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しごとをうしなう

しごとをうしなう
20年以上はたらいてきた場所
たいそうな年月だ
生きている証とおもって働いていた

しごとをうしなう
いたずらかと思うほど突然に決まった
乱気流に乗って邪魔ものは流される

しごとをうしなう
ハレーすい星のゴムチューブや
オイルショックのトイレットペーパーのように大放出

しかし 嘘でもデマでもないらしい

しごとをうしなう
彼らと彼女らは残り私たちは去る

しごとをうしなう
空を見る、手のひらを見る、切れた運命線を見る

しごとをうしなう
昔から星の数ほどたくさんの人たちが
戦力外通告を受けて泣き
味わってきたこと

しごとをうしなう
一筋に勤めあげたかった
亡くなった父がそうだったように

しごとをうしなう
去るときは、自分がいなくなったあとのカイシャを
愛しながら去りたかったのだけど
ちょっと無理だ 

感謝はある いっぱいある
大好きなしごとだった
ひとも好きだった

いまはなんだろな
高層ビルから落とされた気分

もしくは
透明な管のなかに入れられて
空気を抜かれたようで
どうやって息を吸ったらいいのか
わからない


しごとをうしなう
ひとつの夢が終わる
長かった夢が終わる

しごとをうしなう
どこで間違えたんだろう
今さら知ってもどうにもならない

しごとをうしなう

進むことができない自分が

はずかしくて
はずかしくて
はずかしくて
はずかしくて
はずかしくて

かっこわるくて

この先どこでどうなろうとも
誰にも行き先をしられたくない

そんなことはできないけれど
残ったひとの記憶からも
すべて消えたい

自分がはたらいていたことなんて
なかったことにしたい





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