木村映里

看護師と物書きを行ったり来たり。

木村映里

看護師と物書きを行ったり来たり。

マガジン

  • 平等病棟24時

    • 2本

    現役看護師・木村映里が語る、マイノリティと医療現場のこと。| 第1回「同性パートナーが緊急搬送されました。自分のところに連絡はくる?」

最近の記事

性暴力被害を受けて、裁判を起こした

※この記事には性犯罪に関する描写があります。性暴力被害を受けた経験のある方はフラッシュバックを起こす恐れがありますので、思い当たる場合は記事を閉じるか、信頼できる誰かがそばにいる、すぐにフォローを受けられる環境で読んでください。 私は、都内の病院で勤務する看護師です。 2017年7月、当時24歳の私は、知人の40代の男性医師から性暴力の被害を受け、弁護士に相談し民事訴訟を起こしました。 この2年間、私は被害によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)、加害者側から届く脅迫ま

    • 仕事を辞めたくて仕方ない新人看護師へ

      「看護師3ヶ月だけど辛い。やめたい」「仕事に行くこと考えると落ち込む」「私、看護師向いてない」 ここのところ毎日、比喩でなく本当に毎日、そんな言葉を新人看護師の知人から聞いたり、SNSで見かけたりします。 しんどい、やめたい、いきたくない、こわい、そんな言葉を見る度に、自分が新人だった時のことを思い出して、他人事と思えない気持ちになります。 今は7月、入職して3ヶ月で、多くの病棟の1年目看護師は、検温は自立、採血や処置は上司の指導を受けつつ徐々に自立していく、という段階

      • 医療とタトゥーは共存し得るかータトゥーアーティストの語りを考察する

        医師免許なくタトゥー施術を行ったとして、医師法違反で大阪のタトゥーアーティストが2015年に逮捕、起訴され、第一審の有罪判決から一転、2018年11月に無罪判決が言い渡されました(1)。 世間の関心を大きく集め、現在最高裁へと上告されているこの事件は、医療関係者の間でも好奇心とわずかな危機意識を持って注目され、私の周りでは、非医療従事者は「タトゥーは文化だ」「絵心のない医者に彫られるなんて御免」という反応に、医療従事者は「針で人の身体を傷付けるんだから医師免許が必要」「感染

        • 医療従事者が知るべき、性風俗の話

          昨年日本では44年ぶりに、梅毒の感染者が5000人を超えました(1)。 2011年頃から増加が指摘されてきた梅毒ですが、大きく話題になったのは昨年です。性風俗の仕事をする女性と結び付ける報道が多いことが印象的でした。 男性患者の大半が30代以上である一方で、29歳以下の女性患者が急増していること、同性間での性交渉よりも異性間の性交渉での感染が増加していること、また梅毒の届出の備考欄に、性風俗産業の従事歴や利用歴が記載されているケースが増加していることから、外国人観光客増加

        性暴力被害を受けて、裁判を起こした

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        • 平等病棟24時
          2本
          ¥400

        記事

          生活保護が嫌いな医療従事者達へ

          少し前に、医師がTwitterに 「胸部大動脈瘤破裂の身寄りのない80代男性。生活保護。救命率は限りなく0に近かったが、緊急手術。止血できず、人工心肺のままICU帰室し、術後2日目に死亡。恐らく数千万円は掛っただろう。国民全体の医療費を個々の医師が考えなければ国が破綻すると痛感した症例だった」 と書いたことが話題になりました。 この医師は「日本の医療財政・資源が有限であるのに、どのように分配するかの議論の欠如」「救命率が低い患者への緩和治療適応の是非」「身寄りがない人の

