感情的なつながりを作るーエモーショナルデザインを考える

感情(emotion)はとても個人的なものである。そして、感情は私たちが人やモノや場所や環境にたいして愛着を持ったり嫌悪感を持ったりするとに、とても重要な役割を持っている。

デザイナーは通常、多くの人に使われる製品をデザインしている。しかし、その製品を愛してもらうためにとても重要である「感情」が、それほどまでに個人的なものだとすると、どうしたらいいのだろうか? デザイナーとして考慮すべきポイントを考えてみよう。

感情に関わる要素には比較的一般化できる要素と、ユーザに固有の要素とにわけられる。

一般的な要素

認知

私たちが考え、学び、問題を解決し、決断し、情報を消費する方法。認知科学について学ぶことは、デザイナーにとってとてもプラスになるだろうと思う。

心理
色、音、音楽、形、人、顔その他いろいろな要素が人間の感情にどう影響するのか、ということが日々研究されている。世界中の人々の多くにある程度共通する心理というのは学問として理解されているわけで、デザイナーとしてそれらを学んでおくことは重要。

文化
ユーザの文化的経験が、認知と心理にとても影響しているので、とても重要なポイント。これを理解するのがデザイナーにとっては必須。例えば世界中の様々なユーザをターゲットにしている製品の場合、どこかで共通項を見つけ出し、ある部分は特にカスタマイズするなどの対応も必要になる。

固有の要素

ターゲットユーザグループの心理的・身体的な特徴
例えば特定の病を持った人たちをターゲットにしている場合、その病の人の身体的・心理的コンディションが、製品を使う際にどのように影響するのか、ということ。例えば指をうまく動かせないかもしれない、色が見えないかもしれない。その人たちが、フラストレーションや悲しみを抱くことなく使えるプロダクトをデザインしようとすることがデザイナーに求められること。

気持ち・気質
その製品を使うときにユーザーが感じるであろう気持ち。急いでいるときにノロノロとしたタッチスクリーンや、あとどれくらいで終わるのかわからない状態のイライラしたきもち。わかりにくい言葉や、はっきりしない色合いなど、特定の(例えばその言語に慣れ親しんだ健康な人)以外の人たちが嫌な気持ちを抱かせるような要素を含まないようにデザインすること。

コンテキスト(状況)
どこで、どんな状況でその製品がつかわれるのか? 暮らしの中のどんな場面でつかわれるのか? その製品は単独で使われるのか、他のものとの組み合わせで使われるのか? 

どうやってこれらをデザインにとりいれよう?

一般的な要素を学ぶ:認知・心理・文化
一般的な要素としてあげた、認知、心理、文化については、学問分野として確立している。だから、学ぼうと思えばいろいろな手段がある。学問として掘り下げていたらそれぞれ数年かかるわけで(大学でも4年あるのだ)、デザイナーを本業とするものとしては、そこまでする余裕がないのが正直なところだ。とはいえ、オンラインのコースでいろいろかじってみるとか、本を読んでみるなどして日々学ぶことができる。

特定の要素を理解する
特定の要素にあげたコンテキストや、気持ち、身体的な特徴は、学ぶものではなく理解するものだと私は思う。「理解する方法」を学ぶことは可能であるが、実際に作ろうとしている製品のターゲットユーザを理解するには、その人と達に近づくしかない(しかしこれが難しい場合も多い)、ここでは深く触れないが、いわゆるユーザリサーチだ。

優れたデザインは優しいデザインだと思う

デザインといえばもちろんシンプルで機能的である、というのが大前提なのだけれど、それを達成するためにデザイナーにとって必要なのは「優しさ」ではないかと思う。

「優しさ」というのは全てを受け入れることではない。相手を理解し、相手が求めるものを理解し、そのゴールを達成する手助けをすること、それがデザイナーの仕事だ。そのためには、多くのものを排除する必要があるかもしれない(シンプルにする過程で切り捨てられていく機能たち)。でもその決断をする「強さ」が「優しさ」につながる、と思う。

ユーザーの感情に寄り添うこと、ユーザの感情を掻き立てたり、動かさないように気を配ったり、それらがデザイナーの仕事だ。

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