見出し画像

森林・里山を活かすことをテーマに起業した理由 〜9年間の模索の経て見つけたミッション〜

ミッションとその原点

「なぜ会社を辞めて起業することを決意出来たのか?」と聞かれることが多いのですが、一言でいうと、「このテーマなら自分は逃げずにやり続けられると確信できるもの」、つまり自分の”ミッション”を見つけられたことかなと思います。

それは何かというと、
「森林・里山資源を活かしたものづくりを通じて、自然の恵みを感じられ、その継承に関わる人を増やしていくこと」
です。

環境保全に関心を持ってアクションを起こし始めたのが20歳の時で、かれこれ9年間この分野で仕事や研究、ボランティアなどをしてきたのですが、なぜ上記がミッションだと思うようになったか、少しお話ししたいと思います。

森林・里山の現状

日本の森林率(国土面積に占める森林面積)をご存知でしょうか。

日本の国土面積は3,780万ha、森林面積は2,505万haで、国土の約3分の2(66%)が森林となっています。世界の森林率の平均は約31%なので、日本は世界有数の森林大国であるといえます。
(参考)森林・林業学習館HP 「日本の森林面積と森林率」

また、日本には古くから人の営みによって維持されてきた「里山」と呼ばれる自然があります。森林をはじめ、田畑、川など身近な自然資源が生活の営みのなかで活用され、里山の景観が維持されて来た歴史があります。

私自身も日本と海外を行き来するなかで、日本の森林、そして里山の魅力や可能性を感じ、これまでに自治体の環境分野の計画策定や事業支援、そしてライフワークとしても里山整備活動、木工活動、ボランティア育成、活動する人たちの交流会などに携わってきました。

しかし、近年では人口減少や経済・ライフスタイルの変化による、森林や里山の管理放棄、林業・木材産業の低迷が課題となっています。
上記の仕事やライフワークで、現場で奮闘する多くの方々と関わらせていただく中で、産業としての林業・木材産業、市民活動としての里山保全いずれも、今後の行く末を心配する多くの人の声を聞いてきました。
森林や里山への関心が低くなることで起こる問題として、一般の人の目が届かないところで不適切な管理や開発が行われ、大雨などによる土砂災害が起きやすくなるなど、実は関わりがないと思っていても、私たちの日常への影響は決して0でありません。

生活をとりまくプロダクトの背景

一方で、私たちの生活をとりまく様々なプロダクト(食品、衣類、住居、化粧品など)は、多くの自然資源や労働力によって成り立っています。特に都市部で暮らしているとその事実は見えにくいですが、このことについて考えずにはいられない出来事が大学時代にありました。

マレーシアのボルネオ島にボランティアで訪れた際に、熱帯雨林に生息するオランウータンなど多種多様な生き物、そしてその豊かな自然と地域の伝統的な文化・生活様式を継承しようとする地元の人たちに大きな感銘を受けました。

しかし、熱帯雨林を切り開かれて作られた広大なアブラヤシのプランテーション(農園)を目の当たりにし、さらにアブラヤシから取れるパーム油が日本で日頃買っているお菓子・加工食品、化粧品、日用品などに幅広く使われていることを知り、「環境保全と経済発展はどのように両立できるのか?」という大きな問いに対して、それ以降模索する年月が続きました。大学卒業後は開発途上国の組織に入って現地の課題解決のために活動することを決めて、青年海外協力隊(現:JICA海外協力隊)としてカンボジアで2年間、急速に経済発展が進む首都のプノンペンで、環境教育活動を行ってきました。

9年間模索し続けて辿り着いたこと

これまで環境分野で、対象となる国・地域は違えど、行政計画策定や事業化支援、学術研究、環境教育、人材育成などさまざまなアプローチを行ってきました。しかし、政策や教育でメッセージを届けること、多くの人が行動様式を変えるほどのインパクトを生み出すことの難しさをずっと感じ続けてきました。
ただ、自分自身が実際に里山整備や木工活動など、現場で、手触り感のある活動をずっとやっていて改めて思ったのは、自然の価値は、データや数値、言語化できる「情報」として届けるだけでなく、五感で感じとれるもの・実際の「プロダクト」として届けていくことで、国や地域、世代を超えて多くの人に受け取ってもらう、実感してもらうことができるのではないか、ということでした。

忙しい日常生活の中で、自然の恵み(例えば木の香りなど)に癒されたり、元気をもらったりするひと時が増えれば、それ自体は小さなことでも、プロダクトの背景にある森林や里山に目を向けるきっかけになるかもしれない。

ものやサービスが溢れる時代だけど、身近な自然資源や生産者が見える、その素晴らしさや価値に気づける商品を多くの人に届けることには、絶対に意味がある、そう思えたのです。

まず日本の森林・里山から、魅力的なプロダクトの開発・販売を行っていく。事業としてある程度育てていくことができたら、商品を通じて森林・里山に関心を持った人が、里山の維持管理に関われる、直接・間接的に応援できるような、日常生活と里山が交わる新たなかたちを作っていきたい。

そしていずれは、カンボジアをはじめとした開発途上国でも、自然資源、生産者の素晴らしさや価値が分かる商品の生産拠点を作って、アジアを代表するようなブランドを育てていきたいと思います。

…と、恥ずかしながら野望(妄想?)をここぞとばかり書かせていただきました。

長期的なビジョン実現に向けて、短期的な小目標に分けて一歩一歩進んでいるところですが、日々のドタバタぶりや奮闘をこれからお伝えしていきたいと思います。

▼森林・里山の新たな価値を作り届けるライフスタイルブランドPhnom Toi(プノントイ) のサイトはこちら


この記事が参加している募集

仕事について話そう

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは里山のフィールドワーク⛰️に使わせていただきます!