          生活保護が嫌いな医療従事者達へ

          自然派助産師・看護師が生まれる理由

          先月あたりでしょうか、助産師を目指す学生向けの教科書に、産後の母親が乳房をキャベツで冷やす「キャベツ湿布」なるものが、医学的な根拠のない民間療法にも関わらず写真付きで掲載されており、助産師学会がメディアの取材に曖昧な回答で逃げたことを含めて、助産師への信用が危ぶまれた出来事がありました。 キャベツ湿布、ジャガイモ湿布といったエビデンス皆無の民間療法をはじめ、子宮を温める、潜在意識、脱ステロイド、反ワクチン、ホメオパシー、赤ちゃんはお母さんを選んで生まれてくるetc……標準医

          自然派助産師・看護師が生まれる理由

          タトゥーの誤解やあれやこれ

          タレントのりゅうちぇるさんがご家族の名前をタトゥーにした影響か、タトゥーの是非について論じている方をTwitter上でよく見かけるようになりました。 「タトゥーを差別するな」「いや差別させてるのはお前らだろう」というものと共に、悲しいことに、タトゥーのデメリットを異様に誇張する文面や、ありもしないリスクも大量に流れてきます。 タトゥー・刺青が「肌にインクを入れる」という性質を持つ以上、医療に関するデマも多く、中にはタトゥーと関係のない感染症患者やタトゥー・刺青を入れた方に

          タトゥーの誤解やあれやこれ

          ぶどう色の、おばあさんの痰

          高齢になると噎せやすいとかモチが詰まるとかいいますが、高齢者にとって、水や食事が間違えて気管に入って喉のあたりからゼロゼロ音がするのは本当によくあることで、病院ではそういった患者さんがいると、掃除機の先にチューブをつけたような機械で口や鼻から異物を吸引します。大抵の患者さんは喉の奥に管を突っ込まれる苦しさあまり、私達を容赦なくひっぱたくので、時々患者さんの手がこちらの顔に命中します。痛いです。ひっぱたく元気のない患者さんだけが黙って耐えています。 いつだったか、90代の女性

          ぶどう色の、おばあさんの痰

          うつがひどければ外出なんてできないよね

          8月半ばにTwitterがバズりました。 ついでにまとめられていました。 https://togetter.com/li/1138877 賛否両論、たくさんコメントを頂く中、ネガティブなご意見として多かったのが「本当にうつなら旅行どころか外に出る気も起きない」という趣旨のもの。プロフィールを辿ると大体うつ病当事者の方だったので「私は辛くて外出できないんだ。外に出られるあなたはまだマシ」と言い換えても良いのでしょう。 さらにそれに対し、「うつも色々あるんだから出られない

          うつがひどければ外出なんてできないよね

          誰も新人に期待なんてしてないからさ

          「久々に死にたい。全然仕事覚えられないできないことばっかりもうメンタル持たない」 4月からIT関係の仕事をしている友人からの突然の連絡だった。 鬱病で1年休職し、リワーク(職業訓練施設)に通った後4月から今の仕事をしている彼女だから、ちょうど仕事を始めて1ヶ月というのは辛い時期なのだろう。 「同期が歳下で物覚えも要領も良い上に勉強好きな子で自己肯定感下がる。今までの仕事って同期いたことないから、人と比較されるってこんなんなんだ。って」 とりあえず飲みに行こうと、新宿の

          誰も新人に期待なんてしてないからさ

          痩せたあの子に「うらやましい」なんて言わないで

          体脂肪率が15%を切ると月経不順が始まり、10%を切ると確実に卵巣機能に異常をきたす。 20歳台の日本人女性の5人にひとりがBMI18以下のるい痩(痩せすぎ)。 日本の低体重児の出産件数は先進国とは思えないレベル。 日本のアパレルブランドは規格より小さいサイズの洋服をつくる傾向にあるため、それに合わせた体型になろうとダイエットが強迫観念的になっていく。 栄養士はこの現状をどうにかしないといかん! 朝起きて、テーブルにこれ見よがしに置かれていた日本栄養士会の会報を読ん

          痩せたあの子に「うらやましい」なんて言わないで