「一杯のおいしい紅茶」
ジョージ・オーウェルは、インドで生まれ、イギリスで育った作家であり、ジャーナリストでもあった。
オーウェルの有名な小説といえば、これらの二つの小説が挙げられる。
オーウェルが生きた時代は、帝国主義時代。
欧州ではヒットラーやムッソリーニが登場し、
ドイツ・イタリア・日本の枢軸国陣営と、イギリス・フランス・中国・アメリカ・旧ソ連などを中心とした連合国陣営との第二次世界大戦へ突入していく。
生まれた時代のせいとも言えるかもしれないけれど、オーウェルの印象は、鋭利で辛辣な政治一辺倒の作家と見られがちで、教科書などにもそのような説明がされていたと思う。
本屋さんで、オーウェルの「1984」と「動物農場」と一緒に並んでいた一冊で、文庫にしては少しお高いなと思いつつ、『文庫化に当たり「動物農場」ウクライナ版への序文を収録』と文庫裏に書かれてあったので、思わず購入してしまった。
目次のとおり、いろいろな主題のエッセイがあり、どのエッセイから読んでも古臭くなく新鮮で、文章が生き生きしているように感じられた。
読み進めるにつれ、鋭利で辛辣な作家だと偏って見ていた印象が薄れていき、オーウェルという一人の人間の生き方や好み、大事にしていたこと、自然へのまなざし、ジャーナリストとしての文学への思いなどから、オーウェルという人間があの時代に作家の前に一人の生活者として存在していたことが感じられてくる。
特に、目次「3 ユーモア・書物・書くこと」の最後に掲載されている「なぜ書くか」は、オーウェルが作家になるまでの内情が綴られている。
オーウェル自身も文章の中で「あらいざらい打ち明けるのは〜」と書いてあるとおり、飾り気のない言葉で正直な気持ちを記してくれているように思える。
このエッセイだけ読んでも、オーウェルをとても身近に感じることができ、本当にあの時代に生きていた人間なんだと思い、なんだか胸が熱くなってしまった。
出版社の内容紹介のとおり、「上質の随筆集」であり、この随筆を一読してから、あの有名な二作品を読んだら、また違った印象を受けると思う。
これだから、読書は奥が深いなぁとしみじみ思う。
もし、オーウェルが今の時代を見たらどう感じ、そして、どう作品に落とし込むのだろうか。
とても興味深いけれど、怖い気持ちもある。
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