スタンフォード監獄実験とミルグラム実験の実験映像が見られるオンラインコース

UXの学びのなかで、人間の心理、社会心理、脳働き、などについて少しづつ学んでいる。UXやHCIは、人間の心理ととても関連が深い。

社会心理学について読んでいるとよく出てくるものに、「スタンフォード監獄実験」や「ミルグラム実験」がある。人を権威のあるものとそれに従うものにわけた場合にどのように行動するか、というのを見るものだ。

「ミルグラム実験」では参加者を教師、もう一人の参加者(実は参加者ではなく実験する側)が生徒となり、別々の部屋に入る。教師役は生徒役が間違いを犯すと、電気ショックの罰を与えるように指示をされる。壁の向こうからは苦しむ生徒の声が聞こえてきて、教師役の参加者は「これ続けていいの?」と実験者(すごくキッパリとした話し方をする、白衣に身を包んだ科学者)に確認をすると、「続けなさい」と言われる。多くの参加者が、実験を続ける、というもの。

とても有名な実験なのでいろんな本に出てくるので、実験の内容も結果も知っていたが、みたことはないので想像するしかなかった。CourseraのSocial Psychologyのクラスで、その実験を撮影したドキュメンタリー(40分くらいのもの)を見ることができたので、非常に興味深くみた。

一般から集められた人が、たまたまその実験の指示をする人のいうことを聞いて、人が死ぬまでの電気ショックを与える、というのを実際に見るのはすごく考えさせられる。私はこの立場になったらどこまでやるだろうか。

また、このコースでは「スタンフォード監獄実験」の映像も見ることが出き、また、実際にスタンフォード監獄実験を行った心理学者フィリップ・ジンバルドーがコースにも登場し、学生たちとのオンラインディスカッションの録画も見ることができる。看守役の人たちの無慈悲さは本当にひどいのだ。

「スタンフォード監獄実験」は、監獄のセッティングで、看守役と受刑者役に分けて過ごしてもらう、という実験。役はランダムに振られているのに、看守役の人は受刑者を酷く扱うようになり、受刑者役は本当は悪いことなどしていないのに罰せられひどく扱われるのを当然のように受け入れるようになる。全員がこれはお芝居だと分かっているのに。あまりにひどい状況になってしまったので実験は途中で中止になったという伝説の実験。

第二次世界大戦の時に、どうしてナチスがあれだけひどいことをできたのか、という問いが、社会心理学の発展のきっかけのひとつとなっている。ナチスはひどい人間の集まりだから、とその人個人や集団の性質のせいにするのは簡単だが、科学が繰り返し見つけてきた答えは、人は環境に左右されるということだ。

日本では入国管理局で、収容されている外国人を職員が虐待し、死に至らしめるということが起きている。これも、その職員が特に残虐な人間だからその人を辞めさせれば良い、という問題ではなく、そこにある環境が彼らを残虐にしているのだとも考えられる。

学校のいじめや、教師たちによる妥当でないほどの生徒の締め付け、会社におけるいじめ、家庭内におけるモラハラも同じようなことが言えるだろう。

は環境やコンテキストによっていくらでも残虐になってしまう。これはとても恐ろしいことだと思う。しかし、見方を変えると、残虐なことをしている人の多くが、個人としては本来残虐ではない可能性が高い。彼らをそうしている環境を変えることができれば、彼らは残虐でない人間に戻れるかもしれない、と思うと、希望があるようにも思う。

この視点を持つことで、仮に誰かがひどいことをしていたときに、その人個人を非難するのではなく、なぜその人がそのような行動に出たのか、環境やコンテキストを考えてみる、という癖がつくことで、人を無駄に憎むことがへるというメリットも。

社会心理学はとても興味深い分野で、インタラクションデザイン修士をとったら次は心理学を学ぼうかと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?