でそんな技術を持つ者は彼だけです。森の東のはずれの川のそばです」
「なるほど、ハナ子、福行くぞ!」と鷲太が言うと
「その四角いコンクリートは川の河口あたりにあります。どうか幸運を!」とエルフは言った。みんな心配そうにしていた。
  ハナ子と福と鷲太とウインは、コンクリートの四角い城壁を探しに森の東の方に向かいました。シダやカエデ、桜などが生い茂りムッと暑い感じがしました。みんな汗ばんでいて向日葵の花がたくさん咲いていた。鷲太を中心にハナ子と福、そして上空にウインが小さくまとまりゆっくり歩いた。
「ここだ!」
鷲太の首にかけていたグレートエッグは輝き出した。
 「子猿の宗太郎はいるかい?」と聞くと、四角い城壁の中から子猿が頭を出した。しかし、ガタガタと震えている。鷹のウインが思いついて人魚姫の旗、ライオンズフラッグを投げてやると子猿は少し落ち着き外をそれを手にすると少し喜んだようだった。
「宗太郎。君に用事がある」と宗太が言うとヒートは
「中にお入り、どうぞ」と言ってくれた。
ちゃんと扉はつけられていてしかも中に入ると大きな鏡まで立てかけられていた。テーブルがあり一本の菊が飾ってある。本棚や風呂までついていた。
「これ、君が全部作ったのかい?」と福が聞くとウインも
「やるねー」と笑った。
「オイラにこの旗くれるのかい?」と宗太郎は嬉しそうに言った。
「ああ、しかし君は僕たちと一緒に旅に出なければいけない。」
「え?」と宗太郎は驚いて言った。
「何故なら君は三つ目のグレートエッグを持っているのだからだ」
「え?グレートエッグ?」
「やっぱり、何も知らなかったか」とウインはあきれて言った。
「君の部屋に鏡の前に剣がたてかけてあるね。その剣の柄についているのが三つ目のグレートエッグなんだ。なんでこれを持っているんだ?」と鷲太が聞くと
「この剣は僕のじゃないんだ。ずっと寂しくて一人で川を見ていたころがあった。すると、この剣が流されてきたんだ。これを拾ったとたん、様々な知識が頭の中に流れてきて泥を練って風呂を作ったり、鏡をこさえて見たくなっただけだよ。でも、君達と行くのは怖いよ。だって君達は人間なのに僕は猿なんだもの」と宗太郎が言うと
「何を言っている。猿も立派な神様だ」と福が言うと
「ビリーブ ユア セルフ!!自分を信じてごらん」とハナ子は言った。
「その旗は人魚姫様のもの。さっきから翻っているじゃないか!。君に来て欲しいのだ。残る石の玉のあと一つ。もう行く先は決まっているんだ。
 アイジャン城。海神マリーン様の孫リュウサ様に会いに行きます」猿の宗太郎は旗を振った。
 すると、風が吹き森の草花がさわさわと別れ一本の道が出来た。エルフと言う名の水牛たちはみな集まって
「猿の宗太郎、いや、宗太郎様」と言って足元に座り畏まった。そしてみな静かにお辞儀した。
「お父ちゃん」猿の宗太郎は涙を流して別れを惜しんだ。
「お前は男の子だ。そんなに涙を簡単に流すものではない。また会える」とエルフは優しく言いました。宗太郎は頷き涙を拭いた。そして服の後ろを通り水牛の首にジャンプして
「お父ちゃん、いってきます」と言うとハナ子の手を握った。
「まあ!」そこには四葉のクローバーが生えていて宗太郎はそれを一本抜き
「よろしく、ハナ子」と目の前に出した。なんだかうれしそう。ハナ子はそれを受け取ると
「よろしく!」とハナ子も笑った。
「さあ、道があるうちに」と言ってエルフは誘導してくれた。三人と一羽と一匹は道を真っ直ぐに進んだ。宗太郎は鷲太に三つ目のグレイトエッグのついた剣を渡した。進んで行くうちにみんなは一つの事に気がついた。宗太郎が陽気に歌を歌いながら旗を振って跳び跳ねていく。思ったより、無邪気な宗太郎の姿をみれて喜んだ。一時間位あるくとまたバラのアーチがあった。向こう側には海がみえていた。
「多分違うな」と、鷲太が言うと
「多分な」と、福も言った。ハナ子は
「フラワー伯爵?」と、バラに向かって問いかけた。ポワンと円く煙りがでて
「ヤアヤア、君たちこんにちは!」と、言って
フラワー伯爵が登場した。
「全く、呑気なものね」と、ハナ子は言った。
「ここからどうやってアイジャン城にたどり着くの?」
「地図をご覧なさい」
「だってここは海でしょう?船はさっき置いてきてしまってないよ!」
「ハイハイ!海の下に道があるんです。」
「え?」
「海底の道?」みんな驚いた!
