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【傍にいてくれる君にありがとう】

皆様こんにちは枝浬菰です。
note限定短編BL小説をUPすることにしました!
ということでまずは第一作目の第一話
※無断転載禁止

❁あらすじ

高校に通う対馬伊月(つしまいつき)は少し変わっていた。
笑わない、いつも怒った顔をしていた。
そんなこともありクラスや先生すら彼に話しかけることは滅多になかった。
そんなある日転校生がきた、2年の夏休み間近という微妙な時期に彼の名は不破隆(ふわたかし)という、対馬にとっては興味ない人だから声をかけられても無視……無視をしていたが不意なことで対馬の本性を暴かれてしまう……。

なお話です、途中から課金にしてます!

本編

 ジリリリリっと音が聞こえた。
この音は隣の部屋から聞こえる。きっと朝なのだろう。そう朝の7:30だ。
起きないと、少し脇腹が痛む。昨日バイトの帰りに自転車から落ちたせいだろう。
 布団から起き上がり学校に行く準備をした。学校に必要なもの全部持って俺は部屋から出た。
「おはようございます」と小さく言い、そのまま玄関に足を向けた。
 靴をはいて家を出る。フードを深くかぶり世界をシャットダウンする、これでもし事故にあってもきっと俺のせいになるだろう。
それでもいい、俺は早くこの世界からいなくなりたい。

 自転車に乗りギーコギーコと坂道を上る。
口からは「はぁ……はぁ……」と吐息がもれる。慣れない坂道に苦戦して日差しが強い7月は俺が一番嫌いな季節だ。
 登り切り少し休憩……。
「しんどっ」でももしこれで熱中症になれば俺はあの世に行けるのかな、いやここから飛び降りれば誰も俺のことを気にしないのかな。
 目の前に広がるのは海だった。

 大和高校は丘の上にある、しかも反対側は平地なのに俺が今登っている側は坂道オンリーという絶望的な試練で、わざわざ車や電車を使って平地を目指す者も少なくない。

 どうにかたどり着き自転車を駐輪所に止めた。
「よしっ」カバンを持ちクラスにっとその前に購買へと足を向けた。
「あら、おはよう」
「おはようございます」
購買のおばちゃんが声をかけてきたので小さい声で挨拶をした。
「あらあら、あなたまたそんな暑い格好して熱中症になっちゃうわよ」
その問いにこくりと頷き俺はおばちゃんからコロッケパンを買った。

8:20 HRの時間まで後少しだ、水道の近くで俺はパンを食べた。

クラスに入ってもフードは被ったままで先生が教室に入ってきてそれでやっとフードを脱いだ。

「えーでは転校生を紹介するぞ」
「うそ、こんな時期に?」

 ざわざわと教室はざわめいた。
俺は窓の外を眺める。

「入ってこい」
「ちーっす」と言いながら入ってきた男子生徒は不破隆というらしい。
興味ない。

「んじゃぁ不破お前よかったな、一番後ろの席だ」
「まじっすか、やったー」とズンズンこちらに歩いてきた気がした。

「よろっ」
沈黙を通す。

「あー対馬は基本喋らないから話すなら俺と話してよ」と隣の男子生徒は言った。

「あーわかった」

HRが終われば俺はフードを被り机に突っ伏す。
転校生の周りに集まる習慣が嫌いだ。
たかが人間じゃないか。

「なぁなぁ、東京から来たってまじ?」
「よくこんな田舎にきたもんだな」

「えー親の都合ってやつだよ」

うるさい。と言えればいいけど俺にそんな度胸はない。

なんなら早く1時間目始まってくれ。

ちょうどチャイムがなりちったぽい。
起き上がり準備をしに立ち上がり後ろのロッカーへと向かおうとすると通せんぼされた。

「なぁなぁ、お前喋れないのか?」
……。
面倒くさくて迂回した。
「徹底してるな」
「あー無理無理あいつに話しかけても無視されるか睨まれるだけだから」
「睨まれる……今冷たい目で見られたんだけど」

「んじゃぁ不破、お前嫌われたな」
「まじかよ……転校1日目前の席の人に嫌われるってか?」

「まぁ対馬以外はみんな優しいしこんな田舎だから気を遣わなくていいよ」
「まじか、了解」

転校生が溶け込むのは早かった。
むしろすでに一軍メンバーにいた。
どーでもいいけど。

現国の授業で文章の読みが始まった。
今日はまわってくるがきっと俺は当たらない、読んでも小さすぎて先生もなにも言わなくなったし。
「じゃぁ次不破」
「え? 前から順にって次は対馬じゃねぇの?」
「対馬は声でないから不破、さっさと読め」
「ふわぁーい」

授業が終わりすかさず俺の前に立ちはだかった。
目線すら合わせない、下を向き逃げようとすると
腰を抱かれ顔が目と鼻の先に来た。

!?

さすがの行動にクラス全員の的になる。
「声出せない理由ってさ、病気とかそういうの?」
「……」
てか、近い、こいつなんなの、バカなの!!?

掴まれた腰の手を外そうと必死になるも
「力弱っ」
「……」
「てかお前目めっちゃ綺麗だなぁ」
!?
 昔、言われたことがあること、今はもういない父さんの言葉だ。
俺は自然と流れてしまった涙が頬を伝い目の前にいる不破を驚かせていた。

「えっ!? ちょっ」
「なに? なにごと??」

「どいて」と小声でいい彼の拘束から脱出できた。
人前で泣くとか小学生かよ……。

顔が熱い、最悪……。

本鈴が鳴っても教室に戻れなかった。

空き教室で膝を抱えて俺は丸くなった。

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