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「風の船」

悲しみの祖国から10月に向かって 私の全てが羽ばたいていった
あなたは訪れていた 傷ついたヤマウズラ*の群れの中から
あなたの目の中に 悲しみの夜風の灰
私の胸に 子供の頃のにきびの匂い それは誰も癒すことのできなかったもの
ある人が突然立ち上がり 眼鏡を壊し 顔をこすった
通りの裏に隠された地平線は 無限に広がる平野から呼び 叫んだ
そして その街を異言語で紡ぎ 私の肋骨を突き刺そうとした

愛の宗教たる貧困は 停止線の前で私たちの眉とまつげを切り離した
あなたは訪れていた 誰もが誰のことも愛していないように 私があなたを愛するほどには誰も 誰一人として
私は感情を発酵させた 吊るされたシェマモック**のような愛は悲しいと あなたに告げるその感情を
アンカラの通りはあなたのエルジンジャンで 私の手のひらはあなたの口づけで 満たされていた
私たちは夜のアレヴィー 時間の鶴: 太陽の下では不安がなかった
あなたは伸びやかなクルド語で歌を歌う 髪の周りではスーフィーの舞

深さ 水 白昼夢 私の口ひげの代わりに麻の記憶
彼らは何と言うのだろう 私の汗に濡れたあなたの2つの胸と共にある 私の若さを思い口を閉ざすのだろう
カフェや公園を目指して出かけ その部屋が私のペンによって光るのを見て
灰色の狼の矢の前に潜んでいた私が いかに勇敢な死者であったかを見て 
突っ伏して寝ている時のいびき 美しい大通り: 夜が訪れるまでに排除された古い封建主義
ある夏と共にある過ち: 愛は私にとって生だった しかしあなたのそばではそれは死だった

私が今何をしようと 引き出しは壊れた棚には収まらない 唇の上には蒸気を帯びたあなたの肌
私がどこへ向かおうと 私の前を流れ行く雲を見て夜のことを思って そして言って ”<別離>とはなんと長い言葉か” と
”私は様々なことで満たされていた 私は多くを知り そして夢から覚め 凍りついている” と
窮屈なオーケストラの中で時代遅れの怒りを感じ そこから外れたバイオリン
しかし ああ 私は純粋な心よりも善き「服」を持たない 私の傷も私自身に話しかけている
私の名を聞いて 愛する人たちが乙女の内腿と共に時間を奪うとき

私の心は私の心にとって重荷で あなたの言葉が眠っていたとき 私がどれほど男らしかったかをを知って
あなたはあらゆる窓から私を見つめていた 私は傷のことを思い出していた 誰の胸の中でなのかはわからないけれど
私は倒れた -傷ついた鳥の影を痛めつけないで-  私は時のかどに立つ異邦人だと自覚した
私は流れゆく夜でも燃える薔薇でもなく 可能性の懐から突き放された
取っ手の壊れた水差しから夜のこだまを放っていた ガタンゴトンという列車に続く繊細な歌
抑制しようにもできなかった人のように 私は高慢だった ああ 別離は私にどれほどのことを与えただろう

現代のスーフィーの足跡を辿って私は見ている 彼女が未熟な私の若さで満ちている様を
暗い家々の鶴から 凍りついたへりから 私はあなたのそばかすまでやって来る
愛する人よ あなたは知らない 古い叙事詩に綴られた言葉が あなたの手の中でどのように問うていたのかを知らない
はるか彼方 谷の風が私の額で戯れていた 弧を描く地平線の蜃気楼が唸っていた
殺された友人たちは私のそばにいた ああ それ以来クルドは妬みまみれの世紀に呪われた
さあ言って あなたの唇から流れないものは何だったのか 生き残ったあと私は愛を持つべきではなかったのか

うわの空 怯え 傷ついた心 閉じられた街の灰色の通りで 私が何者なのかを私は知らない
あなたが私に与えなかったものは小鳥の心の中に残っている それは冷たい心と水車の水
私は未熟で 私は自分自身の敵で 滴る血が物語る自分自身の足跡を辿っている
私が夢の中で夢を見る時 彼女は過ぎ去ったいくつもの夜からある夜を取り出す
私につきまとい彼女は過去を掘り返す 自由で制御の効かない馬のように
私は我が家の寂寥 私自身の物語の語り部 それはあなたがどこかに置き忘れてきたもの

降伏の歴史の書かれた葉が 季節のはじめに散り行くとき
立ち上がりカフェに飛び込んで 明るい煙の中に見える過去の私
試された悲しみ ありふれた嘆き 鈍いカミソリで剥がされた顔
カビと奇妙な彫像から残されたもの: すりつぶされる悲しみの前 どんな名前も存在しない
アンカラは私の街ではなかった 敗北するたび私は革命の三原則へと立ち返る
より大きな困難へ続け 寛ぎに浸るな さあ行け

*ヤマウズラ:クルドの「国鳥」
**シェマモック:芳香のために使われる小さなスイカ

- "Keştîya Bayê", Selîm Temo

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