「昔、海賊たちは皆人魚姫の石を探すために、地中深く掘ったのです。玉は出はしませんでしたがその名残りの道は海底にあるのです。ただ四方八方に掘り進めた為に、迷路のようになっていて迷ったら多分出られません」
「え?私、自分のこころの中で迷子になるの?」と、ハナ子は言いました。
「これは、君の物語!メッセージはポストに」
「え?」と、福が聞くと
「このアーチのバラを数本持って行きなさい。一応地図と灯りを渡しておきましょう。すこし歩くと花のポストがあります。そこは暗闇のなかで灯のように光っています。そこに花と手紙を投函すると、つぎのポストに灯がともります。そして、次のポストにまた花と手紙を投函しなさい。もちろん手紙も、するとまた次のポストが輝きます。花を道しるべとして行きなさい。なぜならここはハナ子、君の心の中なのだから。名は体を表します。天には暗やみもあると知りなさい。宗太郎、暗やみの世界では形なき邪なものがいるかもしれない。その剣で気切り倒して行きなさい」と言うマーガレット伯爵は消えた。
「あー!ちょっと待ってー。城はどうなっているのよ」と、ハナ子は憤慨した。ウインは
「アーチをくぐろう、みんな」と、促して
「よし」と鷲太が言うとみんなで一斉にアーチをくぐった。そこは砂漠と言うよりも石場に近い所だった。遠く向こうが良く見えない。目の前には大きな穴があいていて海の上にあるようで波の音が聞こえた。子猿の宗太郎が震えだしたので、ハナ子は宗太郎の手を握ってやった。しかし、宗太郎はよわねをはかなかった。行き先は鷲太が一応ある地図をみた。しかし、中に入ると全く役に立たない地図と分かった。ほのかな風が旗をはためかせていた。
 海底のトンネルに入るとやはり薄暗かった。壁に手をおきながら三人と一羽と一匹は歩いた。光る貝がらが幾つか落ちていて、少し歩くとポストがあった。それは、街灯みたいなは光を放ち籠がついているようなものだった。そして、花と文を入れてみた。
 文はなにを書けばいいのかわからないので『感謝』と書いた。すると、ほんのりと光りは灯った。一同は安心した。そして、いくつかのポストに『勇気』とか『愛』とか『仁』と言う文を入れると出口の光が見えてきた。その坂道を抜けるとそとは大きな光溢れる街になっていた。お日様の光に満ちていた。
 メインストリートはアイジャン城への一本道になっていて今日は舞踏会があるらしい。リュウト王子様は出られるのだろうか?鷹のウインは
「城の様子を感じる見てくる」と、言って飛んで行った。その間舞踏会に着て行く服を見つけに服屋に入った。
「お~!ユー達はお客様?なにをお探しでしょうか?」
「舞踏会に着て行く服を見つけに来たの」
「ああ、それならお任せください。我が国ではかしこまった服装での舞踏会は、しないのです。王様が庶民誰でも楽しめるようにとね。でも、服が少し汚れているようです。少しだけカジュアルにいたしますか?」
「ハイ、でも、三人で2万円しかないです」
「え?そんなに?お釣りがでますよ」と、店員さんは笑いました。
 そして、ハナ子は赤いスカートで花柄のチュニック、福は黒いズボンにシマのシャツ、鷲太は長めのカーデに黒のスキニーパンツに着替えた。
「ありがとう、たすかったわ!」と、お礼を言い皆は店を後にした。
   大黒城は、国の国旗の代わりに鯉のぼりがはためいていた。そこに、鷹のウインが帰ってきた。
「どうも、立食パーティーがあるみたいだよ。ダンスを躍るらしい。王子様は元気そうだ。それに、シャツにズボン、蝶ネクタイだけで過ごしていたよ。でも、やはり肩にコブがあるみたいだよ」猿の宗太郎は
「この旗とこの剣を使えないかな?」と、聞いた。
「まあ、石の玉が入っているから剣の方で王子様の肩の石と関わると思うよ」
「リュウト様が気難しい人だったらどうしよう」と、福がいうと
「みた感じそうには見えなかったよ」と、ウインは言った。
