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034.吉本ばななさんのこと/私にとっての「いのっちの電話」

 私は過去に「ばなな図書館だね!」と言われたことがあるほど、吉本ばななさんの著作を読みまくっていた。ばななさんの小説にどれだけ救われたかわからない。まだスマホのない時代、本でしかばななさんの文章に触れられなかった頃は、いつもバッグの中にはばななさんの本が入っていた。出勤する前に本棚の前で今日はこれかな〜と選び、何度も何度も同じ本を読んだ。

 最近は、寂しい病はだいぶ治ったので、ばななさんの著作や文章から少し離れていた。そう、昔は寂しいから読んでいたのだった。ばななさんの小説をひらけば、わたしの世界の友達に会える、そういう感覚だった。日常では分離感や孤独感が強くて、あんまり人に内側を見せていなかったけど、そこにいる人たちなら理解してくれそうだった。小説の世界にいるときは気持ちがほっとした。私はたぶん、ばななさんが想定されているどんぴしゃの読者層だと思う。

 時は流れてSNSが普及しはじめた頃、ある日、Twitterにばななさんがいることを知った。使い方がよくわからなくて、ちょっとハードルが高かったけど、ばななさんと本以外の接点が持てると知って、アカウントを開設した。2016年のことだ。中の運用もご本人がされていると知り、これはやるしかない!と狂喜乱舞したのだ。今はネット上に著名人のアカウントはたくさんあるけど、当時は今よりずっと少なかった。ばななさんはネットに登場するのがかなり早かった方だと思う。

 これより少し前なら、ばななさんへのアプローチは編集部にお手紙を送るという方法しかなかったし、手紙がご本人に届いているかどうかすら確かめようがなかった。それなのに、メンションつけてツイートするだけでこんなにあっさりとばななさんに感想を送ることができるなんて、信じられなかった。いい時代になったな〜って心の底から思ったのを覚えている。

 そんなふうな感覚だったので、私のツイートがご本人の目に止まったらいいなぐらいだったのに、ばななさんときたら誰よりもはやく「いいね👍」や返信をしてくれるので、それには本当にびっくりした。それも割と毎回だったので、言い過ぎではなく、ばななさんとのやりとりでは寂しくなりようがないなと思った。そのことが、とてもありがたかった。こうして私のなかで、勝手にばななさんとのホットラインができた。ここにくれば、いつもばななさんに会える、わたしにとっての「いのっちの電話」だった。ホットラインの存在があるだけでよかったから、結局、直接メンションしてツイートしたのは2〜3回だけだった。
 (いのっちの電話:坂口恭平さんのされている自殺防止活動。ネットで電話番号を公開して、死にたくなったら電話して!と呼びかけている)

 最近、恭平さんのファンになったので、またTwitterをみる機会が増えたら、先日、恭平さんのスペースでばななさんがおしゃべりされていて、とっても嬉しくなった。好きな人たちがつながっているって、なぜだかとっても嬉しい。二人とも「寂しい」人を救っているよね。二人に救われています、いつもいつも。ありがとう。










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