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「なんくるない」

なんとなく疲れたなぁと感じたときに、ふと手に取る作品。 
ハードカバーで購入したけど、何回も読み返してるので、なんとなくくったりしている。


書下ろしの三篇と、新潮ムックが初出の「ちんぬくじゅうしい」の計四篇の作品集だが、「ちんぬくじゅうしい」がいちばん好きで、読むたびに
じわっと涙して、読み終えて心がつやっとした気分になれる。

主人公の女の子に、那覇のおばちゃんが語りかける。

「今はね、誰にも考えられないかもしれないけど、お母さんは必ず戻ってくる。酒飲んだら酔っぱらうでしょ?薬飲んだら眠くなるでしょ?でも効き目が切れたらけろりとするよね。
それとおんなじなの。
今お母さんはすごく酔っぱらって、魂を持っていかれてるけど、酔いが醒める時は必ず来るのよ。
そうしたらすかさずこっちに引っ張ればいい。みんなお母さんを愛してるから、絶対勝てる。とりもどせる。
お父さんとお母さんがお互いきらいでなったんじゃないから、そうしたら絶対家族のほうが強い。こっちの引っ張る力は愛情からきてるから、最後は絶対に勝てる。
あきらめたり、こっちも同じ土俵にあがらないかぎりは、大丈夫なの。しつこく、しつこく粘って、絶対にあきらめないこと。そしらぬふりして、やりたいだけやらせて、じっと粘り強く待ってること。その間は気をそらして、飲み込まれないようにして、たくさん楽しい気持ちを育てるの。
そうしたら、必ず戻ってくる。そういう力の方が、地に足がついてて、たくさんの力を地球全部からもらっているこっちのほうが絶対に強い。いっしょにぐっとふんばって、待っていよう。
そのためにも深刻になりすぎないことだよ。深刻になると息がつまって、しゅうって力が抜けちゃうからね、たくさん食べて、笑って、運動して、何事もなかったように、意地でも元気に生きてなきゃ。」

よしもとばなな「なんくるない」新潮社
「ちんぬくじゅうしい」より


作品の主人公の置かれている立場とは、自分は全然違うところにいるのに、この言葉にはとても気持ちが込められているからか、ものすごい力があると思う。

自分が、深刻になってるなと感じた時に、おばちゃんの言葉を読むと力をもらった気分になる。


この作品の取材旅行も含めた沖縄紀行のエッセイも読むと、作品がまた違う角度で楽しめる気がします。


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