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Essay|忘れないようにするにはどうしたらいい?

「〇〇さん(←わたしの名前)ハフポストに記事が載ってますよね?」と商談相手から突然言われた。

取り出された記憶に、最初なんのことを言われているのか全くわからなかった。「ハフポストですか・・・?」と言葉通りキョトンとしてしまう。なんてことはない。5年ほど前に社内の女性マネージャーを特集する企画があって、それが会社の公式ブログに掲載されて、知らないうちにハフポストに転載されていたらしい(転載されるのなら教えておいてほしいものだが)。

そんなことがきっかけとなって、2016年に取材された自分のインタビューを超絶久しぶりに読むこととなってしまった(よく掘り出してきたものだ)。記事のテーマは、いわゆる女性活躍を推進するためのもので、わたしのキャリアを取材されたものだ。入社した頃から、その頃までどんな選択をしてきたのかなんだか楽しそうに話していた。

5年前ともなると意外と客観的に見れるもので「いいこと言ってるじゃないか」とまんざらでもない。いまの自分を見つめるよりは随分余裕がでるものなんだと新しい気づきもある。その瞬間は、忙しさにかまけて零れ落ちていたものや大変すぎて棚上げてしいたこともあっただろうけど、振り返ってみるとその時できることをやっていて、ある意味ネガティブなことを「忘れる」というのは、いいところばかりが思い出されてこれまで自分が選んできたものが間違ってなかったのかもと思わされた。


映画「もち」は2016年に小松真弓監督が岩手県一関市の食文化を伝えるためのPR動画30秒~1分ぐらいの動画を制作したことがきっかけで、やがて映画の企画へと発展し60分の映画が生まれたらしい。

主人公のユナを演じたのはこの土地に住む演技経験初めての女の子だ。キャスト全員が一関市に住む人々で撮影されたそれは、フィクションとノンフィクションの間をいったりきたりするとても不思議な映像体験だ。

ユナがおじいちゃんに「忘れないようにするには、どうしたらいいの?」というセリフがあって、その言葉がずっとずっと胸に残る。

わたしたちの記憶はとてもいい加減だ。苦しくて苦しくてもうどうにも身動きがとれないと思っていた出来事も、時が経てばすっかり忘れてしまうこともあれば、ある時昔付き合っていた人と同じ香水をつけた人とすれ違ったら一気にその頃の感覚が蘇ったりもする。記憶とは何なのだろうかとぐるぐるしてしまうのだ。


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