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歌舞伎・文楽の解説、という仕事。(1)

たまに「歌舞伎の翻訳されてるんですよね」と言われますが、私がやっているのは「歌舞伎・文楽の解説」。
でも、池上彰さんのように壇上に立ってする解説ではないのです。
今日は「イヤホンガイドの解説者」ってどんな仕事か。私の視点で書いてみます。

娯楽から、伝統に化けた歌舞伎。

歌舞伎は江戸時代の庶民の娯楽。
芝居小屋へ足を運んで楽しむ非日常性はあれども、内容はざっくり言うと、世話物は当時のトレンディドラマ。時代物は当時の大河ドラマ。舞踊はミュージックステーション。
夕飯時につけられたテレビのように、時に幕の内弁当を食べたり、お酒を飲んだりしながら気楽に楽しむ芸能でした。

けれども、明治の文明開花で西欧の演劇が入ってくると、歌舞伎は時代遅れで低俗なものと見なされがちに。

そこで歌舞伎の芸術性を高めようと、当時すでに古典芸能となって格式の高かった能楽を取り入れてみたり、面白さ重視のエンターテイメント性を排除して、歴史的事実に乗っ取った真面目な表現にするなど、いろいろな試みがなされました。
でも、庶民が好きなのは江戸時代の荒唐無稽な歌舞伎。こうして庶民の「歌舞伎ばなれ」が進んで行きました。

というような経緯があって、いろいろあるけれど、
すみません。詳しく軽やかに語ることが今の私には難しいので、ここらへんでゴマカシまして(笑)

そんな感じで、歌舞伎は庶民の娯楽から、
ちょっとハイソな伝統芸能になりました。(どどーん!)

イヤホンガイドの役目

Z世代が黒電話を前に、それが電話だとわかったとしてもかけることができないように、歌舞伎に描かれる江戸時代の言葉や風習、風俗、考え方は、直感的に今の私たちが理解することはなかなかできません。

そこを下調べでカバーするのも一興ですし、Don't think,feel で楽しむのも良いものです。だって、
伝統芸能もエンターテイメントですから。

でも、江戸時代の前提やお芝居の内容を知らなくても、劇場で観劇体験をしながら、そのままより深く理解できる方法があってもいいんじゃないか。
そんなふうに考えたかどうかは私の予想ですが、概ねその心で、イヤホンガイドは作られたのでしょう。

もちろん演じている役者さんたちは、100%聴覚や神経を舞台に集中して観て欲しい。解説なんてなくたって、芸は味わえる。味わって欲しい。
と思うはず。

だけど、現代人は何かと頭でっかち。
ちょっと興味を持っても「伝統芸能はムズカシイ」と思考が働き足が遠のいてしまうこともある。
あるいは「観てわからないのはハズカシイ」と思うこともある。
「知識がないのに観に行ってもシカタナイ」とも思うかも。
本当はそんなこと、どうでもよく楽しんでもらえるはずなのですが。思考たちによって、せっかくの観劇が楽しくなくなるのはとても残念なこと。

その歌舞伎体験のハードルを低くするのが、
イヤホンガイドの第一の役目。だと、私は思っています。

あ、案外長くなりそう。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
続きはまた明日。

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