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田村正和さん

じんわりと鼻を赤らめ、じんわりと涙が滲んで。
それを隠すように、そっと下に顔を背ける。
そんな風に田村正和さんがドラマの中で生きている姿をテレビの前で観ている時、大抵私は大号泣でした。

ここ1年、多くの方が亡くなりました。
SNSで弔いの言葉をよく目にしていましたが、SNSで発言することが今の自分に適しているのかわからず、(以前はすぐにSNSで発言していましたが)心の中で思い出を反芻することを大切にしよう。とか、それを見る人にこれは前向きな発言か?とか、変に抵抗してきた気がします。

もしくは、毎日の生活は続きますから、日常生活に支障を来す辛すぎる悲しみや寂しさを交わすように、きちんと心に響かせることがなくなったんだと思います。もっと言うと、考えないようにしてきたのだと思います。無理に忙しくしたりしてね。

『オヤジィ。』(2000年)のワンシーンSNSで流れてきました。
田村正和さん演じる神崎家の頑固一徹親父・完一(55)が、結婚式場から娘を連れ出し、結婚破棄をさせた後の出来事。完一は娘の婚約相手・国東博(31)の会社の上司に物申します。

○三友商事・フロア
  博がいる中、上司に物申している完一。
  その様子を冷ややかな目で見ている社員たち。
  警備員1が完一の肩を抑え、退出させようとする。
完一「ちょっ、おれが、他人が喋ってるのに邪魔するんじゃないよおい」 
  博の上司に向かう完一。
完一「私がねぇ、娘を式場から…」
警備員2「(完一を抑え)あの、すみません」
完一「(振り払い)うるせぇな」
   博の上司に向かう完一。
完一「式場から連れ出したのは、彼(博)に問題があったからじゃないんだよ。娘    が間違えていると思ったから…」
   警備員1・2、完一を羽交い締めにして
完一「(警備員に)おい」
警備員1「退出してください」
   博、警備員2を止めようとして
博「やめろ」
警備員2「下がってください」
   と、博を押すと、博が倒れる。
   警備員1・2、完一を力づくで退出させようとして。
完一「あんたらな、おい、この青年がな、この青年が、才能に溢れていて、誰よりも仕事を愛していることはあんたらが一番よく知ってるはずだよ。それなのにな、え、男が 好きだってだけでな、こういう青年の未来を、握り潰す権利が、お前らにあるのか、え?あるのかおい、よく考えてくれよ、え、お前らだってな、クラブ のお姉ちゃんのケツ追いかけ回してんだろがぁ、部下 の女の子にセクハラまがいなことしてるだろうがおい。おまえらみたいにケツの穴の小さいのがな、いつまでも偉そうにふんぞり返ってるから、ガキになめられるんだよおい、日本がだめになるんだよ、おい、聞いてるかあ、俺たち大人はな、そういう青年にこそ未来を託すべきなんだ…聞いてんのかおい!」
警備員2「いいかげんにしてください!!」   
    と、完一を締め出す。
完一「おい!!その空っぽの頭でよーく考えろぉ!!」
博「・・・」

田村正和さんの完一。優しくて、熱くて、頑固で。
田村正和さんを通して出てくる完一の力強い言葉ひとつひとつ。

これが、書かずにいられるかって言うんだよ!
発掘してくれた方、ありがとうございます。 
  
物語の中では、同性しか愛せず苦しんでいた博が厳格な父にそのことで親子の縁を切られてしまいます。
この瞬間、完一は博のオヤジになったし、観ている私たちのオヤジになった。
こんなオヤジ嫌だけど、最高のオヤジ。

古畑任三郎を知らない人なんていませんね。
演劇やってる人で真似しなかった人いませんね。
あんな偏屈で負けず嫌いな変わり者刑事なのに、みんなに愛されている。
それは田村正和さんを通して出てくる古畑さんだったから・・・

ご冥福をお祈りしております。

めいふく【冥福】
死後の幸福。後生(ごしょう)。
                             -新明解国語辞典


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