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映画レビュー「ダンケルク」

先日「1917」を観たことをFacebookに書いたところ、こんなコメントをもらいました。

あの単純なストーリーをあれだけの塹壕と戦場の場面を通して描いていることに驚愕させられます。『ダンケルク』を三年前に劇場に出掛けて見ましたが、撤退というだけの作戦を大がかりなスペクタクルで描いています。第一次、第二次と世界戦争の惨憺たる様相に変わりはなく、どちらもチャーチルが関わっている。どちらも帝国主義戦争です。死んでゆく若者の大多数はその意味を知ることもなかったでしょう。


では次は「ダンケルク」をと思い、アマゾンで購入して鑑賞。

みんな大好き(?)クリストファー・ノーラン監督の作品なんですね。わたしも学生時代は「インセプション」とか友だちの家で夢中で観たりしてました。それくらいなのでほかの作品と比較したりとかできないけど。

「ダンケルク」は、1940年5月26日〜6月4日に行われた英仏軍の大規模撤退作戦を題材にとった作品です。第二次大戦は1939年9月のドイツのポーランド侵攻が皮切りなので、対戦初期といえる。
ダンケルクはフランスの地名。海峡をはさんで対岸はイギリスのドーバーです。地図を確認すると「故国」は目と鼻の先だとどんな兵士も思っていただろうなぁ…それは希望にも、絶望にもなりえたはず。

陸の1週間、海の1日、空の1時間

3つの時間軸が交錯していく構成。

陸パートの主人公が自分の属する小隊のメンバー数名と、もぬけの殻になったダンケルクの市中を歩いているところから映画ははじまります。
あたまから「あ、好き…」ってなった。この映画、構図がドンピシャなシーンがいくつもあった。

ひとりは水道の蛇口をひねって口を湿らせる。「包囲した。降伏せよ」のビラが空から降ってくる。民家の窓をあけてタバコの吸い殻に手をのばしたその時、機銃掃射に遭遇。
主人公以外みんな銃弾にたおれる。

ダンケルクの海岸には船を待つ無数の兵士が長蛇の列をなしている。自分の親隊を見つけられない主人公は、物陰で用を足す。と、仲間を埋葬している一人の兵士と出会い、行動を共にするようになる。

あとは撤退作戦の一部始終が陸海空それぞれの視点から描かれるのですが、もう、もうね。我先に助かりたいよ、ふつう。ナショナリティで相手を蹴落とそうとするのは公平じゃないって頭でわかってても、命がかかってる。敵が怖い。戦場に戻りたくない。いっぽうで味方を助けたいというヒロイズムも人は持っていて、それで命を落とすことになる年端も行かない少年が描かれていたりする。

主人公に感情移入できなくてつまらないというレビューを読んだけど、だからこそあらゆる人間心理が克明に描けたのだろうと感じました。

ラストシーン、新聞を読んだ陸の主人公トミーの表情が印象的でした。ダンケルクからの撤退には成功しても、次の戦場が待ってる。

以下は、冒頭でわたしに「ダンケルク」の話をしてくれた先生からいただいたコメントです。

『ダンケルク』をさっそくごらんになった。撤退作戦で兵士たちは面目が立たないのでドーバー海峡を渡り終えても、上陸後は国民から卵や汚物を投げつけられ、罵声を浴びせられると思っていた。ところが各地で歓呼の声に迎えられた。海軍の要請に応じて民間の釣り船や遊覧船、小型ヨットまで海峡を越えて追い詰められた兵士の救出に向かった。チャーチルは二万人も助けられればいいほうだと思っていたのに、大部分つまり三十万から三十五万近い英仏の将兵がイギリスに撤退出来た。最後にチャーチルが演説する声がラジオから流れるでしょう。政治家というものはいつも結果を巧みに利用する術を知っているのです。


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