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ひらいて

私は滅多に映画館に映画を観に行かないし、テレビやAmazon primeでも滅多に観ない。

近年映画館で観た作品は「カランコエの花」と「君の名は。」。どちらも、終映間近。



おそらく、映画を観に行くという文化がなかったこと、テレビや舞台が好きなこと、本で勝手に想像するほうが好きだと気づいたことなど要因はある。

2021年11月某日。

映画をよく観るフォロワーさんがインスタに沢山載せていた1つに惹かれた。

それが、「ひらいて」と私の出会いでした。


映画が公開されていたことすら知らなかった作品。

主演の山田杏奈さんは「准教授 高槻彰良の考察」のゲストで観た、芋生悠さんは「カランコエの花」を観た時に他の映画に出てらしたかな、作間龍斗さんは所属しているHiHi Jetsって名前くらいは聞いたことある、くらいの私の中の印象で、公開されて1か月以上経っていたため、上演館も少なくなっていた。

そんな12月5日。チャンスが訪れた。シフトの時間が変更になり、キネカ大森の上演時間に丁度よく行けるのだ。愛子様の乗った車待ちの職場近所の坂を足取り軽く駆け下り、初めて降りる大森海岸駅からキネカ大森へ。

結果…

なんで私はこの作品を観たかったのだろうと首を傾げた。

主軸の3名はじめ圧倒されるお芝居で美しい映像。2時間飽きることなくスクリーンに見入った。しかし、何故私はこの作品を映画館まで来て観たいと思っていたのだろう…

ただ、爪痕は心に残り、引っかかった。

そして年が明け、綿矢りささん原作の小説を読んでみることにした。これも、いつもは物を増やしたくなくて図書館で本を借りるのに、惜しげもなく文庫を買った。

わかった気がした。

映画で観た時は、私は、木村愛という主人公の気持ちに共感があまりできず、たとえくんを好きだから彼女の美雪の身体を奪うという行為に気持ち悪ささえ感じた。愛が崩れていく様子は山田杏奈さんの演技が素晴らしくて圧倒されたけれど、同時に愛のぶっ飛んだ衝動に圧倒されてしまって共感というよりも「山田杏奈さんという役者さんは凄い」という印象が強かった。

それが、活字にしたときに、印象が変わった。

愛の行ったことは確かにぶっ飛んでいる。だけど、好きな人を手に入れたいという衝動はおかしなことではないし、そのために人は大切な人や物を破壊してしまうこともある。自分のことが分からなくなることもある。愛や、美雪やたとえが抱いた感情には共感ができる部分があるし、人間そのものだった。

そして、私はそんな作品に本能的に惹かれて映画と小説に導かれた、出会いは運命だったのだ。私は、欲しい人を奪うために欲しい人の彼女を抱くという思考回路はない。でも、あの人を振り向かせたい、という気持ちは感じる。手段が違うだけだし、より自分勝手に本能的に欲しい人へ向かって行く愛に憧れさえあったのではないだろうか。そして、それを受け止めていく美雪やたとえにも尊敬や憧れがあった。

そして、思った。

衝動を止められずに周囲を破壊して自己まで傷つけてしまう愛に、私を投影していたのではないか。

最近は、美雪やたとえのような存在に肯定されて、少しましになったけど、愛はかつての私だ。手段は違っても、自分を認めてもらいたくて自分勝手に振る舞う愛の姿に私が投影されていたのだ。

映像と小説。

どちらも素晴らしい表現方法で、今回は2つを通してより深いところまで何故を追求できた。いつか、また映画を見返してみたい。

教えてくれたフォロワーさんに感謝して、これからも本能的に惹かれた作品は積極的に観たり読んだりしていきたいです。

最後に、愛と美雪が身体を交わしながら心までひらいていく過程が好きでした。一番理解ができない行為が、一番美しかった。




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