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【読書感想文】情報量の多さ+わかりやすさ+衝撃の理論に驚き!『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』

今回紹介するのはデーヴィッド・A・メイヤー著、桜田直美訳の『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』

姉妹本『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』が話題になっているようですが、経済の教室も超おもしろかったです。

この本をおもしろいと思えたのは、圧倒的な情報量があり、かつそれらが具体例ややさしい言葉を用いてわかりやすく解説されているから

プラス、自分のこれまでの常識が覆されるような理論が述べられているからです。


●圧倒的な情報量

まず情報量についてですが、「これ1冊だけで、大学時代に勉強したミクロ・マクロ経済を総復習できた気がする・・・」と思えたレベル(まぁ私は社会学専攻ですが笑)。

この本では

●経済学とは?
●資本主義とは?
●銀行の役割
●金利の仕組み
●GDPの基礎知識
●消費者の行動原理
●インフレで得する人・損する人

などが学べます。

世界を包囲する資本主義の話から、個人の消費者(つまり私たち生活者)の心理までが網羅されており、すごく興味深く読めるんです。

身近な例やニュースなんかもたくさん出てくるので、「経済なんてさっぱりわからん!」という方でも何か1つは「おもしろい!」と思える発見を得られるはず。

「経済用語がまったくわからない」「でも経済について勉強したい」という方にこの本はおすすめです。


●難しい専門用語をわかりやすく解説

経済学の専門用語をわかりやすく解説しているのも本書の特長です。

たとえば「限界効用逓減」。

これは「消費される財またはサービスが1単位増えるごとに、その前の1単位よりも効用が減少すること」という意味の経済学用語です。

・・・って言われても、どういう意味なのかさっぱりわかりませんよね?

そこで著者はスイーツを例に挙げ、以下のように解説しています。

キャンディでも、クッキーでも、ブラウニーでも、アイスクリームでも、いちばんおいしいのは最初の一口だ。そのまま食べ続けると、ある地点で最初ほどには幸せを感じなくなってくる。経済学では、この現象を「限界効用逓減」と表現する。やさしく言い換えると、食べるキャンディが1個増えるたびに、手に入る幸せポイントがだんだんと減っていくということだ。

これなら「なるほど〜!」ってなりますよね!

タイトルにもありますが、この本を書いた著者はアメリカの高校で経済を教える教師なので、こんなふうに誰にでも伝わるような言葉遣いで説明ができるんだと思います。

おかげで思っていたよりもスラスラ読み進めることができました。


●常識を覆すような経済学の理論

「ええ!?そうなの?」「今までそんなふうに考えたことなかった・・・」

この本を読んでいる時、私が何度も思ったことです。

本書には常識を覆すような理論がたくさん登場します。


たとえば「絶滅危惧種であるアメリカバイソンを絶やさないためにどんなことをすべきか?」という話について。

私は「バイソンを保護する法律を制定する」「今いるバイソンを施設で保護し、人の手で生育する」など、「今生きているバイソンを守る」方向の案が浮かびました。

しかし著者曰く、経済学者の提案は「絶滅危惧種を保護したいのなら、その動物を殺して食べればいい」というものだそう。

かなり衝撃的ですよね。

なぜそういう話になるのかというと、

バイソンを食用とすることで、バイソンを育てて売って儲けようとする人が出てくる

バイソンが畜産家の私有資産となる
(それまでは野生なので誰のものでもなかった=誰も管理していなかった)

畜産家は自らの利益のためにバイソンを殖やそうと努力する

バイソンの数が増える

ということらしいです。
(※上記の一部は私が文章の流れを汲んで書きました。私見が入っています)

実際のところバイソンが食肉化されたことで、1000頭から50万頭にまで数が増えたそう(びっくり)。


この本にはそのほかにも、

●最低賃金の引き上げに賛成するのは引き上げによって最も被害を受ける人たちである
●ダフ屋は個人・社会の効用(メリット)を最大化している存在
●天然資源が豊富すぎる国では、人的資本(個人のスキルや能力を投資対象とする考え方)が育たない

などの理論が出てきます。

ここまで読んでみて「え?そうなの?」と驚いた方はぜひこの本を読んでみてください!


余談:「常識を覆すような」と言いましたが、経済学に詳しい方からしたら「むしろこれが常識」なんですかね・・・??


***

『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』については以上です!

そのほかの読書感想文はこちら。


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