見出し画像

033.坂口恭平さんのこと

 坂口恭平さんのことは、夫から教えてもらった。昨年のことだ。夫は15年ほど前に鬱病になり、それ以来、調子がよかったり悪かったりを繰り返している。あるとき躁鬱病であることを開示されている坂口さんを発見し、日々の調子をツイートされているのをみて共感したようで、それ以来、友達のTwitterをみるような感覚で坂口さんをフォローしていた。

 そんなわけで、夫は坂口さんのことを「坂口さん」ではなく「恭平さん」と呼んでいる。それぐらい身近に感じていたんだろう。あるとき、公のイベントで当日に調子が悪くて行けなくなってしまうかもしれず、「そのときはごめんなさいと謝って休みます、それを理解してくれる人とだけ仕事をすることにしている」と書かれていたことがあり、それには共感の嵐だったようだ。

 今の夫は、神経質な不眠症の人、ぐらいまでには回復している。季節や気圧によって気分の上がり下がりはあるものの、重度のうつ状態に陥ることはなくなった。それに伴い、恭平さんの話も私たちの間では減っていた。

 最近YouTubeで「TRUE KYOHEI SAKAGUCHI SHOW 坂口恭平生活」というドキュメンタリーがはじまった。私はなんとなく気になって、初回から全部見ている。夫はそれほど興味がなく見ていないとのこと。
 このドキュメンタリーは編集なしの撮って出しなので、見るのに時間がかかる。そのため、みるというよりは私も一緒に過ごしているような感じで、いつも動画を流している。たまたま通りかかった夫に「またキョーへー?今日もキョーへー?さいきん俺よりキョーへーだね!」と言われて笑ってしまった。

 ドキュメンタリーはなんとなく見始めたのだが、2話の「いのっちの電話」での会話を聞いて、全編みようと思った。恭平さんのすごいところは、声を聞いただけで相手の状態がわかるところ。二言目にはもう何時間も話した後のような状態になっている。(実は、他の回のいのっちの電話のなかには、聞いているとしんどくなってしまう電話もあって早送りしてしまった箇所もある)

*いのっちの電話09081064666 坂口さんの個人の電話番号。ネットで公開し、死にたくなったら電話してと呼びかけている。着信があったら折り返しているんだって。

その後「独立国家のつくりかた」を読んで、なんでいのっちの電話をやっているかを知った。ただ単に、自分が躁鬱になって死にたくなったことがあるからやっているわけではないのだった。もっと別の大きな視点の話だった。

 そんなわけで、私は夫以上に坂口恭平のファンになった(と思う。比べられないけど)。私は好きになるとその人を全部知りたくなって、作品をコンプリートするタイプなのだけど、恭平さんに関しては量が多すぎるのに加えてリアルタイムで作品が増え続けているので、そこは最初から諦めている。どこまでいっても、私がまだ読んでいないものがあることがうれしい。


感じた事を言葉にして生きています。サポート頂けたらうれしい!!