「とりあえず、喉だけ潤そう」そして、みんなは公園に行きさっきの自動販売機で飲み物を買った。炭酸ジュースやアイスティーを楽しんで飲んだ。
  公園には竜の噴水がど真ん中にあった。
ハナ子は
「こういうのもあり得る!!」と、嬉しそうに言った。そして、
「よし、ではいざ城へ!なにがあるのかわからない。きちんと、準備して行こう」と、鷲太は言った。
しかし、結構町の人は集まっていた。どうも城の庭で立食パーティーをやるらしい。オーバーオールや麦わら帽子を被る人もいて、一同は安心した。
「なんだか急に眠くなった!」と言って鷹のウインは外にいると言った。
「ok!わかったよ」
「宗太郎。君はなかなか賢いから、何かあったら読んで欲しい」
「わかった」ハナ子と福と鷲太は3人で城の庭に向かった。
「トレビアン。ようこそ、我が城へ。お嬢さん。いや、プリンセス」
「え?」3人は不審におもった。何故この門番は私達が来るのを知っていたかのように話すのだ。
「んー。プリンセス。我が王子さまもグレートエッグをおもちなのです。それは人魚姫と同じ命といって良い。本日の祭りで4つ揃うことは東の森の占い師が占っておられまして…。どうぞこちらへ」すると、三人の持つグレートエッグが光だしました。
「リュウト王子さま。悲願の石の玉の摘出なのです。彼はあの石のお陰で随分苦労なさって…。人間扱いされなかったこともあります。どうか王子様の願いを叶えてあげて下さい」門番は案内しながらペコリとお辞儀をした。
「 …。そうしたいのはやまやまなのですが私達もその方法をしらないのです。」
「実は、我が国には、人魚姫の蓄音器というものがあるのです」
「え?」
「でも、我々にはなにが録音されているのかわかりません。それは蓄音器というよりオルゴール。もしかしたら手がかりになるかもしれません」
  中庭を通りすぎてリュウト王子様のところへむかう間にやはり、噴水が三つもあり、すべてに菊の花がシンボルマークとしてついていました。そして、鯉が爽やかにおよぎお日様の光できらめいていました。
  「ここが王子様のお部屋です」と黄色い扉につきました。三人はとても緊張しました。
「王様とお妃様もいらっしゃいます」と、いってガチャっと扉を開けると硝子のテーブルの上に花がたくさん飾られていて、明るい光りが点っています。リュウト王子様は髪が肩まであり、大きな絵が飾られていた。一つは山、もう一つは花の絵だった。王子様は思っていたより元気だった。嬉しそうにニコニコしていた。
  しかし、肩には少し気になるコブが出来ていてスカーフが巻かれていた。
「いらっしゃい」と、リュウト王子様はいった。王様と、お妃様らしき人が急にかしこまった。
「賢者様方、お待ち申し上げておりました」
「え?とんでもない。賢者などではありません。頭をあげて下さい」と、いうと
「僕の名前はリュウト」と、王子様は言った。
「存じ上げております」と、鷲太はかしこまった。すると、ポンっと音がしてマーガレット伯爵が花の中に現れた。
「ようこそ、最終目的地へ。よくぞご無事で、プリンセス」
「まあ、茶化しているの?」
「いいえ、アドバイスです。あなたは耳がいい。神様の音が聞こえるという」
「車掌さんにそういわれたわ!」
「では、人形姫のオルゴールを聞いてご覧なさい。きっとあなたなら理解できるはずだ」と、言った

「そうなのか?」と、鷲太がいうと
「そういえばそうだった」と、福は言った。
「ああ、これなのかい?」と、黒い箱の様なものを持ってきてリュウト王子様がきた。ネジとツバメの紋章がついている。
「このネジを回せばいいのか?」そして、ネジはギーッと回った。すると音が流れてきた。女の人の声らしい。人魚姫のこえなのかもしれない。しかし、なにを言っているのかハナ子以外のものにはわからなかった。
「私は石になるけれど平和がおとずれる時、石に集う賢者達がいると信じている。」と、ハナ子は言った。
「すごい!」と、宗太郎はパチンと指を鳴らした。
