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ずっと大切にしたいもの。直すという選択肢

カシミアのマフラーに綻びをみつけて、専門の職人さんにお直しをお願いしました。

ざっくりな網目も、そもそもマフラーをするようなカジュアルなスタイルは滅多にしない私ですが、このマフラーは大切なもの。

100歳を超えて亡くなった祖父にプレゼントしたものです。
88歳の米寿のお祝いの時に、「長いもの」をプレゼントするといいとのことから柔らかくて軽いこのマフラーを選びました。

戦争に行った祖父は物を大切にする人で、寝室のクローゼットにはブラシのかかったスーツ、クリーニングに出されたシャツ、そして引き出しには新しいワイシャツや靴下などがきれいにならべてしまってありました。

子供や孫からプレゼントされても、今着ているものが痛むまでは新しいものを大事にとっておく、そんな人でした。
自身もだんだんと出かける機会が減り、余計に出番がなかったのかもしれません。

祖父が亡くなった日、実はその数時間前に私、祖父に会えているんです。

コロナになった年、緊急事態宣言も出ていて県外への移動は控えるように、そんなタイミングでした。
ずっと自宅で祖母と生活し、叔母が面倒をみてくれていてこのまま自宅で永眠するなだと思っていました。
コロナで飛行機に乗れなくなり会えなくてさみしいと思っていたある時、祖父は呼吸困難となり慌てた家族はかかりつけのお医者様の指示に従い、救急車を手配。
そのまま祖父は入院となり、面会不可となってしまいました。

そんな祖父の容態を聞き、娘の学校もオンライン授業になっていたこともあり、東京なんかから帰ってこないでとの親戚の声も聞かずに私は娘を連れて地元の福岡に飛びました。
1週間ほど実家にて自宅待機、その間に病院の担当医の先生と電話で容態を聞き、お願いごとをしました。
病院まで行くので、スマホを病室に運んで頂きビデオ通話をさせて頂けないか、と。
ドクターは快諾して下さり、看護師さんがスマホを受け取ってくれました。
でも、小さなスマホの画面に耳も遠く、衰弱した祖父がどこまで分かってくれたかとどうか。
でも話せて良かったね、顔を見れて良かったね、と家族で話していると、ドクターが診察室に私たちを招き入れてくれ、祖父の容態を説明してくれました。
そしてこう言ってくださったのです。

「直接お顔を見ていかれますか?」

本当は、本当はダメなんだろうけど、ドクターが思いを汲み取ってくださったのだと思います。
消毒をし、誰もいない階段を登り、祖父がいる個室に案内してもらいました。

祖父はすぐに私たちに気づき、弱々しいけど笑ってくれたと思います。
もう言葉もでなくなっていたけれど、手をパタパタと振ってくれました。

その後実家に帰り、しばらくして祖父が亡くなったとの連絡を受けました。
そのまま祖父母の家に舞い戻り、それから慌ただしい時間を過ごした後、私と娘はひとりぼっちになってしまった腰の曲がった祖母と3日間一緒に過ごしました。
祖父の介護に疲れていた叔母や私の両親に少しゆっくりしてもらうために。
祖母と一緒にゆったりとした時間を過ごしました。
一通りのことはできるけど、全ての動きがゆっくり、ゆったり。
弔問に来て下さるお客様も多かったので、喪服に着替える祖母を手伝ったり、お茶を出して祖父との思い出話を一緒に聞いたり。
夕方にはご近所をお散歩したり、一緒にお風呂に入って身体を洗ってあげたり。
何度も何度も繰り返す、祖父との思い出話や私の小さな頃の話を聞いたり
それはそれは、ゆったりとした優しい時間でした。

そうそう。
先ほど祖父のクローゼットの話をしましたが、なんで私が中身を知っているかというと。
祖父が浴衣で病院から戻り、旅立ちのための準備の着替えや薄化粧をする時に叔母から頼まれたんです。
寝室に一式準備しているからお渡しして、と。
でも置いてあったのはこれまで着ていたシャツや靴下。
叔母もずっと忙しく大変で、そこまで気もまわらなかったのでしょうね。
それで私がクローゼットを開けさせてもらい、新しいシャツなどをおろした、というわけです。
ついでにより祖父に似合いそうなネクタイを選び、(叔母が選んでいたネクタイにはこだわりがなかったことを確認の上)、お渡しさせていただきました。

しばらく経って父や叔母が遺品整理をすると聞いた時、このマフラーが絶対にどこかにしまってあるからそれを譲り受けたいとお願いしました。

物を大事にする祖父だったから、おそらく使わなかったんじゃないかな。
きれいな状態で残してありました。
私もしばらくクローゼットに置いていましたが、ある時ふと使ってみようかなと思った時に、綻びをみつけました。
無理に使う必要もないから、どうしようかなとも思ったのですが、これからもたまに手にとるだろうから直そうと思ったのです。

そんなマフラーがきれいになって手元に戻ってきました。
丁寧な対応をしてくれ、そして職人さんの技術に驚きました。

祖父にプレゼントしたマフラーではありますが、色は私のワードローブにぴったり。
これから少しずつ使っていきたいと思います。

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