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★★★★☆『信念に生きる - ネルソン・マンデラの行動哲学』リチャード・ステンゲル

ふつう、主張や行動は一貫していることが大切だけど、この人は違った。アパルトヘイトを廃止した南アの大統領、ネルソン・マンデラ氏。「最後の英雄」ともいわれる彼は、多くの矛盾を自分の中に抱えていた人物。

強靭だが、傷つきやすい心の持ち主であり、人の気持ちを推し量る思いやりに溢れているかと思えば、身近な人に対しては無頓着な面がある。 (『信念に生きる ネルソン・マンデラの行動哲学』)

田舎風の質素さを好む一方、有名人に囲まれることも好む。人を喜ばせることが大好きな一方で、躊躇なく「ノー」と言うことができる。自らの功績でないことで称賛されることは好まないが、実際に自分が行ったことは適切にアピールする術を知っている。 (同上)

そんなマンデラ氏の特質を一言でいうと「懐が深い」。良いものも悪いものを全てを受け入れる、清濁あわせ呑む人物だった。だから、何かの問題に直面した時はとても慎重に・落ち着いて(時には必要以上に時間をかけて)判断を下した。

マンデラ氏は、物事は簡単に白黒をはっきりさせることはできないと考えていた。だから色んな角度から対処法を検討した。しかし、両方の立場に立つことは、悩み、苦しむことでもある。それは言葉でいう以上に困難な作業で、強い意思と忍耐力が必要。

彼は44歳から71歳まで、ゆうに27年間を刑務所で過ごしたことで、苦しさに耐えられる屈強な人格を身につけた。若い頃は血気盛んだったけど、刑務所から出所した頃には別人になっていた。服役という試練を乗り越え、彼はリーダーとしての資質を獲得した。

アフリカには「ウブントゥ/Ubuntu(私たちは他者を介してのみ存在する)」という概念がある。マンデラ氏は、リーダーとは背後から指揮を取るものだと考えていた。自分が活躍するだけではダメで、他の人に権限委譲しないと大きな成果を出せないと分かっていた。

これをバスケットボールに例えてみると、自分がボールを持っていたいと思いつつも、ゴールにこぎつけるためには、チームのメンバーにボールをパスし、シュートしてもらう必要があるということだ。 (同上)

彼いわくリーダーシップとは、牛を追う少年のように、群れの最後尾から集団をコントロールするもの。必ずしも先頭で引っ張るものではないと考えていた。ただ、(一見矛盾しているように見えるけど)時には自分が先陣を切ることも大事だと言った。

彼にとって、リスクを取らないことや、「リスクを避けている」と他人から思われることは一種の恐怖だった。だから、例えば不公平な扱いを受けた時などは、集団の先頭に立って声を上げるべきだと考えた。リーダーにはそのような「象徴」として役割がある。

ただし彼は、注目を集める行動だけじゃなくて、目立たない部分でも自ら率先して行動した。例えば、刑務所では他の受刑者の尿瓶を洗ったり、ホテルでは自分でベットメイクしたり、リーダーがやらなくても良いような雑務も進んでこなした。

このように、マンデラ氏はリーダーとして、「後ろから集団を導くこと」「自ら率先して行動すること」の両方を意識した。

部下の力を引き出し、成果を最大化するには、マンデラ氏のような「一歩引いたリーダーシップ」が効果的と考えられる。

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