「私の身体を持っているものが生まれているはずだ。ん、あれ?聞き取れない。剣でさしなさい。すると、その剣につく玉にみな集まり我が分身を甦らせるだろう。しかし、今度は人間に生まれたい」と、ハナ子は言った。
「多分、分身と言うのは王子様のことだ」
「王子様なんて、リュウトとよんでよ」と、リュウト様は笑った。その時開いていた窓から鷹のウィングが入ってきた。そして、剣を机の上にほおった。
「大切な忘れ物だろ?」
「ああ、そうか。ありがとう。ウイン!」と、みんな言った。
「すると、剣で刺すというのはどこを?」
「さっき、雑音で聞こえなかった

「この、首のこぶのところではないか?」リュウト王子様はぶるぶると、震えはじめた。
「頸動脈のあるところだろ?死んだらシャレにならないぞ」
  すると、突然総ての石の玉が光り始めた。
「フロックだ。ライオンズフロックでその剣のさきを包んで首のこぶにソッと触れなさい」
「ユー!怖いぜ。大丈夫なのか?」と、ウインは言った。その時猿の宗太郎がはいってきて、
「その役、オイラが引き受けよう」と、言った。
「大丈夫!たぶん、大丈夫だ。」そして、宗太郎は剣を持つと鞘から抜いた。他の石の玉が引寄せられて剣に刺さった剣は、三つの石の玉を抱え重そうだ。
  リュウト王子様はベットに横になたった。
「がんばれ」マーガレット伯爵は言った
「1、2、3」というとライオンズフロッグに包まれた剣が肩のコブに触れた。すると、剣は勝手にブスブスとその肩にめり込んでいる最後の玉の中に吸い込まれる様に入っていった。
  リュウト王子様は少し苦しそうにしていた。4つの玉はリュウト王子様の胸で集まりました。そして、4つのいしは肩や胸から跡形もなく消えたけれど額に石の名残が残りました。リュウト王子様はとしのわりに小柄でしたが、みるみると一回り大きな年齢通りの青年になりました。そして、にっこりとわらいました。
  しゃべると女性と男性の中間のようなこえでした。
「ヤッホー」と、みんなは喜びました。
「お父様、お母様!」
「リュウト」と、親子三人で抱き合うと
「これからは、これを国旗にしませんか?」と、ライオンズフロックを渡しました。
「ああ、それはいい!これからはリュウト、お前が海神リュウトとなって私の次の代を継ぎなさい」と、マリーン王は言いました。リュウト王子様は少し考えて
「わかりました」と、応えました。
「わー。リュウト覚まカッコいい」と、皆喜びました。
  そして、花火が上がりました。皆安堵の表情で夜の舞踏会に参加しました。魚のふらいや貝の焼いたものピザやうどんやスイーツも出ました。40分位過ごすとダンスパーティーが始まりました。福はハナ子に言いました。
「そろそろ帰ろう。でなければこころの中のせかいから出られなくなってしまう」
「そうね」と、言ってタカのウインを呼びました。ウインは頷いてバルーンをよういした。そっといなくなる。二人は手をつないだ。鷲太と宗太郎とリュウトには後ろから挨拶をした。
  トロッコ列車までバルーンは飛んで着くとしぼんだ。その、行き先は寅なところ。車掌さんに、寅のところまでと言うと、
「ヨシキタ、プリンセス!」と言って出発した。手ぶらで帰るのも何なんでハナを一輪つんでゆきました。アネモネの可愛い花でした。マーガレット伯爵が
「ありがとう。プリンセス」と、いっているかのようでした。
  気がつくと夜の公園にいました。
  「寅ちゃん」
「ようやく帰ったのか。どうだった?心の中は」
「ええ、楽しかったわ。大冒険だった。」
「よかったね」と、言って夜空の下で笑いあった。夜空はみかんいろに輝いて三日月が綺麗だった。

終わり
(この日物語はフィクションです。人、宗教、思想、また企業、団体を否定するものではありません、長く読んで頂きありがとうございました。)

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