大人傘を持ち歩けるまで

雨模様だ。
出勤時には、玄関から傘を持って家をでた。
いつもの傘。
コンビニで買った、世の中に100億本くらいあるだろう透明傘。
そのうちの9本をわたしは所有している。

そして、忘れ物センターには100万本くらいあるであろう透明傘。
そのうちの5本くらいは、私が所有していたものだろう。

透明傘が大好きで、立ち寄ったコンビニで必ず購入し、各コンビニの透明傘の違いがわかるレベルのコレクターとかじゃないし、そうなりたいとも思ってない。
別に透明傘が好きな訳ではない。
だがしかし、わが家には1人じゃ使いきれない数の透明傘がある。

外出中に雨が降ったり、なんなら家を出て初めて雨が降ってることに気づいたりする。
持ち前のルーズさで、時間に余裕なんてあるはずもなく、家に取りに戻る時間もない。
一番凹むのは家を出た途端に雨が降り出す時だ。

ああ、まただ。

まじかぁ。。

ショーシャンクにも出てないので、流石にずぶ濡れになる訳にもいかず、仕方なくコンビニで傘を買う。
昔より地味に値上げしてるよなぁ〜とか思いながら。

もしかしたら私は雨女なのかもしれないと、うっすら思ったりもする。
いや、きっと偶然だ。
そう思いたい。

なんの個性もない透明傘を持って街の中を歩いていると、当たり前だが世の中には色んな傘を持った人が居るなぁと思う。
私と同じ透明傘もいれば、折りたたみ傘、花柄の傘、チェック柄の傘・・
いつも、透明傘以外の傘を持って歩いている人を見ると、あの人は人生上級者なんだなと思ってしまう。(勝手に)

実は、私も透明傘以外の傘を持っているのだ。
もう10年以上前になるが、ちゃんとした傘を買おうと、友人と一緒に購入したのだ。
確か2500円。
コンビニで買う傘4〜5本分といったところか。
当時は、傘に2500円も払うなんて、私も大人になったもんだと思った。
友人と色違いの、小花柄でハンドルが細く上品なデザインの傘だ。
広げた感じも可愛く、雨の日でもウキウキしそうな可愛さで、かなり気に入っていた。
だからこそ、2500円も惜しくなかった。

だが、いざ雨の日になるとその傘を持って行くことに躊躇する。
そう。
気に入っているからこそ、失くしたくない気持ちが強すぎて、容易に持ち歩けないのだ。
今までの、自分的透明傘遍歴を思い返すと、とてもじゃないが、お気に入りの大人傘を持って出る気にならなかった。
失くした時のダメージが大きすぎる。
ゲームでいうと、HPインジケータが緑から赤に変わるレベル。
一撃で。
ファイティングポーズをとっているものの、ヨロヨロだ。

すぐに傘を失くすので、(だからコンビニで傘を買う羽目になるのだけれど)完全にビビっている。
お気に入り傘は、未だにほぼ新品の状態で玄関に彩りを持たせてくれている。

なので、当たり前のように大人傘をさしている人を見ると、まず、「ちゃんと家を出る前に天気予報見て自分の傘を持ってきました感」そして、「絶対にこのお気に入り(か、どうかは知らないけど)の傘を失くしません感」が溢れ出て、したたり落ちている。
そう！雨だけに！

圧倒される。
天気とかちゃんと見ずに時間に追われて慌てて家を飛び出して、焦ってコンビニで買いました！の透明傘を持っている私は、愚者だ。さらに、大人傘を持ち歩く勇気がないので、9本もある透明傘を取っ替え引っ替え使っている私はヘタレだ。
大人傘派の、時間的・精神的余裕と確固たる自信を目の前に、それこそHPのインジケータが黄色になるくらいにはダメージを食らう。

そんな私も、いつかあのお気に入りの大人傘を自信満々に持ち歩ける日が来ると信じている。
とりあえず、家にある透明傘をどうにかしてから、ひとつ大人の階段を上がってみようと思っている。
あのお気に入り傘が劣化しない間に、階段を上がれるかは謎だ。

ま、とりあえず当面は日傘が出ずっぱりなので、いつになることやら。。なのだけれど。