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アンソニー・ドーア すべての見えない光

文学ラジオ「空飛び猫たち」を聴いて、読んでみたいなあと思っていた「すべての見えない光」を今日の昼下がり、読了した。

舞台は第二次世界大戦中のドイツとフランスで、主人公はドイツの炭鉱町の孤児院で育った少年ヴェルナーと、視力を失ったパリ出身の少女マリー=ロール。500ページ超の物語のなかに印象的なエピソードがこれでもか!これでもか!と描き尽くされているが、押し付けがましさのようなものは全くなく、読んでいる自分の内面はおおむね凪状態だった。

もちろんハラハラする場面もあるにはある。でも、アンソニー・ドーアの自然体なのかあるいは一文一文を磨き抜く苦労によってなのか、静謐に、淡々と進んでいくため、受け取る人によっては退屈だと思うかもしれない。

でもわたしにはヴェルナーとマリー=ロールはもちろん、登場人物たちひとりひとり全員愛おしかった。
ヴェルナーの妹ユッタは幼いながらも(ヴェルナー以上に)聡明な感性の持ち主だし、学校で出会うフレデリックは最も勇敢な少年である。フォルクハイマーは暴力性を内包しながらもヴェルナーへの愛は人一倍。マリー=ロールがサン・マロで出会う人たちもみんなとても素敵だ。悪役であるフォン・ルンペルでさえわたしは憎めなかった。

読んでいていろいろなモチーフが認められた。せっかくなので何かまとまった文章を書いてみたいと思うので、ここには読了後の心境のみ綴っておこうと思う。

これは読書メーターの感想にも書いたことだけど、これだけいろいろな登場人物がいるのに誰ひとり幸せになっていないことは悲しく、どんなことがあっても戦争だけは避けなきゃいけないという思いを新たにした。人間は非暴力の世界を志向し実現しなくてはいけないのだなと。

ダイチさんとミエさんのトークもぜひ聞いてみてください。


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